3分間の会議
――アイテムの効力が発動する。
周囲の時間が止まる。ネガルとフールが完全に停止しており、俺達のパーティだけが動いている。
超々レアアイテムの『時間停止(強化版):アワーグラス』が砕ける。本来ならば3秒しか止められない時間――正確には極端に遅くなっているだけ――なのだが、それが今は3秒以上止まっている。
このアイテムは公式にはラフィアス・オンラインには存在しないことになっている。このアイテムを使ったプレイヤーが強力な存在になりすぎてゲームバランスを壊さないか、まだテストができていないからだ。
「使っていいか分からなかったけど、ごめん使っちゃったよ」
口を開いたのはシガシガだった。このアイテムを使ったのは彼女だった。
確かにこのアイテムの作成者は彼女だが、本サーバーのキャラに所持させているとは思わなかった。今は各自のキャラが本サーバーで所持していたアイテムだけをこちらの世界に持ち込んでいる。
「ちょっと言い訳させてもらうけど、このアイテム時間外にだけ本サーバーでテストしてたんだよ。一般ユーザーがいる時には使ってないからね」
シガシガが弁解する。
(わかっている。問題はない。そういうテスト中のアイテムは他にもたくさんあるからな)
そう思った俺が口を開く前にミカリンがシガシガに問いかけた。
「でも3秒以上止まっている感じだけど」
「うん、実はこの『強化版』は3分の設定なんだ。でも実際本当に3分効果あるかわからないよ。この『強化版』は使ったの本当に初めてだから」
シガシガはそう言った後、続けて早口で話す。
「もうこのアイテム持ってないし、この世界で効果が出るかは分からなかった。効果時間も不安だから急いで話そう。今のネガル様ってやつの話だけど、どうするよ、タカヤンさんとミカリンのことバレバレだし」
「時間が無いみたいだし、ちょっといい? 『誤魔化したり嘘をつく』か、それとも『本当のことを言う』かまずはこの2択だと思う」
ノノミンが提案する。
「よし、それで行こうか、それで多数決か?」
俺も早口で口を開く。
「偶数だから割れる可能性もあるし、私はリーダーに任せるよ」
「私もタカヤンさんに任せます」
「私も任せる」
……
「よし、分かった、本当の事を言ったって信じてもらえない。だから少し信じてくれそうな設定を作るぞ。それでいいか?」
「いい」
「うん」
「わかった」
俺は少し考えて辻褄が合いそうな設定を考える。
…がまったく浮かばない。…ほんとに浮かばない。
何かいい『言い訳』ない?とみんなに聞こうと思ったその時、3分が経過して『時間停止(強化版):アワーグラス』の効果が切れる。
世界が動き出した。




