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107話

ごめんなさい。ちょっと長いです。

 第2ラウンドと、息巻いたのは良いがどうする?

大規模魔法も効かなかった。

試していない魔法・・・・・・2属性の魔法位か?

いや、単属性も試していない。

  効くかと言われれば、効かないだろうな。

恐らく、発動もしないだろう。

今までとは、違う方法が必要だな。


 4属性は、発動もさせたことがない。

どんなモノかも分からない魔法に、命を預けることができるのか?

難しいな、可能性はあるだろうけど、副作用で命を落としたらラインハルトも無事ではないだろう。


 なら、2属性を同時に2種類使ってはどうだ?

まぁ、使える魔法は限られてるけど・・・・・・。


 それだけじゃ、足りない時はいっそ全部混ぜてやろう。

あ、あの方法はどうだ? 義父上に使って以来、人には試してないけど、意表は着けるんじゃないか?


「アドルフ、行くぞ」

「ああ」

返事をすると、ラインハルトの姿が消える。

鈍い打撃音だけが、周囲に響く。

よし! 俺も行くぞ。


 氷の矢を魔神に撃ち出す。

同時に縮地で距離を詰める。

氷の矢は、昇華したかのように魔神の前で消失する。

やはり届かない。


 なら、直接打ち付けてやる!

ラインハルトの姿は、見えないけど避けてくれるだろ。

魔法を拳の前に留めて、闘気で包み拳ごと魔神に振るう。


 闘気だけが、魔神の障壁に当たる。

これでも駄目なのか? 更に闘気だけを魔神に撃ち出す。

硬いゴムを殴った様な、反発力を感じ後ろに飛び退く。

駄目か・・・・・・。


 なら、予定通り2種類で行くか。

先ほどの様に、2種類の魔法を闘気で包みむ。

魔力増幅と魔力消失にしちゃったけど、どっちかが届けばまともな体勢は保てないだろう。


「まだ、やりますか?」

「当たり前だ!」

魔神も俺達の行動に、飽きた様子を見せてきた。

時間は、もうないに等しい。


 でも、諦める訳にはいかない!

拳に乗せて魔法を撃つ。

「いつまでも避けないと思ってます?」

「思ってないよ!」

頭を反らした魔神の顔目掛けて、闘気を飛ばす。


 足跡(シュプール)の要領と似てるから、久々でもできたな。

魔神の顔が後方に揺れる。

魔法は消されたけど、初めて衝撃を与えることができた!!

いけるか?


 頭の位置を戻した魔神の目に、暗い炎が灯った気がした。

突如、体が後方に引かれた。

違う、肩に痛みが走り攻撃で吹き飛ばされたと認識出来た。


 前を向くと、そこにはラインハルトたけが立っていた。

咄嗟に縮地で、今いた場所を離れる。

連続して縮地を行い、自分のいた場所を確認する。


 拳を地面に突き刺した、魔神がいた。

憤怒の表情を向ける魔神。

「ピョンピョン避けよってからに、煩わしい。黙って殴られてろや!!」


 まずい。

中途半端な攻撃で、相手を本気にさせてしまった。

未だにダメージらしいダメージも与えて居ないのに!


 小さな後悔をしていると、また魔神の姿が消える。

何処だ? 的を絞らせない様に縮地を続けているけど、速度は相手が上だ。

「どこ見ている?」

嘘・・・・・・だろ?

移動してる俺の背中から、魔神の声が聞こえてくる。


 コートの襟に力が掛かる感覚があると、いきなり平衡感覚が失われる。

「おぅら!!」

「ぐぁっ!!」

激しく地面に打ち付けられる。

それだけが分かった。


 体勢を立て直そうと、起き上がると目の前に何かがすでにあった。

避ける間もなく、衝撃に押しつぶされる。

「済まない、アドルフ」

「ラインハルト・・・・・・」

俺の様に投げられたのか?


 ラインハルトと背中合わせに立ち上がる。

どこだ? どこにいる?

