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106話

 立ち上がった俺は、再度ラインハルトに回復の魔法を掛ける。

先ほどと同様の、3属性の回復魔法だ。

木・水・風を使い、ラインハルトの体に魔法の光を纏わせる。

これは、旅立つ前の一年で、開発することのできた魔法、6種類その中の一つ。


「っくぁ! はあぁ、・・・・・・はぁ・・・・・・」

大きく肩で息をするラインハルトに、

「大規模魔法を使うから、出来るだけ離れろ」

それだけを伝える。


 何か言いたげな表情だったが、ラインハルトは神殿から出て行く。

それを確認して、俺は魔法の準備に取り掛かる。

俺の頭の上には、魔力増強魔法を待機させる。

今操作できる最大数、4つだけしか出せないが、新魔法を撃ちきるには十分だろう。


「へぇ~、復活した魔法がどの程度なのか興味をそそられますね」

「そんなに見たいなら、じっくり見せてやるよ!!」


とは言ったものの、時間稼ぎが精一杯だろう。

しかし、ラインハルトさえ逃がすことができれば、後で対抗策を作ることができるかもしれない。

カチヤの持つ剣、あれは神殺しのナイフと同じ素材で出来てる。

ならば、加工しだいで神殺しの剣を造れるかもしれない。


その事に、ラインハルトが気付いてくれさえすれば、少なくとも子供たちの未来を守ることができるだろう。


拘束魔法を二重、三重に重ね魔神の動きを止める。

飛行魔法で、距離を取りながら魔法を練る。

先ず効く魔法があるのか知らないと。


3属性の炎魔法、その名を豪炎とした魔法。

火・土・風を合成していく。

辺りが、身の丈ほどの炎に包まれる。

その炎の中から、数匹の大蛇が生まれ魔神に襲い掛かる。


「前の魔法とは、大違いじゃないですか!」

炎に包まれた魔神の声が、建物に響く。

まだ、余裕があるみたいだな。


魔力増幅をして、次の魔法を放つ。

水・風・土の3属性の合成をする。

周囲から生まれた、大量の水は炎によって崩れはじめた壁を飲込みながら、魔神に迫る。


俺は、崩れた壁から外に飛び出す。

その直後、建物の中の空気が急激に膨張して弾ける。


水蒸気爆発を起こし、建物の周囲の木々をなぎ倒す。

巻き込まれたけど、今は簡単な回復魔法で場を繋ぐ。

「なるほど、自ら放った攻撃ではなく自然現象を使った攻撃ですか? 考えましたね」


爆炎の中から、姿を表す魔神。

その姿は、五体満足に見える。


これでも駄目なのか?

なら、今度は反応としてではない魔法としての爆発だ!

火・土・水を合成。

魔神に向けて、射出する。


 指向性を持った爆発により、轟音を上げながら地面を抉り、天高く火柱がそそり立つ。

「おお! 凄い! 素晴らしい魔法だ。でも、まだ足りませんね。もっとです!!」

「言われなくても、まだこれからさ!!」

上がっている火柱に、再度違う魔法を撃ちこむ。


 今度は、風・木・土も3属性。

合成した魔力を中心に、風が生まれだす。

魔神に到達した魔力は、急激に作用を強め周囲に残っている火を巻き込みながら、再度火の柱を形成していく。

火を纏った竜巻が、幾度となく魔神の影に襲い掛かる。


 竜巻が収まると、周囲を冷やすように雨が降り注ぐ。

本来なら、骨も残らないはずだけど・・・・・・。

「素晴らしく暴力的な魔法の数々、後世の人が見たら神の所業に想うのでしょうね」

涼しい顔の魔神が、爆心地に悠然と立っていた。


「お前の実態はそこにあるのか・・・・・・?」

思わず、問いかけてしまった。

度重なる暴風と爆発で、周囲の森は消失し地面は大きくえぐり取られている。

まだ、熱で陽炎が生じているにもかかわらず、魔神の表情は満足そうな笑みを蓄えている。


「ん? まさかこれで終わりですか? もっとですよ、アドルフさん?」

最後の魔法に掛けるか? いや、最後の魔法は効かないだろう。

木・火・水の合成は、魔法の中心から水分を奪い、高熱を与え奪った水分を打ち付けて膨張・爆発させる魔法だ。

水蒸気爆発を魔法で再現するだけの魔法。

到底効くとは思えない。


 分かっていたこととは言え、神に対して弓引く行為とはここまでの障害を越えないといけないのか?

魔法的な防御ではない、攻撃事態が届かない。

今回は、魔法が発動したのにも関わらず同じ結果になった。


 魔神は不思議そうな目を俺に向けてくる。

どうする? 相手は興味があるだけで攻撃をしてこないだけだ。

興味を失ったら、俺もフランツ様の様にあっけなく殺されるのか?


「おい! アドルフ、大丈夫か?」

・・・・・・。

ラインハルト?

「こりゃまた、ひどい有様だな」

え?

いやいやいや、そうじゃないだろ?


「ラインハルト! お前なにしに戻ってきた!!」

「何しにって・・・・・・」

思わず語気を強めて、ラインハルトの胸倉をつかんでいた。

「お前! お前が伝えないと誰が魔神に対処するんだ!! フランツ様がやられた時点で俺達の負けなんだよ! 新しい神殺しを造る時間を稼ぐ、それが俺の今の仕事なんだよ!! それをお前!!!」

「いや、済まない。お前が魔法を使う時確認するのが俺の役目だったから、いつもの癖でついな・・・・・・」


 ・・・・・・つい?

癖? 何それ?

「プッ! ・・・・・・あはは、馬鹿じゃないの! ラインハルト、癖だって! あははは」

「ッ! 笑うなよ、俺もばかやったのは、理解してる」

「あはは、はぁ~あ。ま! 来ちゃったのは、仕方ないね。そうしたら、ラインハルトにも手伝ってもらうから」

「逃げろって言ったり、手伝えって言ったり忙しい奴だな、アドルフは」

「俺の打算を壊した落とし前は、付けてもらわないとね。うっかり王子」

「仕方ないだろ・・・・・・、またお前うっかり王子って言ったか?」

「言ったかな? ほら、魔神様が待ってるから、そろそろ行くよ」


 俺はラインハルトに、魔法を掛けて魔神に向き直る。

あ~あ、足止めも、時間稼ぎも無駄になったな。

でも、何でだろう? 気分は楽になった。

全く、どうしようもない馬鹿王子だな。


 魔法が効かないそれは、間違いがない。

それ以外で、手を考えないとな。

けど、剣も効かない。それも事実だ。

その二つ以外、俺に手立てはあるか?


「あの~、もう話し合い終わりました? そろそろ退屈になってきたんですけど?」

魔神は、心底退屈そうな表情を見せている。

アイツも分かりやすい奴なんだな。

「ああ、第2ラウンド開始だ!」


 やらないといけないことは、何一つ変わってないんだ。

さぁ、俺達の喧嘩はここからだ!

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