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ラフィアス・オンライン開発室  作者: 高瀬ユキカズ
フレイタム王国と女王
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ネガルの願い

 時間が動きだした直後……


 コンコン。

 

 ドアがノックされる。タイミングが良いのか悪いのか、メイドがお茶を持ってきたようだ。

 

「……入りなさい」


 少し迷ったネガルがメイドの入室を許可する。

 

 重苦しい雰囲気を感じ取っているであろうメイドの3人がお茶を入れ、そそくさと部屋を後にする。1人だけ場違いな雰囲気の陽気なメイドがいて、部屋を出る前にタカヤンに『ウインク』してきたが俺はそれどころではなかった。


 ネガルがニコリと微笑み、俺達にお茶を勧める。


 礼を言った後、皆が無言でお茶をすする。

 

 この状況を喜んでいるのは考える時間が稼げた俺くらいのものだろう。

 

「実は……」


 話を切り出そうとして声を出した俺だったが、ネガルに話の腰を折られる。


「いいえ、話さなくて結構です」


(へっ?)


「あなた方にはあなた方の事情というものがおありのはずです。話したくないものを無理に聞き出そうとはしません」


(まあ、聞かれないんならそれに越したことは無いんだが……)


 俺はミカリン、シガシガ、ノノミンの3人をチラリと見る。


「ただ、あなた方にお願いがあるのです……

……

もちろん断っても構いません。でもまずは話を聞いていただきたいのです」


「……わかりました。では話を伺わせてください」


 俺が答える。


「……お願いは2つございます。これはフールへのお願いでもあります。まず1つ目ですが、あなた方にはしばらくフール・ライアスと行動を共にしていただきたいのです」


 少し間を空けてネガルが続ける。


「そして2つ目ですが、約4ヶ月後、ダーリアの予言のその時にここフレイタムに戻ってきて、私達に……あなた方の力を貸していただきたいのです」


(内容は大した事のないように聞こえるが、何かが引っかかる。俺達も隠し事があるが、この女王様も何か隠してるな……)


「お約束は難しいです。私達冒険者もいつ命を失ってこの世界からいなくなるかわかりません。が、もしその時が来たらなるべく助力いたしましょう。ただ、フールさんと行動を共にするというのは彼女の意見も……」


「私はいいよ」


 フールはあっさり答える。


「ミカリンさん達もラファイアス王国に住むといいよ。きっと王様が家も用意してくれるし」


 フールが俺達に言う。先ほどの疑いの目はなくなり、子供のそれに戻っている。


 どうしようかと考えた俺は女王の前ではあったが、ミカリン、シガシガ、ノノミンと相談してみる。そして相談の結果、とりあえずラファイアス王国が俺達を受け入れてくれて自由な行動を許してくれるのならばいいのではないかという結論になった。


 そして俺はここへ来たもう1つの目的の件を女王に切り出した。


「それでお願いがあるのですが……厚かましいとは思いますがこの国の宝物庫などって見せていただくわけには……」


「ええ、構いませんよ! 喜んで! ただ、代わりにあなた方の手持ちのアイテムを見せていただけたらの話ですが。どうですか?」


 これほどの笑顔は無いだろうまぶしい表情で微笑ほほえみかけてくるネガル。

 

「あ、やっぱりいいです」

 

(さすがに見せられるわけないよな……)


 俺はこの件はあきらめた。

 

 その後もネガル王女とは国内の情勢や文化のことなど差し障りの無いことをいろいろ話したが、早く帰りたそうにソワソワするフールがいたのでキリの良い所で話を切り上げることにした。


 帰り際に考え事をしていた俺が廊下でメイドの1人とぶつかってしまうというハプニングもあったが、俺達はそのままフレイタム城を後にした。


――――


(ありがとう。ライラ。あなたの妹メイラのおかげで……)


 ネガル女王に仕えるメイドのライラ・テナール。その妹メイラ・テナールは隣国ラファイアス王国のメイドとして働いている。ネガルがラファイアス王国に情報収集のために送り込んだメイドの1人だ。


 「何か事件が起こったり、強そうな人がいたりしたら教えてね」そうネガルに言われていたメイラが教えてくれたのだ。邪悪なる魔導士デール・ラビアスを滅ぼしたフール・ライアス。それと共にいた『タカヤン』『ミカリン』『シガシガ』『ノノミン』ら4人がフレイタム王国に来ることを。しかも、『タカヤン』らは怪しいアイテムで来賓の間から玉座の間を覗いていたそうだ。


 ……とはいってもこれはメイラが直接見聞きしたのではない。


 メイラが同僚のメイドである『メイリス・コタビス』から聞き出したのだ。彼女は最近働き出したメイドということだが、「超一流のメイドで、まさにメイドの鏡のような人物」とメイラは絶賛していた。


(超一流って言っても口が軽ければダメね)

 ネガルは思った。


 この日、ネガルがタカヤンらと出会ったのは偶然ではない。この話を聞き、待ち伏せていたのだ。


 ネガルには自国の軍備増強以外にある目的があったからだ。


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