「ばぁ!」

目の前に現れた魔神の顔に驚き、後ろに下がろうとすると何か鈍い音が俺の耳に入ってくる。

遅れて激痛が俺を襲う。

「あ、足が・・・・・・!!」


 見えない痛みには慣れていたと思っていた。

でも、襲ってくる痛みに抗えない。

重力に逆らえず、地面に落ちる俺。

「ぐぅ! あッ!」

後ろで、短い声が連続して聞こえてくる。


 ラインハルトが見えない拳に踊らされている。

ああ、やっぱり方法も無しに勝てる相手じゃなかった。

機動力も決定打も持ち合わせてい無い俺達、何方かを見捨てて・・・・・・いや、その前に人生を捨てる覚悟が無かった。

ラインハルトは覚悟していたと言うのに、どこか甘えていたんだろう。


 地面に倒れたラインハルトに飽きたのか。

俺を見下ろしながら、近づいてくる魔神。

足の痛みも、他の痛みもどこか遠くにあるようだ。

これが死ぬってことなのか?

魔神の拳に晒されながら、そんな事が頭に浮かんでくる。


 拳を止め、不甲斐ない俺を見下ろし、魔神は俺ではなく虚空に声を投げる。

「全く、絶対殴るって言うから期待していたのに・・・・・・期待はずれやったな」

え? ・・・・・・いや、待ってくれ。

何で、お前が・・・・・・その言葉を知っている?

俺は、お前にはその言葉は言っていない。


 う・・・・・・そだろ?

じゃぁ、この世界に来てからのあれもこれも、全部茶番・・・・・・だったのか?

俺の行動全部、こいつの掌の上だったってことか?

17年、こいつは俺で遊んでいたって言うのか?


 いやいや、そんな訳無いよな?

だって、魔法のことも助言をくれたし、そのお陰で今日まで来れたんだぞ?

カチヤとも結婚できたし、子供だって・・・・・・。


 全部・・・・・・仕組まれてた?

魔神の顔を見上げる。

どことなく、面影が見て取れる。

「関西弁・・・・・・出てる・・・・・・ぞ」

「あ? あっ!」


 確定だ。

要するに、俺の人生を弄ぶためにここに連れてこられたって言うことか。

ああ、もうこの世界のことなんて、もうどうでもいいや。

ただ、こいつを殺すことが出来るなら、もうどうでも良い。


 この世界ごと神様を滅ぼそう。

こんな神様の遊技場消えてなくなればいい。

・・・・・・世界か、確か木だったな。


 木を滅ぼすならどうすればいい?

土を水を風を殺せばいい。


 俺は回復魔法を掛けて立ち上がる。

回復魔法・・・・・・木属性か・・・・・・はっ!

くだらない、全てがくだらない。


 許せない、神もこの世界も何もかも!

木を育む大地を熱で干上がらし、風を停滞させて水を腐らせよう。

そしてその水を木に返せば、木は枯れ果てるだろう。

そうだ、そうしよう。


 俺の目の前には、5属性を込めた魔力が浮かんでいる。

それを土・火・風・水・木の順で合成していく。

もう、副作用も関係が無い。

反発してくる魔法も煩わしい。


 闘気法で無理やりに抑え込み、魔法をただ合成していく。

魔神は、いや神は俺の行動を、歓喜の表情で見てくる。

そのことが、より俺をいらだたせる。

この世界に、込められるだけの呪詛を魔力に念じる。


 俺の中の何かが、力を取り戻す感覚があるけど、そんな事もどうでも良い。

目の前のこいつを、こいつの魂に至るまで存在そのものを消し去る。

そのことだけを強く、ただ強く念じる。


「ふぁっ! 素晴らしいですよ! 凄い魔力だ! それを・・・・・・それを待っていたんですよ!!!」

何かを言っているけど、どうでも良い。

これがこの世界の最後の魔法だ。


 未だに反発してくる魔力。

そうか、お前たちもこいつの味方か。

何も、何も信じられない。


 もう、何も考えたくない。

 

