着せ替えフール
「透明マントを着せたら行けるんじゃないか?」
唐突に男性の声が聞こえる。
それとほぼ同時にその部屋にいないはずの3人が現れた。
姿を表したのは男性2人、女性1人。それを見て目を丸くするフール。
「ごめん、ごめん、隠れてたんだ。フール・ライアス……様だね。僕はシーフル・フジサワルと言います。そして、こちらがレンジ・フクザーワとジェムル・クロスです。みんな開発室の仲間なんだ」
「カイハツシツ……ああ、なるほど、ギルド名ね。それよりどうやって突然現れたの? 一体どんな魔法なの?」
「それはこのアイテムを使ったんだよ。『透明化の外套:インビジビリティローブ』って言って着ると見えなくなるんだ」
半信半疑のフールにシーフルが自分の『透明化の外套:インビジビリティローブ』を着せる。前ボタンを止めて透明になるフール。
「え、え、え、本当だ。自分で自分が見えない」
慌てて前ボタンを外して姿を現すフール。
「す、凄いアイテムだね……これ」
「そうだね、レアアイテムだからね」
「れああいてむ?」
「一緒に行くとしたら隠密行動を取りたいからそれは必須だよ。でも帰ったら返して欲しいんだ」
「う、うん、分かった。一緒に行ってもいいの?」
「いいよね? みんな?」
シーフルが他のメンバーに同意を求める。
「俺はいいよ」「私も。まあ私は留守番だけど」
レンジとジェムルが答えた。
「でもフール様のその装備では弱すぎますよね……」
メイリスが言う。少しくらいなら忍者のスキルで装備能力の看破が可能だ。
「え、マントは凄いよ、ほら」
「ええ、でもマントだけですよね……」
「あ、私いいアイテムあるよ……」
そういってジェムルが取り出したのが『輝ける大賢者の服:シャイニングセージクロス』の上下セット。カリスマ大幅向上、物理防御も魔法防御も能力値アップが半端ないが装備するためには当然レベル制限がある。
「それレベル制限あるよね? LV190は必要だよ。この世界の人間だとどうなんだろう? 装備できるのかな?」
メイリスが疑問を投げかける。
ジェムルがそれを確認するためにフールに話しかける。
「フール様、ちょっと今の服の上からでいいからこれ着てみてくれる?」
「は、はいわかりました。……あ、痛っ!!」
バチッという音とともにフールに痛みが走る。
「やっぱりダメか……」
ジェムルが諦めの声を出す。
「……うーんあれ使っちゃっていいかな? フール様に何かあるとミカリンさんに怒られそうだから使っちゃうか」
独り言のように呟いてジェムルが続けて取り出したアイテム。『聖者の腰帯:ホーリーベルト』だ。
「これまだテスト中のアイテムなんだ……レベルに関係なく装備が可能になるんだよ。アイテムの動作には問題ないけど、ゲームバランスを壊しそうで正式には実装していないんだ。うまく使用制限を付けて初心者育成用アイテムにする予定ではいたんだ」
そう言うとフールに『聖者の腰帯:ホーリーベルト』を装備してもらって『輝ける大賢者の服:シャイニングセージクロス』を着てもらう。今度は何の問題もないようだ。
「おお、うまくいったね。終わったらこれも返してね」
ジェムルが安堵の声を出した。
「は、はいわかりまし……た。でも……この……服……力……凄まじいね……カイハツシツ……何てすごいギルド……」
「まあこれでフール様の命は守れそうだね」
シーフルが言う。
「あと念のため私の『生命の宝石:ヴィクティムジェム』も貸しておくよ。私は留守番だからさ」
フールはジェムルから『生命の宝石:ヴィクティムジェム』を受け取った。
――――
会話の中でフールは考えを巡らせていた。
(『透明化の外套:インビジビリティローブ』は凄いけど力は感じないから戦闘には直接は役に立たないか)
(『聖者の腰帯:ホーリーベルト』は服の静電気を除去するアイテムだ。珍しいけど強くはないね)
(『輝ける大賢者の服:シャイニングセージクロス』は桁外れ。凄すぎる)
(『生命の宝石:ヴィクティムジェム』はお守りの類? これも何の力も感じない)
フールが出した結論はこうだ。
(アイテムを4つも借りちゃったけど、英雄級のアイテムは『輝ける大賢者の服:シャイニングセージクロス』1つだけかな。あとは大したことは無いのかな。簡単に貸してくれたしね)




