1度死んだ戦士たち
――『紋別』らはいったいどうなったのであろうか……あの時『紋別』『ユウ』『シラゴウ』『ライオット』は全滅した。しかし4人は生き返った。正確に言うと生き返りはしたが、動くことはなかった。彼らの体が4つ、まるで屍のようにビグルム城の一室に無造作に置かれていた。
残りぎりぎり1時間しかなかった。ユウが死亡した後復活の魔法で無事に生き返ることのできる時間だ。
彼らは絶命し、12時間が経過して自動的にログアウトするはずだった。
しかし4人は魔王の魔法により生き返えらせられた。即座に睡眠の魔法、続けて体を麻痺させられ、そのままここに連れてこられた。彼らの装備の外観はそのままだが、損傷している。復活の魔法によって復活した場合、完全に溶かされたり、焼かれた装備でも損傷した状態ではあるが元に戻る。裸のまま復活することはない。
4つの塊の前で妖艶な女性が口を開く。
「魔王様、この後この者達をどうされるのでしょうか? 生き返らせたのは拷問して、彼らから何らかの情報を得るためでしょうか?」
魔王を襲おうとした『紋別』達の話を聞き、彼らを罠にはめたダークエルフのエルム・グルントがそこにいた。
「エルムよ。最初は私もそのつもりで生き返らせたのだ……だが、私の直感だ。少し気になることがある……」
威厳のある声、そして深い地獄の底から響くような重みのある声で魔王と呼ばれた存在が答える。
「確かにこの者達言動が変でした。睡眠と麻痺が溶け次第、拷問にかけましょう」
魔王はその声に反応しない。少し無言が続いた後何かに気がついたように魔王は口を開く。
「……なるほど……もう来たのか。今回は早過ぎるな。私には微かな記憶が残っておるのだ。エルムよ。この者達は『イセカイ』の者だ。間違いがない。こいつらを拷問にかけてはならん。もし拷問にかけたらな、『帰還:ログアウト』という魔法を使い逃げてしまうだろうよ。ふふ……ふはは……今回も逃しはせんがな……」
「『イセカイ』の者……とは一体? ログアウトとは初めて聞く魔法です」
「我々の世界に憧れを持つ者たちのことだよ。ログアウトは正確には魔法とは少し違う……『帰還:ログアウト』は元いた世界に帰る呪文だ……」
「魔王様はこの者達が来た世界をご存知なのですか?」
「いや……直接は知らん……だが私は転生を繰り返している。転生前の感覚というものが残っているのだ。この者達を決して帰還させてはならない、そう私の中で囁くのだ」
「ではいかがいたしましょうか?」
「エルムよ、この中に1人ダークエルフがいるな……」
「はい、『ユウ』と言っておりました」
「なるほど……では『ユウ』が睡眠と麻痺から回復したら対話をするのだ。もし、他にもこの世界に仲間がいるのなら同情して助ける振りをして逃がせ。他の仲間を誘い出す餌とする。仲間がいないのなら他の3人と同じように4人全員の封印処理をする」
「畏まりました」
「罠を張る場所だが、ここでは都合が悪い……迷宮の奥にでもしようか……」
「仰せのとおりに……」
「迷宮に誘い込むのだ……そのためにここのモンスターの数は減らしておけ」




