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ラフィアス・オンライン開発室  作者: 高瀬ユキカズ
最終章:絶望と終焉
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絶望のログアウト

――フール、フェルト、ネガルそしてノノミンは、開発室のメンバー対プレイヤーの攻防を見ていた。見ていることしかできなかった。それはノノミン以外の彼女らにとって桁違いの攻防。彼女達では到達できないであろう強者対強者の戦いだった。


 そして傍目はためにも開発室側が不利に見える。ジリ貧だった。おそらくここにノノミンが加わっても開発室が敗北する時間が若干遅くなるだけだ。


「ミカリンさん……タカヤンさん……」


 フールが声を振り絞る。


「ネガル様……これはちょっと無理そうですね……」


 フェルトの問いかけにネガルは何も話せないでいる。ただ不安そうな顔色だけを浮かべている。


 プレイヤー対開発室。激しい攻防が数時間は続いたであろうか。


 プレイヤーの攻撃に耐えかね、最後の力を振り絞って飛び上がるミカリン。その姿をフールが捕らえる。「ミカリンさん!」叫ぶフール。しかしミカリンのその行為は自殺行為に等しい。飛び上がったミカリンは的にされて撃墜される。そしてそのまま瀕死の状態で頭から落下する。


「ミカリンさん! ミカリンさんが! 私が助けに行く!」


「待ってください! 今のあなたでは無理です!」


 ネガルの声を聞かず飛び出すフール。ノノミンがその手を掴む。


「待って、フールちゃん……フールちゃんが行っても無理だよ……」


 だがフールはノノミンの静止を振り切る。単独でプレイヤーの中に突っ込んでいこうとする。「ばかフール! 待ちなさい!」叫ぶフェルト。フールを押さえつける。「離して! お姉ちゃん! ミカリンさんが!」2人は揉み合う。そしてフェルトを突き飛ばし、プレイヤーの群衆へ向かって走りだすフール。


 ノノミンは迷った。そしてフールのあとを追おうとするノノミン。しかしその手をネガルが「がしっ」と力強く掴む。


「フールちゃんが死んでしまいます! あんな装備じゃ無理です! ノノミンさん! フールちゃんの装備を強化して!」


「いや、私じゃ無理……」


「フールちゃんはタカヤンさんの『権威委譲の指輪:オーソリティ・リング』を持ってるんです! 管理者権限スーパーユーザーとやらの情報操作が有効なはずなんです!」


 いままで冷静だったネガルが声を荒げる。


「そんなこと……」


 そんなことあるのだろうか? とノノミンは考える。だが時間はない。


 そのアイテムはタカヤンが通常ユーザーとして来てしまい、ログアウトできなかった経験から作っておいたもの。通常ユーザーであっても装備することで管理者権限スーパーユーザーと同等の特権を有することができ、外からその人の情報を書き換えることもできる。しかし、フールに使えるかどうかは未知数だ。ノノミンはタカヤンがそのアイテムを持っていることは知ってはいたが、全員が管理者権限スーパーユーザーの特権を持っているため使うことはないと思っていた。


 ノノミンはキーボードを取り出す。コンソールを開き、フールのステータスを取得するコマンドを打つ。

 フールのステータスが表示される。

 確かに情報が見える。これなら操作できそうだ。

 装備の強化値をすべてMAXに設定する。+10を入力するよりこの方が早かった。


 そしてフールのステータスを再び確認する。


 そこにあった装備の強化度数、数値は「(マイナス)1」。攻撃力、防御力が共に「(マイナス)1」。


 「まずい」ノノミンはとっさにそう思った。バグっている可能性が高い。この場合数値の直接変更が難しい可能性がある。


――ここからの行動は何が最善なの? 強化度数の数値を書き換える。できない。どうしよう……。装備を変更するか? しかしその操作も受け付けない。


 ゲームなら一度システムを停止してプログラムのバグを直して再実行する必要がある。しかしこの世界ではシステム停止の手段も再実行の手段もない。


 フールが目の前のプレイヤーに襲いかかる。「なんだおい、混乱に乗じたPKか?」そう言いながらプレイヤーがフールに反撃する。フールを一撃で瀕死に追いやるほどのその攻撃は反転され、プレイヤー自身に数倍になって跳ね返る。そのプレイヤーは膨大な力を受け、その場所を中心に丸く小さな爆風が起こる。地面がえぐられて半円状のクレーターと化し、そのプレイヤーが滅びる。それを見て他のプレイヤー達が一斉にフールを攻撃。攻撃が跳ね返る。フールの周囲に複数の爆風、そして出来上がる複数のクレーター。


 フールはミカリンの近くまで容易に辿り着く。そしてフールは目の前のプレイヤーに対してミカリンに被害がでないように手加減をして魔法を使ったつもりだ。ところが魔力が暴走する。放った魔力が尋常ではなかった。その魔法がプレイヤーへ飛ばず、自分に帰ってくる。それが反発され、周囲に巻き散らされる。その魔法がプレイヤーを攻撃するのだが、それが再びフールに戻ってきてしまう。そして再び周囲に撒き散る。連鎖反応が起き、繰り返され、増幅され、フールを中心に巨大な爆風が起こる。フールの周囲一体が巨大なクレーターと化す。ベガルトの街一つを爆風が飲み込んだ。


 当然ラフィアス・オンラインのプレイヤーは全員死亡。ミカリン、シガシガ、タカヤン、ユウ、メイリスも巻き添えになる。フールの周囲には地面のクレーターだけが残る。戦闘中のプレイヤーが消滅する。


『プレイヤー達に異世界に対する絶望をもたらすことでループを終焉させる』


 その予定だった。

 フールの力が強すぎた。

 爆風は止まらない。


 フールは呆然と立ち尽くしてそれを見ている。突然に起こった自身の魔法に加わる負の方向への増大。何が起こったか理解できない。一度放たれた負の魔力は止まることがない。


 連鎖反応が止まらない。


 クレーターが拡大する。


 拡大する。


 拡大速度が速まる。


 離れた所にいたフェルト、ネガル、ノノミン、そしてすべてが巻き込まれる。


 すぐにラファイアス王国全土に広がる。


 ラファイアス王国の崩壊。


 空間に亀裂が入る。


 異世界の崩壊。

 

 世界が維持を保てない。


 世界が消失する。


 上空――世界が存在しない今、どこからどこまでが上空だかわからないが――を舞う小さなドラゴン。





――――





――どれほどの時間が経過したのか……。世界が消失し、フールは夢のような世界に浮かんでいた。ともに浮かんでいるその小さなドラゴンが心のなかに語りかけてきた気がした。


「大丈夫、フールちゃん……すべては……」


「夢のせかいだから……スベテは……ゆめのセカイだから……ユメのせかいだから……かえろう……」


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