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100話

 王都一帯で、速度のある魔物と考えると猫なんだが・・・・・・試しに狩ってみたけど、やっぱり物足りない。

なにせ俺が4段階を使うだけでも、十分に狩ることのできる魔物だしな。

 神速をに近い魔法を試すのには、もっと速い魔物がいい。

欲を言えば、速くて弱い魔物がいい。

そんな、都合のいい魔物なんか・・・・・・いた!


 俺の探索魔法に引っかかった一種類の魔物。

小型で、繁殖力が強く幾ら狩っても文句の出ない魔物。

ネズミだ。


 小型の動物は、魔物化すると巨大化する動物が多い中、ネズミと猫は小型で速度特化することが多い。

恐らく、ネズミが巨大化すれば猫も巨大化するだろう。

捕食される側は逃げることが出来るように、捕食側はより捕食できるようにと、その能力を特化させていったのだろう。

命の神秘って奴だな。


 改めて、相手をしてみると最高速からの反転などは、実験相手にちょうどいい。

「イケそうか? ラインハルト」

「くっ! この年になってネズミ捕りとはな」

「そう言うなよ、それとも馬でも捕まえるか?」

「分かってるとは思うが、馬は軍馬になるから、手を出したら俺でも庇えないぞ?」

「知ってるよ、だからネズミ捕りなんだよ」


 ネズミ捕りは、本来罠を使って行う。

ネズミの攻撃力はほぼ無いに等しいから、子供のおこずかい稼ぎと言う認識だ。

因みに、冒険者でこれを専門に行うものは、この国ではいない。

我が国で大人がこれを行うことを、ネズミ飼いと言う。

これは臆病者や大人げないと言った意味だ。


 なので、ラインハルトの名誉のために、今回は王都から滅多に人の来ない森に来ていた。

軍人も今は入ってくることは、そうそうない。

俺が、腐敗魔法で駄目にした狩場だ。


「今回ばかりは、アドルフの暴走がありがたいな」

「そうそう、俺の行動に無駄は無いのだよ」

「よく言うよ、こんな大きな森一つを駄目にしといて」

「全部じゃないし、大型が居なくなっただけだし」


 ラインハルトにナイフを持たせ、ネズミの生息域に近づいていく。

「はぁ、じゃぁ行ってくる」

「ほい! 頑張って」

魔法を掛けて、ラインハルトを見送る。

ラインハルトが一歩踏み出すと、その姿を捉えることは出来なくなっていた。

近くから、ネズミの断末魔が聞こえてくる。

視力を強化して、ネズミとラインハルトの動きを追う。


 ネズミは、仲間が一瞬で息絶えたことにパニックになったのか、散り散りに逃げていく。

ラインハルトの姿は、依然として捉えることは出来ない。

しかし、周囲のネズミが次々に狩られていくことで、ラインハルトの行動の結果だけは分かる。

地面を見ても、下草が少し舞うくらいで、俺が使用した時のように抉れることもない。


 やっぱり、これが正しい使い方なのかもしれない。

それとも、使う人物に寄るのだろうか?

少なくとも俺よりも、ラインハルトの方が身体強化を使うことは長けている。

そう言った要因も、この結果に繫がっているんだろうか?


「おい! アドルフ、何時までやればいいんだ?」

「あ、ごめん。考え事してた」

「全く! まあいい。それよりこの魔法、思ったより優秀だぞ」


 話を聞いてみると、周りの風景が止まっているかの様に見えるらしい。

強化しないと見えないネズミが、抵抗もなくその場に留まっているので簡単に狩れたらしい。

身体的負担も少ないらしい。

ただし、身体強化魔法とも相性は良くないようだ。


 試しに闘気法を使用せず、身体強化だけで魔法を掛けてみると、ラインハルトの両足は折れてしまった。

うーん、闘気法ありきの魔法か。

俺達には有り難い魔法だけど、一般の人にとってはどうだろう?

そもそも、闘気法自体がそんなに重要じゃないだろう。

闘気法が無くても生活には困らないし、何よりかなりの大型を中心に狩猟する人じゃないと無用の長物出しな。


 それに速さは重要だけど、一般の冒険者はそこまで速度を重要視していない。

もっと重要なのは連携や獲物に気が付かれない様に気配を殺す技術だ。

この魔法は、いわば対10段階に特化していると言って良い。

大雑把に言えば、対魔族用の魔法と言えるだろう。


 俺達がこれからすることを考えれば、これ程有用な魔法は無いだろう。

「さて、アドルフ。そろそろ帰ろう」

「え? これからが本番だろ?」

「何を・・・・・・するつもりだ?」

「ほら、闘気法を使えば暴走した魔法も使えただろ?」

「ああ、そうだな」

「まだ使えなかった魔法ってこれだけじゃないじゃない?」


 使えなかった魔法、それは重力魔法だ。

あの二つがどんな風に変わるのか、知りたいし知っておかなければならない。

 それは、開発をしている俺の責任でもある。

なら、人の来ないこの場所は、実験には最適の場所と言えるのではないだろうか?


「駄目だぞ! これ以上荒らしたら、この狩場が回復しなくなるかもしれない」

「ラインハルト、どんなものでも進歩には犠牲は付きものなんだよ。悲しいね」

「率先して犠牲を増やしてる、お前が言うことか!!」

「・・・・・・興味、無いの?」

「・・・・・・無いと言ったら嘘になるが・・・・・・」

「だったら、ね?」


 ラインハルトが揺らいでいる内に、実験を始めてしまおう。

「おい! やっぱり駄目だ!」

「ごめん、もう止まらないかも」

「お前のさじ加減一つじゃないか!!」

「いや、これは凄いぞ」


 使おうとしたのは、斥力の魔法。

闘気法を使用して、前回同様に撃ちだす。

残念ながら、この魔法の攻撃性は微塵も落ちていない。

魔法の当たった木が、勢いよく空に打ち上げられる。

さながら、ロケットのようだ。


 空を飛んでいたトンビのような鳥を巻き込み、木が大地に打ち付けられる。

土埃と轟音、暴風で立っているのがやっとだ。

威力は上々。だけど、俺の感じている攻撃性が警告なのだとしたら使用方法を間違えている可能性は高い。


 撃ちだす魔法ではないとしたら、自分に掛ける魔法だろうか?

・・・・・・うーん。ものすごく怖いな。

何せ、直前にあんな光景を見ちゃうと・・・・・・。

けど、これは魔法の発展のため。

いおやいやいや、そんなに簡単に割り切れるわけないだろ!


 あ! 仲間に掛ける魔法かもしれない。

しょうがないな~~。

ラインハルト・・・・・・あれ? 居ない・・・・・・。

ん?

あ!! アイツ逃げたな!


 ・・・・・・仕方がない。

自分で試すか。

目を瞑り、魔法を自分の体に浸透させる。

警告は無いみたいだ。これで良いのか?


 目を開けると、そこには前世でも見たことのない光景が広がっていた。

森にいたはずの俺の目の前には何もなく、下には先ほど居た森が広がっていた。

身一つで、空に浮かんでいる。

浮遊感もなく、ただ空に立っていた。


 遠くに、ラインハルトが走っているのが見える。

アイツ、俺を撒くために王都とは反対に逃げてるな。

気が付かせる為に、近くに魔法を撃ちこむ。


 振り向くラインハルトに、大きく手を振る。

大口を開けて、見上げたラインハルトはピクリとも動かなかった。 

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