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109話

「待っていただきたい! 勇者様が御付きの方で御付きの方が勇者様ですと? そんな事を言いだす理由・・・・・・は、聞きましたがどうしてそのような・・・・・・あ、これも同じ理由でありましたな」

俺達の立ち位置を、改めて伯爵に説明すると狼狽と混乱で頭を抱えている。

いや~、俺も混乱していたとはいえ悪いことをしてしまったな。

「知らぬこととは言え、勇者様にとんでもない御無礼を申してしまい・・・・・・」

「ああ、気にしないでください。あの状態ではまさに愚物ですから」

「いえいえ、どこか光るものがあるとは思ってはいたんですが・・・・・・その、あのですね」


 魔法使いと言うだけで、この変わりよう。

明らかに言ったことを、撤回して手もみでも始めそうな勢いだな。

「本当に気にしてませんから、大丈夫ですよ?」

「アドルフ、その言い方は気にしてる感じが出てるけど」

「ああ! 本当に大丈夫です。あ! 自分の失態が恥ずかしいだけですから、忘れてください」

これでどうだ?


 その後も若干の違和感を残しつつ、伯爵と別れ反魔神派の集落を散策する。

ああ、こんな風になっていたのか。

活気もないし、皆疲れてるな。

歩いているとラインハルトには羨望の眼差しを、俺には嘲笑を投げかけている。

魔族って忙しい人ばっかりだな。


 集落と言っても、廃村に住み着いた流れ者のような雰囲気だ。

だけど油断してはいけない。

逃げだしてきたとはいえ、魔族だ。彼らが魔属の森で病床人を抱えつつ生活出来ているのは魔族としての恩恵を受けているからに他ならない。

万が一不満が噴き出て、それが俺達に向いたら死闘になること受け合いだ。


 決して絡まれても、大事にしてはいけない。

そう、俺に対して当たりがきつくても、ラインハルトが怒りだす前に場を納めないと。

「しかし、勇者様!! このような凡愚を庇い立てするお優しさは感銘を受けましたが、状況が状況です。魔神の猛攻はすぐそこにまで迫っているのですよ? いち早く解決するためには凡愚は捨ておいた方が得策なのは明らかでしょう?」

「だから、キミ達の言う勇者はこの者なんだ! 謀っていたのは謝るがこやつをあまり刺激すると、キミ達が危険なんだ」

あれ? ちょっと俺がどうかしている間に、俺に対するラインハルトの評価がおかしなことになってるな?


「ラインハルト、人をホウセンカみたいに言わないで貰えるか?」

「こんな意味の解らない馬鹿なことを言う奴だが、本当にこの者が魔法使いなんだ!!」

なんだ、俺のウィットに富んだジョークも分からないなんて、ラインハルトは物を知らないな。

あ、そうか! 実際に見せてやればいいのか!


 久々に魔法を使うな、・・・・・・あ、3日ぶりか。

そうかそんなに時間って立ってないんだな。

未だに俺の危険性を、魔族の若い人たちに説き伏せているラインハルトから離れ、都合よく見つけたホウセンカに魔法を掛けていく。


 魔神との戦いでも重宝した、木属性を重ねた操作系の魔法。

本来は、ツタや根を操作することで拘束する魔法だけどこう言った使い方もできなくはない。

「ラインハルト! ホウセンカってこれね」

そう伝えると、急速に成長し実を熟させる。

ラインハルトが訝しんで近づいてくる。

種子を弾いてやると、種は勢いよくラインハルトに向けて飛び出していく。


 魔法による操作なので、指向性が持たされているようだ。

全ての種が、ラインハルトにあたり弾かれていく。

「アドルフ、何でこんな悪戯をしたんだ?」

「ほら、俺が危険じゃないって、教えないとね」


 若い魔族たちは、俺の魔法を見ても表情を変えない。

うん、まだ余裕がありそうだな。

もう少し派手でもいいかな?

詰め寄るラインハルトに、拘束として魔法を使用する。


 地中から伸びた根により、天高く持ち上げられるラインハルト。

「ほら、魔法って危ないものだけじゃないでしょ? キミ達もそうは思わないかい?」

そう声を掛けたら、若者たちは声を上げて走り去ってしまった。

何でだろう?

「おい! アドルフ!! 早く降ろせ、この馬鹿!!」

「ん? 何か言った?」

「降ろしてください!!」

「しょうがないなぁ~」


 久々に使う魔法はやっぱり楽しいな。

ああ、そうだった。魔法を使って敵を倒したいんじゃない、楽しいから魔法開発をしていたんだった。

そうか、いつの間にか目的と手段を間違えていたんだな。

ははは、初心は忘れやすいって言うけど、本当だな。


 うん! 心機一転魔法開発に勤しみますか!!

よし、じゃぁ魔法使っても大丈夫な所を探さないとな。

「おーい! アドルフ、そろそろ降ろしてくれない?」

「あ、忘れてた、ごめん」

「はぁ~、そう言う奴だったよな、お前って」


 さて、魔法の使えそうなところ、先日魔神と交戦した所にやってきた。

焼け野原になってるし、まさにこれ以上破壊を気にしなくてもいい場所だな。

「アドルフ、何やるつもりだ?」

「取りあえず、4属性の掛け合わせからやっていこうかな?」

「それが魔神に対抗するための魔法なのか?」

「いや、違うけど?」


 魔神に手傷を負わせた魔法、それは5属性だろう。

微かに記憶に残っている限り、全部の属性を掛け合わせた気がする。

でも、一足飛びで5属性をやっても面白くないし。

4属性もどんな魔法か知りたいんだよね。


「はぁ~、呑気なもんだな」

「そうは言っても、副作用を考えるとめったやたらに使えないしね」

「それはそうだろうけど・・・・・・」

「それに、5属性が正しく使えているかは、魔神がいないと分からなうだろうしね」

魔法を観察するってことは、効果を知らないといけない。

どんな効果が、どれくらい続くのか? 出し入れ自由か? とか、知っておかないといけないことは色々ある。


 だから、効果の分かりずらい可能性のあるものは後回しで良い。

見当は付いているんだし、まったく分からない魔法を知るほうが有意義と言うものだろ?

まぁ、予測がついていてもいずれは使うんだから、いずれ実験はするけどね。


 それにしても暴走した魔法を俺も、ラインハルトも無事な状態で納めた魔神には、何か隠していることがある気がしてならない。

まぁ、正体はもう隠さないだろうけど、それ以外に隠していることがあるようなそんな気がするんだよな。


 まぁ、今度会った時にでも確認してみるか。

さて、考え事終了! 魔法を頑張りますか!!

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