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フレイタム城内への潜入

 メイリスは今後のシナリオを考えながら、急ぎ行動を開始する。


 タカヤン達に出会ったことは同じパーティのメンバーへ簡単に報告。


 メイドを統括する執事にスキル『執事へのお願い』を使って紹介状と推薦状を書かせる。


 それを持ってメイリスはフレイタム王国にある隠れ家へ転移。


 そこからフレイタム城へ走る。


 城門で紹介状だけ見せて城内へ侵入。


 城内は人に合うと面倒だったので忍者スキルを発動して直接メイド長のところまでダッシュ。


 メイド長に推薦状を見せると同時にスキル『メイド長のお気に入り』でお気に入りメイドとして認識させる。


 同僚達には数日前から働いていたことにするため『同僚の記憶操作』のスキルをかけまくる。

 

(ふう、何とか間に合ったはず……)


 メイリスは楽しかった。これが彼女にとっての冒険なのだ。未知を探索したり、強さを追求したり、他のギルドと覇権を争ったり、そういう冒険もあるが彼女はそんなことには興味がなかった。


 ラファイアス城にいた時の同僚メイドであるメイラ・テナール。その姉であるフレイタム城で働いているライラ・テナールもすぐに見つかり、スキル『同僚の軽口』を使ってライラからネガル女王の計画を聞き出すことに成功。

 ネガル女王はこれからライラ・テナールと共に一芝居打ってタカヤン達に接触すると言う。


(なんか変な女王様ね)


 と思ったが思惑通りネガル女王が強者を探す一環でタカヤンらに接触しようとしているのはメイリスにとっては都合がいいと解釈。


 そしてメイリスの期待通りにタカヤン一行を連れてくるネガル女王。ここまでメイリスのシナリオ通り。


 そのネガル女王の客人に対して、「私もぜひお手伝いさせてください」との言葉で他のメイドらのお茶出しの仕事に割り込む。もちろんメイドのスキル『仕事の横取り』を発動させるのを忘れない。


 そしてまんまとタカヤンらの招かれているネガル女王の部屋にお茶を持って入ったメイリスだが……


(……何この重苦しい雰囲気……あはは……)


 同僚メイド3人とこの部屋にお茶を運んだメイリスはこの光景に思わず笑いそうになった。事情はわからないが、タカヤンらが深刻な表情をしている。女王の前で緊張しているのだろうというくらいにしか思わなかったメイリスはいたずら心でタカヤンに「ウインク」してみる。反応がない。


(気がつかないし……)


 スキル『完璧なメイク』も使っているため、ここでメイリスに気がついてしまうのは彼女のシナリオにはなかったがちょっと不機嫌になって部屋を出るメイリス。


(ここで気が付かないのは予定通り、次の作戦を決行……)


 廊下でタカヤン達が出てくるのを陰で待ち伏せする。


 すかさず『ドジなメイド』スキルを発動。タカヤンと廊下の角で出会い頭にぶつかる。


 ぶつかった時にタカヤンのアイテムボックスへ忍者スキルを使い、あるアイテムを放り込む。


 それはギルド間の会話を盗み聞きするアイテム『盗賊の耳:シーフズイヤー』と位置を感知するアイテム『敵意の位置探知:エネミーズポズサーチ』。


 ギルド間の抗争に使われるスパイアイテムのたぐいだ。


 このアイテムは証拠が残る。運営側があえて残るようにしているのだ。このアイテムは一定時間後に持ち主にアラームで警告が出る。その時に誰がこのアイテムを仕込んだか分かるようになっている。その時メイリスがアイテムを入れたことに気がつくだろう。


 ちょっとしたメイリスのいたずらだ。


 ここまでの展開はメイリスのシナリオ通りだった。しかしシナリオ作成なんて慣れていない彼女、しかも短時間で作ったシナリオだ。穴だらけでもあり、面白くもなんともない。スパイアイテムに気がついたタカヤンが「メイリスいったいいつの間に?」、その後メイリスが「ばーん」と現れて「ずっと見てたんだよーん」その程度のものだ。とにかく時間がなかったので仕方ないかもしれないが。


 スキル『上手なサボりんぐ』を発動させて仕事をさぼり、掃除用具やガラクタの置いてある使われていなそうな小さな部屋に入る。メイリスは会話の盗み聞きを始める。彼らの今後の予定を探るためだ。

 



――さっきぶつかったメイド大丈夫かな。


 タカヤンの声だ。


――なんかドジっ子って感じでしたね。


――小田部こたべちゃんみたいだったね。彼女もメイドだったし。


――そういえば小田部ちゃん達のグループとかどこにいるんだろう? まさかこの世界でもメイドやってたりなんてしないよね?


(ふふふ、実は私なんですよそれ)


 にやけながら盗み聞きを続けるメイリス。


――小田部ちゃんって誰なんですか?


 フール・ライアスらしき女の子の声がする。


――ああ、俺達の仲間なんですよ。事情があって今は別行動をしていますが。


――へー、そうですか……あっ、すいません連絡が入っちゃいました。


 そういってフール・ライアスと思われる人物が何かごそごそしているのが聞こえてくる。さすがに音だけでは何をしているかわからない。


(フール・ライアス……何か取り出している……?)


――それって……何かな?


 ミカリンらしき人物が問いかけるのが聞こえる。


(ミカリンさんかな、ナイス質問)


――通信スクロールですよ、……えっと何々、『重要な連絡あり、タカヤンと共にすぐ帰還せよ。ダーリア』だそうです。預言者ダーリア様からタカヤンさん連れて戻って来いってことですね、重要な連絡って何だろう。まあ帰ってみましょうか。


 フールが「皆さん一緒に来ていただいてよろしいでしょうか?」と問いかけて、タカヤン達がそれに同意をして移動を始めたようだ。


(また、ラファイアス王国へ移動か。じゃあ感動の出会いはラファイアス王国に変更かな)


 そう考えて急ぎ新しいシナリオを考えるメイリスだったが、この先彼女のシナリオが崩れていくことになる。


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