 魔力をそのまま、魔神に打ち込む。

俺は、そこで意識を遮断した。

世界の滅びを願って。


◇ ◇ ◇ ◇


 アドルフが倒れると、魔力が制御を失い周囲に弾け影響を与え始める。

魔力が降り注いだ地面から、黒い実体のない手が無数に神に伸びる。

神の速度を持ってしても振り切ることは出来ない。

「けったいな魔法創ってからに」

悪態をつく神の足に手の一本が絡みつく。


「ああああ!!!」

神が久しく感じていなかった感覚、痛み。

それが神に感じられた。

手を振り払い、上空に逃れる神。

その表情は、久しぶりの感覚に口元が歪んでいた。


「なるほど、それ系か・・・・・・ちょっと、まずいな」

まずいと言いながら、徐々に口元がほころんでくる。

痛みとは裏腹に、歓喜が抑えられない神。


「やっぱり、キミで正解だったな」

目線をわずかにアドルフに向けると、迫ってくる手に意識を集中させる。

「久しぶりやし、大丈夫かな?」

その手に魔力を集める。


「いっちょ気張るか!!」

そう言うと、迫る手に飛び込んでいくのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


 激しい痛みで、俺は目を覚ます。

生きている。

その実感ではあったが、気分のいいものではない。


 顔を上げると、魔神の姿が目に入る。

多くの傷を負っているものの、その力は衰えてい無いように思える。

魔神が一点を見つめ、佇んでいる。

その目には、どこか慈悲のようなものを感じる。


 その目線を追うと、俺の友の、アドルフの姿が見える。

うつぶせに倒れ、身じろぎもしない。

(まさか、死んで・・・・・・)

そう思うと、アドルフの体か僅かに動いていることが分かり、軽い安堵を感じる。


(無事か・・・・・・とは言え、絶望的だな。あのアドルフでさえこの有様か)

自分はどうだろう? 自身の体を確認すると両手が上がらないことに気が付く。

足は・・・・・・動くようだ。

なら、この身をアドルフの盾にすることぐらいは出来るか。


 ゆっくりと起き上がると、魔神が自分に気が付いたようだ。

「やぁ、ラインハルトさん。起きましたか?」

「気が付いていたんだろう」

「まぁ、そうですね」

「その傷、アドルフか?」


 魔神は自身に目を落とし、

「ええ、素晴らしい魔法でしたよ?」

「そうか? その割には余裕がありそうだが?」

「そんなそんな、結構ジリ貧でしたね」

「なら、アドルフは殺させるわけにはいかなくなったな」


 痛む身体を引きずりながら、アドルフに近づく。

一歩が重い、こんなにも近いアドルフが遠く感じる。

でも、行かないと。

魔法を覚えた頃、俺はこいつの、アドルフの盾になろうと誓った。


 一緒に旅をして、世間知らずの様子を見てその想いは強くなっていった。

アドルフがいれば、セロフィーもほかの国も、人族を等しく守れると思っていた。

だけど、勝てない相手がいる事を思い知らされた。

この魔神を野放しにしてしまったら、人族はおろか魔族も大半は死に絶えるだろう。


 長く戦争の無い、仮初でも平和な世が再び乱れる。

それを止められる可能性がアドルフにはあるんだ。

なら、俺は人としての生を終わらせることも厭わない。

そう想っていたのに、我が兄の失態でアドルフを失うかもしれない。


 それだけは・・・・・・。

「盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ帰らせてもらいますね?」

そう言うと、魔神は俺達に背を向けて歩き始めた。

「なぜ?」

助かったよりも、疑問が先に浮かんだ。


「もう少し、時間を上げたら面白そうだから。それだけですよ」

それだけを言うと、魔神は姿を消す。

俺も、アドルフも助かったのか?

余力を残しながらも、あっさりと退いた魔神の行動が不可解でならない。

だけど、俺達は生きている。

それだけは事実のようだ。


 アドルフを見ると、傷らしい傷は少ないが一向に目を覚まさない。

俺もアドルフを担ぎながら移動できるほど、体力も残っていない。

まぁ、手が動かないから、担ぐこともできないんだが。


 暫く佇んでいると、魔族領の方から光が見えた。

松明・・・・・・か? この状態で魔族との交戦は避けたいが、アドルフを置いてはいけない。

こいつは、人族の・・・・・・この世界の希望なんだから。


 俺は、アドルフを隠すように光に向き合うことにした。



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