101話
驚いているラインハルトをしり目に、ちょっとだけ困ったことになっていた。
どうやって降りればいい? 魔力切れまで待つのか?
現在目測で、上空20メートル位に佇んでいる。
果たして、魔力切れで落下した場合、無事で済むのだろうか?
・・・・・・いや、無事は無いだろう。
どうする? このまま奇跡に掛けるか? 奇跡的に無事に落下、着地する可能性に掛けるか?
じたばたして、事態が悪化しないだろうか?
逃げだしていたラインハルトも、下に到着したようだ。
なら、もう少し無茶をしても大丈夫かな?
俺は斥力とは逆の魔法、引力の魔法を使う。
何時だったか、『人工衛星は常に落下し続けている』そんな話を聞いたことがある。
なら、引力で安定している現状に、不均等な力が働いたらどうなるだろうか?
今俺は、地上に立っているかの如く安定して、上空20メートル程度に立っている。
恐らくこれは、元々の引力と魔法の斥力が安定して反作用している結果だと思う。
この状態で、常に俺の前方に引力を働かせれば、飛べるのではないだろうか?
そう、空を自由に飛びたいな。人間だれしもが思い描く夢の一つだ。
夢を見てしまったら、可能性に掛けるのは男の子の特権ではないだろうか?
そう! 今から俺は、人類を超えるんだ!!
下からラインハルトの怒声が聞こえる。
何やら魔力切れまでどうのと、言っている。
ラインハルト! 俺は人間を辞めるぞーー!!
闘気法により安定を見せる引力の魔法。
打ち出したりはしない、俺の前方に魔法を置き常に俺を先導するように移動させる。
安定していた足場が、ゆらりと心許なさを感じさせ、体に浮遊感を伝えてくる。
前傾に体制を変え、引力にゆっくりと引かれる。
魔力を引力に、時々斥力に分け与えながら安定する飛行体勢を整える。
ゆるゆると、身体が前に動く。
風を感じながら、徐々に速度が上がる。
俺は今、この世界で初めて空を飛んだ人間になった!!
よたよたとしながらも、確実に空を移動している。
少しの間、右へ左へ動いていると安定した魔力供給の程度が見えてくる。
飛んでいる、その感動は絶え間なく訪れているが、より速度を、より安定性をと試行錯誤していくうちにだんだんと、遠くに帰っていく。
出来るじゃないか! 間違いなく俺は魔法を使って飛んでいる。
スクロースの時みたいに、落下しているだけじゃない。
確実に飛んでいるんだ。
試行錯誤を続けていくと、疲労感が襲ってくる。
限界が近いのかもしれない。
ゆっくりと円を描きながら、地上に降りていく。
落ちても着地できる高さで、魔力を断ち切る。
地上に降りた俺に、ラインハルトが駆け寄る。
歴史的偉業を成し遂げた俺に、どんな賛辞を与えてくれるのだろうか?
「アドルフ、お前はなにやってるんだ!!」
あれ?
「危険な魔法は、前もって説明しておけと何回言えば気が済むんだ!」
「あの、ラインハルト・・・・・・俺、飛んでたよね?」
「ああ、飛んでいたな!」
「なら、もっと驚いたり、褒めてくれてもいいんじゃない?」
「もう、お前のやる事に一々驚いていられるか!」
「いやいやいや、やってることの種類が違うだろ? 空を飛んだんだぜ?」
「火を出すのも空を飛ぶのも、大した違いはない」
「いや、だいぶ違わないか?」
「お前がやったことだからな。別の誰かなら驚くかもしれないけど、今更だろ?」
えーーーー!
ラインハルトの感性はおかしいよ!
若干興奮気味に、ラインハルトを糾弾するけど聞く耳を持たない。
それどころか、俺を糾弾し始めた。
何故だ? 納得できない。
空、飛んだんだぞ?
おっかしいなぁ~?
話は終わり、夕食に手ごろな鹿を狩り食べていると
「なぁ、結婚したらそのあとどうする?」
と、ラインハルトが神妙な面持ちで聞いてくる。
婚姻の式典まで、2週間もない。当然プレッシャーも感じるだろう。
かくいう俺も、ラインハルト達と同じでもうすぐ結婚することとなる。
「結婚かぁ~、正直現実味が無いよな」
「ああ、嫌いとかではないんだが、顔を合わせずらく感じるな」
「新しい家族が増える、そのこと自体は嬉しいけど、今って言うのがなぁ~」
俺はカチヤと契ったときに、そうあるべきと思い義父に会いに行った。
ラインハルトも正式に挨拶に行かされていた。
嬉しいのに、不安が襲ってくる。
不満はない、不安なだけだ。
不意に神様の顔が頭に浮かぶ、
『ハーレム? 正直おすすめせんけどね?』
その言葉の意味が、今になって分かってきた。
嫁が一人でも、こんなに色々考えなくてはならないのに、複数人嫁がいるなんて・・・・・・。
恐らく、俺の精神では耐えられないだろう。
「けど、ラインハルト。お前は王族なんだから妾とか必要なんじゃない?」
「言うな、アドルフ。今頭の中からその可能性を、排除した所なのに」
「でも、実際は?」
「・・・・・・あと、二人くらいなら」
「あ! 言ってやろぉ~、クラウディアに言いつけよ」
「おい! 絶対にやめろよ? 絶対だぞ?」
おっと、その言い方。フリですか?
婚姻が迫った男友達通しの夜は、こんな感じでふけていくのであった。
そうして、いよいよ婚姻の儀式も差し迫り、気軽に街から出れなくなる時間が増える。
ラインハルト達の式の翌日、俺達の式が予定されている。
魔法の開発も式が終わるまで、お預けになった。
何でも、大事な式に新郎が怪我をしてしまったら縁起でもないと言うことらしい。
そんな下手打つようなことしないって、・・・・・・たまにしか。
男同士の語らいの夜、俺達はある事を約束した。
次の旅立ちは、速くても一年後。
そう決めていた。




