相談
――開発室リーダーである高柳ことタカヤン達のグループが牢に入れられている頃、小田部ことメイリス・コタビスが同じパーティ仲間の3人、シーフル・フジサワル、レンジ・フクザーワ、ジェムル・クロスをラファイアス城内の自身のメイド室へと呼び出していた。呼び出しを受けた3人は急いで『天使の翼:エンジェルズウィング』を使ってこの部屋へと転移して来た。
この部屋はメイリスが特別扱いで用意してもらった個室だ。ここで他の3人に事情を説明した。
タカヤンにスパイアイテムを持たせたこと、タカヤン達が預言者ダーリアに会いに行ったこと、そこで紋別達のグループのうち3人が囚われていると知ったこと、タカヤン達が装備を強化するために王国の宝物庫に侵入して捕まったことを話した。
それを聞いて、最年長で盗賊のシーフル・フジサワルがまず発言する。
「さて、事情はわかったけど俺達はどうする? メイリスのお陰でいくら探しても行方が分からなかった紋別さん達の居場所が判明したのはいいが、タカヤンさん達までが捕まるとはな」
続けて女性の声、
「何でタカヤンさん達がドジを踏んだか分かりませんが、まあタカヤンさん達なら自力でなんとかできると思うんですよ。それより紋別さん達は助けたほうが良さそうですね。ところでビグルム帝国の戦力ってどうなっていますか?」
尋ねたのは宝石職人ジェムル・クロス。
「正確には分かっていないけど、まともにぶつかったらタカヤンさん達でも無理だろうね。あそこはモンスターだけの国で、ヴァンパイアロードだけじゃなくてグレーターデーモン、そしてラフィアス・オンラインにいない正体不明の悪魔までがいるんだから」
野伏のレンジ・フクザーワが答える。
「俺達でまたあの国に潜入してみるか……少し危険だけど。どうだろう?」
シーフル・フジサワルの提案に他の3人が頷き、シーフルが話を続ける。
「メイリス悪いけどタカヤンさんに手紙書いてくれるかな。ジェムルはお留守番ね。今回は3人で行こう。潜入だけでなく、可能ならそのまま救出するという方向で」
「わかった。タカヤンさん達とはすでに接触済みだから通信スクロールの制限は解除されているはずだね。手紙書いてみるね」
そう言ってメイリスが通信スクロールを取り出す。
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こんにちは、タカヤンさん。
お久しぶりです。
タカヤンさん達はすぐには牢を出られないですよね?
私達が『紋別』さん達の様子を見に行ってきます。
もし助けられるようでしたら救出してきます。
心配しないで待っていてください。
メイリス・コタビス
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「はい、送ったよ」
「メイリスありがとう。さて、今回は危険を伴うと思うけど、メイリスも行って欲しいんだ。メイリスの忍者スキルがきっと役に立つと思うから」
「もちろん行くよ。大丈夫だよ、いざとなったら私すぐ逃げるし……しっ……静かに!」
コンコン。
メイリスの個室をノックする音がした。
「メイリス・コタビスさん、いらっしゃいますか?」
少女の声だ。




