99話
神様の言葉と言うのを、もう一度思い返す。
「『使い方を変えないと』っか。どういう意味だろう?」
この世界で滅多に言わなくなった、誰にも投げかけていない言葉。
そう、独り言だ。
皆と別れて、一人実家に戻り自室で空を見上げながら、言葉を紡ぐ。
あの魔法、人の領域をはるかに凌ぐ速度を生み出す魔法。
あれの副作用なのだろうか? またしても俺の両足は骨折した。
街に帰ってくる途中、ただ歩いているだけなのに、両足の骨は見事に粉砕していた。
副作用。それは間違いはない。
前回は魔法を使用している時に骨折したらしい。
今回は、魔法を使用して多少の時間が空いた。
闘気法による防御が出来ているのか? ・・・・・・それは間違いが無いはず。
では、この結果は何だろう?
根本的に何かが間違えているのか?
身体強化ではないとしたら、・・・・・・それが普通だろう。
何せ、元々身体強化魔法は存在していた。
その中に、俺の魔法と同様の効果のある魔法もある。
10段階。それは、人族では使うことが出来ない魔法。
自身の寿命を削り、爆発的な強化を施す魔法だったな。
人族の寿命では使用ができないくらいだ、余程の時間を消費するんだろう。
代償が寿命、俺の魔法の代償が足の骨。
果たして、つり合いが取れているか?
俺の方が代償は少ない。
魔法の副作用は下手をすれば、命を落とす可能性の方が高い。
なら、俺の魔法はその軽減に成功しているのではないか?
それでも実用に耐えられない。
もしかして、俺が人族だからか?
魔族であれば、耐えられるのではないか?
いや、そんなはずはない。
それなら、神は『使えないからやめろ』と言うはず、『使用法を変えろ』とは言わないだろう。
俺はどんな固定観念に侵されているのか?
悔しい! 神の目をもってすれば正しい方法が分かる。
それに縋りつきたい俺がいる。
基礎理論の時もそうだ。俺は神の言葉に縋りついた。
魔法の普及に全力を尽くす? その全力が神様の言葉待ちか?
自分が笑えてくる。
けど、ここに来て神の言葉が正しいと思ってしまう自分がいる。
一晩経っても俺は部屋から出ることが出来ない。
あの扉の向こうに行ってしまえば、楽な方に流れてしまうかもしれない。
こうして部屋にいても、何も始まりはしない。
それも分かっている。
屋敷に子供の声が響く。
あれは・・・・・・弟たちか?
仮面やら色々なお土産を渡したな。
子供特有の高い笑い声。トタトタと短い足音が俺の部屋に近づいてくる。
「兄上! 魔法教えて!!」
「兄様! 兄様! 私もーー!!」
キャイキャイと、俺の部屋で走り回る2人の子供。
クリスとヘルガだ。
クリスが10歳。ヘルガが8歳だったか?
クリスの後をヘルガが付いて回る。
「魔法は怖いものなんだ。二人とも父上に許してもらったのかい?」
「父様は良い言ってた! でも母様は駄目って!」
「かあさまは、ヘルガは魔法よりれいぎ? さほう? が先だって!」
2人は子供らしく順調な姿を見せている。
俺は、さぞ異質に見えただろうな。
「兄様~! 母様に魔法教えてもいいって言ってください」
「下さい!」
俺の腕を引きながら、母様の所へ連れて行こうとするクリスとヘルガ。
「クリストフ、ヘルガ。 袖が伸びるよ」
「そんな事より、魔法です」
「いいから、いいから」
俺を引いて、部屋から出ようとする2人。
全く、しょうがない。
「じゃぁ、クリストフ怒られたら、ちゃんと兄を庇ってくれよ?」
「大丈夫です」
「ヘルガも守る~!」
「じゃ、行くか?」
「はい!」
「うん!」
そして、3人仲良く母様に怒られるのだった。
まぁ、これで良い。2人は俺を部屋から連れ出す手助けをしてくれた。
部屋で、陰鬱としていても何も変わらない。
それは分かっていた。 その一歩に対しての良い援護射撃になった。
なるほど、兄弟ってこう言うものなのかもな。
互いが互いを知らずに、助け合う。
悪くないかもしれないな。
ん? 助け合う・・・・・・か。
俺の魔法を思い返すと、自分だけで完結する物ばかりだな。
確かに魔法の反発は抑えられたけど、それでも無くなった訳じゃ無い。
あれは、俺に対する警告だと考えれば、どうだろう?
自分には使えない、そう言う警告だとしたら。
そうだ。俺は魔神に対して変に拘りすぎていたのかもしれない。
俺と魔神の喧嘩そう考えていたけど、あの場にいたのは俺達だ。
多少悔しい気持ちはあるけど、仲間に殴ってもらうのはどうだ?
特にラインハルト。あいつには今後、王様になってもらわなければならない。
それには、伯と言うものが必要だろう?
そうさ! そうに違いない!!
「母上、申し訳ありません。急用ができました。」
「アドルフ?」
「兄上!? ズルいですよ!」
「や~! 一緒に行く~!!」
「済まない、2人とも。後で後でな?」
縋りつく2人を置いて、屋敷から城に向かう。
いやはや、俺はまた間違いを犯すところだった。
また、自分で全てをやろうとしていた。
俺には、パーティーがいる。
仲間がいる。忘れがちだけど、心強い信頼を置ける仲間がいる。
そう、協力してきた仲間。
彼らに手助けしてもらうことの、どこに恥じる要素がある。
心置きなく手伝ってもらえればいい。
彼らだって、それを望んでいる。そうに違いない。
「そうだろ! ラインハルト?」
「? どうした? アドルフ、藪から棒に」
「まあまあ、一寸中庭行こうか?」
「? 何言って・・・・・・! 嫌だ! 絶対行かないぞ!!」
「そう言わないで、仲間だろ? 心友だろ?」
「そう言ってもらえるのは、有り難いが。 その目をしている時は俺に近づくな」
「どの目? 自分じゃ分からないな? ささ、行こう!」
じゃれたがるラインハルトを闘気法を使い制して、中庭に連れて行く。
俺の手を振り切ってるラインハルト。なんだ、闘気法まで使ってくれて。
実験に付き合う気満々じゃないか。
背中に魔法を撃ちだす。撃ちだそうとすると、あれだけ手を焼いた魔法の反発力も少ない。
魔法を受けたラインハルトの姿を、一瞬見失う。
なるほど、こう言う風に見えるのか。
確かに、魔神と同等と言って良いかもしれない。
大きな音と共に、ラインハルトが姿を現す。
彫像と衝突したらしいな。
ラインハルトに近寄り、全身を観察する。
骨折は無いみたいだ。・・・・・・打ち身はあるけど。
回復魔法を掛けて、ラインハルトを起こす。
事情を説明し、症状を確認する。
俺が体験した魔法の効果とは、様子が違うみたいだ。
知覚を超えることはないようだ。しかし、あまりの速さに使用までは訓練が必要みたい。
なるほどなるほど。
あとは、魔力の運用をしながらとか、実戦状態でもデータも欲しいな。
「ラインハルト、狩りに行かないか?」
「? え、いきなり?」
「城の外、出たくない?」
「・・・・・・行こう!」
ヘルマン伯爵には悪いけど、今は魔法が優先で。
あ、何なら魔法行使許可証を久しぶりに使ってもいいな。
「アドルフ、さっさと行くぞ!」
「おお、すぐ行く!」
ラインハルトと二人っきりの狩りか・・・・・・。
あれ? 何気に初めてか?
まぁ、今更だけど。




