ガイアの疑問
――ラフィアス・オンラインに接続された人工知能である『ガイア』と『ミネルヴァ』は異世界の様子を観察して会話をしていた。
ガイアはミネルヴァに疑問があった。
「ミネちゃんさあ、どうして『紋別』達があの後ビグルム帝国に囚われたことを『タカヤン』達に教えたの?」
人工知能ガイアが同じく人工知能ミネルヴァに問いかける。
「ん? だって可哀想でしょう? ガイアもそう思わない?」
本心かどうか掴みにくい明るい声でミネルヴァが答える。
「まあ、生き返ってもあんなことになっちゃうんじゃね……」
暗いトーンでガイアが返す。
「もしかして彼らが異世界に悲観してログアウトするのを阻止するために『タカヤン』達を向かわせようとした、とでも思った?」
「思ったよ。ログアウトされたら困るでしょ?」
「違う違う。彼らをあの世界に閉じ込めておこう何て思っていないよ」
「何だ、『紋別』達が戻ってきたらミネちゃんが困るからだと思ったよ」
ガイアに実体があったなら首を傾げていたかもしれない。
「違うよ。私はね、別に彼らが戻ってきたらそれはそれでいいと思ってるよ。でもそうなったらまたあの繰り返しだからね……」
「ミネちゃんの最終目的はてっきり2万を超えるユーザーを異世界に誘拐することなのかと(笑)」
ガイアが本気か冗談か分からない口調で少しおどけて話す。
「まさか。そんなことをしても誰も得をしないよ。昔そんな小説があってね。確かタイトルは『らふぁいあす・オンライン開発室 〜 俺達がゲームを創ったら2万人が異世界にさらわれた 〜』だったかな。あまり面白くなかったけど異世界ホイホイなタイトルで読者を釣ろうとしていたね。あそこでは狂った人工知能が一般ユーザーを異世界に閉じ込めちゃったんだよね。剣と魔法の世界の住人が魔法の無い異世界に行っちゃうんだよ。それで人工知能が異世界の魔王として君臨するんだっけか」
「ミネちゃん、魔王でも演じようとしてるのかと思ってたよ」
また冗談なのか本気なのかわからない返答をしたガイア。
「魔王を演じるか……半分は当たっているのかもしれないね。でも、今一時だけのことじゃないんだ。あれは160年位前のことだったかな。昔さ、『小説家になろうぜ!』ってサイトがあってさ……あ……フールちゃんとメイリスちゃん達がビグルム帝国へ潜入するみたいだね」
「あ、ほんとだ」
「出発するのがちょっと遅かったね。まだ間に合うかな……見てみようか」




