103話
重力魔法を駆使した飛行魔法、これは思っていたよりも優れていて、何と言っても自分以外にも使用が出来るのがありがたかった。
移動時間の短縮。これに勝る利点は無いだろう。
ただ、操作自体は掛かっている本人自身で行う必要がある為
「ちょ、ちょっと、待ってくれアドルフ」
この言葉を嫌と言うほど聞くことにはなったが、慣れてくれば徒歩に比べて格段に速く移動できていた。
そうして到着した魔属の森。
セロフィー随一の危険地帯、大型の魔物が大量に存在していて、尚且つその森の深さも冒険者の行く手を阻む。
お陰で、全くといっていいほど開発が進んでいない地域だ。
それに、魔族領にも面しているため、領主にとっては頭の痛い森でもある。
「こうして、空から見ても分からないものだな」
ラインハルトが森を凝視している。
原初の魔法使いに指定された神殿、言葉通りに推察するならこの森のどこかに有るはずなんだけど。
上空からでも、その姿は分からない。
「魔獣の森って、ここでいいんだよな?」
思わず確認したくなるほど、影も形もない。
「ここ以外に魔獣の文字が似合う森があるなら、是非見てみたいものだな」
そうだよなぁ~。
仕方がないので、近くの街に降り立ち、情報収集を行う。
しかし、住民誰もが同じことを言う。
「神殿なんて知らない。森には誰も近づかない」
冒険者ギルドでも確認してみたが、帰ってくる言葉は同じだった。
「早速手詰まりになったけど、どうしようか? ラインハルト」
「また、あれじゃないか?」
「あれ?」
「地図だよ」
地図? ・・・・・・あっ!
「いや、2回目はないんじゃない? 一応禁忌の原因になったかもしれないものだよ? そんな簡単なことで・・・・・・」
また、直線上何てこと。
◇ ◇ ◇ ◇
「あったな」
「・・・・・・あったね」
ナニコレ? あの魔法使い馬鹿なの?
「今度から地図上で、ものを考えても良いみたいだな」
「そう、だね」
魔属の森の奥深く、その神殿はあった。
何処と無く、竜の聖域を思い出させる佇まいだ。
外観に大きな違いも無さそうだ。
「女神の神殿みたいだな」
ラインハルトは、そっちを思い出したか。
一応、周囲を見回る。
この場所は、どちらかと言えば魔族領に近い。
敵が潜んでいないとも限らないしね。
「大丈夫だね」
「ああ、それじゃ行くか」
「うん」
ラインハルトを前頭に、神殿の中に入る。
森の奥だからか、暗く見通しが効かない。
あんまり、使いたくはないけど。
松明に灯をともす。
まずいな。
明るくなると、中は埃がないことに気がつく。
人の出入りがあるみたいだな。
俺達は、周囲を警戒しながら奥に進む。
案の定、見える範囲にそれらしい仕掛けは見当たらない。
しかし、何だって原初はこんな場所を選んだんだろう?
魔族と争っていたのに、仕掛けが壊されるとか考えなかったのか?
「あったか?」
「いや、無いね」
「じゃぁ、いつも通りか」
「ハイハイ」
例によって、ソナー式の探索魔法を使用する。
そう言えば、偶然この魔法だけ使い方あってたのか。
3属性の魔法で、唯一何の副作用もない魔法だよな。
他の組み合わせも、こうならいいんだけど、・・・・・・あ、あった。
神殿の中央にある祭壇。
ここが入り口みたいだ。
部屋までは、短い一本道だな。
トラップの類いも無さそうだな。
「ここから入るみたいだ」
「アドルフ、いつもみたいに壊さないのか?」
「近くに魔族がいたら厄介だろ? 音がして来られたらまずいだろ?」
「おお! アドルフが、まともな判断してる」
「一言余計だよ」
いつもの様に、溝に短剣を通す。
重い音を上げながら石の扉が開き、部屋がその姿を見せる。
「さて、次はどこに行くんだ?」
「ラインハルト、終わりみたいだ」
これまでと同じ造りの部屋には、何処にも次の指示がなかった。
代わりに、箱が一つ。
「おい! これって・・・・・・」
「うん、魔道具・・・・・・だね」
俺達自身も使っている魔道具の箱。
おかしい・・・・・・何で原初の遺跡にこれがあるんだ?
セロフィーが出来たとき、初めて世に現れた魔道具の箱。
原初の世代から、数百年開きがある。
これを管理してきた人達が置いたのか?
いや、だったら今この時に誰も居ないのは、不自然じゃないか?
たまたま、・・・・・・なのか?
周囲を見回しても、誰の気配もない。
考えすぎなのか?
こうして佇んで居ても、何にもならないよな。
意を決して、箱にを開ける。
「アドルフ、何がある?」
「これ、本・・・・・・だ」
表紙に『はうとぅ~』と書かれている。
ラインハルトに見せると
「何てかかれてるんだ?」
と、わからないよな。
だって、これ平仮名だもん。
何で平仮名? 原初も日本人? いや、平行世界の日本人だったのか?
中をめくっていくと、
「その短剣の使い方みたい」
「はぁ?」
書かれているのは、短剣に宿った神殺しの法の使い方だった。
使い方は簡単、扉を開ける際に魔力と仕掛けにあった砥石で研がれた短剣を使用者に刺すだけ。
それで、神殺しの法が手にはいるらしい。
ただ、副作用がある。
それは、使用者が神になってしまうこと。
名前を忘れ去られ、記憶に留まらなくなる体質になる。
基本的には、不死身だけど神殺しができることから、勿論殺せると言うものだ。
直ぐに神になるわけではなく、5年の猶予があるらしいが、不可逆的な変化のため、元には戻れない。
妻にも子供にも、家族にさえも忘れられてしまう。
俺達は、短剣を使うことなく、街に戻ることにした。




