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唯一の想定外

 フールはラファイアス国王であるシルフィール3世の元へやって来た。そこでタカヤン達から貰ったアイテムをシルフィール3世に見せながら、これほど強力なアイテムを持った彼らが宝物庫を襲うことはないんだと懸命に説明した。フールの説明はつたないいものであったが、なんとか彼らを牢から出してくれるように必死に懇願した。

 

 シルフィール3世はフールの話だけではあまりに説明が足らない上、フールの持つアイテムの価値も当然わからなかった。そこで王国魔術師の1人にアイテムを鑑定させたところ、フールの言う通り驚異的な威力を発揮するものだと判明。


 その時点でようやくシルフィール3世は彼らのうちの1人を自分の元へ連れて来るように命じ、彼らのリーダーであるタカヤンが国王の面前に連れてこられた。


 ここまでタカヤン達の思惑通りに進んできた。


 今タカヤンは両手にかせをはめられている状態で国王の前に連れてこられ、ひざまずいている。シルフィール3世が直々にタカヤンに話す。


「さてタカヤンとやら、フール・ライアス総魔術師長の説明だと、お前たちは宝物庫の宝なんて興味を持たないほどの強力なアイテムを所持しているそうだな。それはわかった。だがなぜお前達はそのような強力なアイテムを所持しているのだ?」


 国王による直接の尋問にタカヤンが答える。


「はい、国王様。私達はフレイタム王国のネガル女王より、フール・ライアス様と行動を共にするように申しつかっておったのです。目的はフール様との親交を深めるためであります。ネガル女王の援助もありますが、我々は十分な財力もあるため容易にこれらを手に入れることが可能なのです」


「では、フール・ライアスの説明する通り、ただ単に宝物庫の警備の確認だったと言うのだな?」


「ええ、もちろんです。私達はラファイアス王国に敵対するつもりなど毛頭ございません。それに私達はいつでもあの牢から出ることは可能だったのですから」


「それはどういうことだ?」


「つまりこういうことでございます」


 そう言うとタカヤンはこの場所の位置情報をマーク。それと同時に『天使の翼:エンジェルズウィング』を使って国王の面前に転移して姿を現すミカリン、ノノミン、シガシガ。3人が国王の前に跪く。タカヤンがこの場所をマークするその行為こそが、ミカリン達が転移するための合図であった。


「この通り、私達はいつでも牢から出ることのできる能力すら持ち合わせております」


「ふむ、我が国の警備能力の面目を潰さないため、といったところか。最初に宝物庫でお前達を囚えた時、フール・ライアスがお前たちを仲間だと言い張るのでな。儂はお前達を比較的待遇の良い牢に入れてはおいたのだ。女性もいたことだしな。さて、そこの女3人に力があるのはわかった。後はお前だな、タカヤンとやら」


 ん? タカヤンは声にならない声をだす。


「儂はお前たち全員を信頼しているわけではない。タカヤン、お前には特殊牢に入ってもらってそこから出られたら、お前の能力も認め解放してやろう。まあ出られなかったら……他の3人が余計なことをしないための人質ということだ」


「――は……?」


「さあ、コヤツを連行しろ。フール・ライアスとの関係を儂の妹のネガルにも確かめねばならんしな。それまでは特殊牢に入っておれ。タカヤンよ、我が国最高の監獄から出られるのなら自由に出て良いぞ。その時はお前を解放することを約束しよう」


 え、え? という声を残してタカヤンは両脇を衛兵2人に抱えられ、再び地下牢へと連行される。しかし今度は以前の牢とは違う。さらに地下のそのまた地下にあるこの牢はとても……狭い、暗い、汚い、カビ臭い、うめき声、虫が這いずりまわる音。おまけに高度な防衛魔法までがかかっている。『天使の翼:エンジェルズウィング』は当然のように使えない。タカヤンは1人、さらに厄介な牢にぶち込まれることになった。

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