女王ネガル
ネガル・ファーラット。若干18歳ながらフレイタム王国の女王である。女王というより、お転婆なお姫様といった感じなのだが。
国王であったガライアス・ファーラットの死去後、その妃であった彼女が今はこの国を統治している。
とは言っても実はネガルはガライアス国王の顔を数度しか見たことがないそうだ。盛大な婚姻の儀が執り行われた後、多忙であったガライアス国王とは彼が亡くなるまでの半年もの間ほとんど会うことがなかったそうだ。
ネガルの「まだ清い体のまま未亡人になってしまった」という言葉の通り、世継ぎのいないこの国は国王の3人の弟の間で権力争いが勃発するはずだった。「私がこの国を統治します」と宣言したネガルだったが、彼女が若すぎることや嫁いでから日が浅いこともあり、当然のように国王の弟を支援する貴族から強い反対の声が上がった。
彼女がラファイアス王国の王の妹だったこともあり、ラファイアス王国に国ごと乗っ取られることを危惧する声も強かった。
ところがネガルには不思議な力があった。
その発言や行動が理解に苦しむものであったりするのだが、なぜかことごとく良い結果を生むのだ。
彼女を支持する貴族も少なからずいる。その勧めで国王の弟派閥の貴族の所へ説得へ言った時のこと、貴族の幼い娘、息子とただ遊んで帰ってくるだけだった。しかし、貴族の子供間のネットワークも侮れず、「ネガル様に教わった遊び」、「ネガル様に作ってもらったおもちゃ」、「ネガル様に貰ったお菓子」、「ネガル様に……」。
数人の貴族の家へ行っただけで子供達のネガル派閥があっという間にできた。数日のうちにほぼすべての貴族の子供の中であっという間にネガルブームが巻き起こったのだ。
しかもお忍びであちこち出かけていくネガル。ネガルが城にいることは殆ど無い。
国王の弟達の意中の娘達ともいつの間にか仲良くなり、彼らはネガルを邪険にできなくなった。ネガルが国王の弟達の事をその娘達によく言ってくれるので、ネガルにそのつもりはなかったのだが、結果的に国王の弟達とその娘を結びつけていたりもする。
国内の兵力の強化もネガルが貢献している。まあネガルが直接強者を探してくることは稀であったが、ネガルによる強者探しが噂になり、結果としてネガルの姿を求めて王都へやって来るものが増えた。
市場で買い食いをするネガルの姿もよく見かけられ、その時は気が付かない者も多いのだが、後であれがネガル様だと聞き、ネガル様の食べた者は噂になってその店の繁盛につながった。
ネガルは自分の正体に気が付かれるとすぐに逃げてしまうため、市場の店主達はネガルが来ても素知らぬ顔をするようになった。運良く自分の店へ来てくれれば陰でガッツポーズをする。
そんな感じで市場でも静かなネガルブームは起きていた。
彼女の人柄なのだろう。彼女に好意を持つ貴族、王族、市民が増えるに連れ3ヶ月もするとネガル様こそ女王に相応しいという声が大きくなり、3ヶ月間の国王不在帰還を経て、ネガルが女王の座に着くことになった。
本人は人気取りのつもりなどなく、ただ気ままに行動していただけだったのだが。
ただ、こんなネガルでも思い通りにならない者がいる。
天才魔術師などと呼ばれることもある、フール・ライアスとフェルト・ライアスの姉妹だ。
フールには以前ネガルがラファイアス王国の給金の10倍を出すからネガル直属の警護にあたってくれと打診したが断られた。「ラファイアス王国の国王のところよりここの方が何倍も楽しいよ!」というネガルの声はフールには届かなかった。
フールの姉、フェルト・ライアスにも魔術師学校の教師を辞めて、国の軍直轄の魔術師長への就任をお願いしたが断られてしまった。
ネガルも2人を諦めているわけではない。自身も魔法を学び、魔術師の気持ちを理解しようと魔法を習い始めたのだ。
いつも何か方向性を間違えた行動を取ることが多いネガルなのだが、無邪気で憎めないところが愛される由縁なのかもしれない。




