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ラフィアス・オンライン開発室  作者: 高瀬ユキカズ
フレイタム王国と女王
28/85

最弱の魔法少女

 仕立て屋を後にした俺達は今は市場の裏通りを歩いている。


「ミカリンさん、指輪ほんとによかったの?」


 フールが今更いまさらながらミカリンに問いかける。


「ワンランク劣るけど、違う指輪あるからいいよ」


 ミカリンはそういって先程合成した指輪とは少し違う指輪を取り出して指にめる。


「ええー一番いい指輪を使っちゃったの!? ミカリンさんのことだから最強アイテムを取っといているものとばかり……」


 フールが少し青い顔をしている。


「あ、別に気にしなくても、この指輪でも全然大丈夫だから」


 ミカリンが慌てて言う。


――――


 しばらく暗い路地裏を歩いていると1人の少女が俺達の前に立ちふさがった。頭までローブでスッポリと覆い、顔には変なお面をつけている。手には安そうなダガーを俺たちに向けている。


「くくく、お前達……いい装備を、持っておるな……その装備を、置いて、立ち去れば……命までは、奪わねぇ……金目の物を置いて、立ち去ってもらおうか……」


 ベタな台詞せりふ、しかも棒読みのその少女に対し身構えようとしていた俺達。その前に手を差し出してフールが制する。


「みなさん、大丈夫です。私が守ります」


 スキルを発動させたらしいアサシンのノノミンが呟く。


「やばいこいつ弱すぎる。フールちゃんじゃ殺しかねないって」


 ノノミンは暗殺を得意とするアサシン。一撃必殺を得意とする彼女は戦う前に敵の強さを知る能力スキルがある。


「大丈夫です。ノノミンさん。私でもそのくらいは分かりますよ。丁度このマントを試す機会です。このスタッフの物理攻撃だけで倒してみせますから」


 そうフールが言ったとほぼ同時に上空から声が聞こえた。


「お待ちください! 悪党め。みなさん私が来たからには安心でございます。とおっ」


 見上げると、いつの間にか路地の店のひさしの上に別の少女がいた。そこにいた少女が庇から飛び降りて、俺達と仮面を被った謎の少女の間に飛び降りる。この飛び降りた少女までもが可笑おかしな仮面を被っている。


 飛び降りた時にバランスを崩したその少女が姿勢を整えた後に続けて口を開く。


「さあ皆様、私の後ろに隠れてくださいませ」


「こいつも弱い」


 呟くノノミン。


 何かを悟ったフールが俺達に声をかける。


「みなさん……絶対に絶対に手を出さないでください!」


「くたばれ、悪党! 『火球:ファイアーボール』でございます!」


 飛び降りた少女がそういうと小さい小さい火の玉が最初に現れた悪役っぽい少女へと飛んで行く。


 その火の玉が当たるか当たらないかという時に、


「う、わーっ。や、ら、れたー」


 棒読みの台詞を残して、悪役の少女がたったったっと逃げていく。


「ふっふっふっ正義は勝ちます」


 ……


 少しの沈黙の後、最初に口を開いたのはフールだった。


「ネガル様何やってるんですか」


「ん? あれ? フールちゃんじゃないですか」


 ネガルと呼ばれたその少女は仮面を外して俺達に向かって振り返る。


「なんだフールちゃんでしたー。強そうな方達がいるからスカウトしようと思ったんですよ」


 フールとそう変わらない背丈のネガルと呼ばれる少女は気品のただよう顔立ちをしている。よく見ると値段だけは高そう豪華な金の刺繍ししゅうほどこされたマントをまとっている。


「ネガル様危ないからこれはやめてくださいって言ったじゃないですか……」


 そうぼやくフールは前に同じ様な事をされている。フールはその時は危うく本気のファイアーボールをぶっ放す寸前だった。その時の事を思い出していた。


「うーん大丈夫なんだけどな……国宝も持ち出しているし……」


 ネガルと呼ばれる女性がぼやく。


 通りの向こうからたったったっと走ってくる人影。その人影にネガルが声をかける。


「ライラ、ありがとう今回もバレちゃったわ」


「ネガル様、こ、これお返ししておきます。持ってるだけで怖くて……」


 そういってネガルに差し出すアイテムがチラリと見えた。『生命の宝石:ヴィクティムジェム』と『帰還の石:ホームストーン』か?


「ああ、いいよ、それまだ持ってて」


 そう言ってネガルは差し出されたアイテムをライラと呼ばれたその女性へと押し返す。


 ネガルいわく、国の軍備の増強のために強い者を集めたいと考えての行動だという。今回は『作戦その12(改)』、恩を売っておいて、「ぜひお礼をさせてくれ」の言葉を引き出し、酒場などでご飯をおごって貰いながら話を聞いて強さを探る。そんな予定だったそうだ。


 メイドのライラには「絶対うまく行きません」と言われたが無理矢理に連れて来ており、まあメイドの言葉通り大抵は「ぜひお礼をさせてくれ」の前に無言で立ち去ることが多いそうだ。まだ一度も成功していないその作戦だが、その都度少しずつ改良を加えているそうだ。


 しかしネガルは今回は作戦が大成功だと喜んでいる。

 

 大魔術師フール・ライアスと一緒にいるなら強いに違いない。絶対城まで来てもらう。できたらフレイタムに所属してもらいたい、フールのうんざりした顔を他所よそにネガルがそう食い下がってくる。


 城への誘いを断ろうとするフールに対し、一度城へ行ってみたい俺達はその誘いに乗ることにした。ネガルと仲良くなればもしかしたら国宝や秘法が納められているという宝物庫の中も見せてもらえるかもしれない。


 乗り気でないフールを説得して俺達はネガルの住む城、フレイタム城へと招かれることにした。

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