フェルト宅にて
俺達はこの国、フレイタム王国で自分たちの装備を揃えようと思っていた。レベル18〜32という低レベルの俺達はとりあえず手持ちでは最強の装備を身に纏ってはいるが、それでもレベルに合った最適装備とは言えないため、ここで装備を探すつもりだった。
フェルトによると王国の宝物庫にはいい装備があるそうだが、まさか宝物庫を襲うなんてできるはずもない。この国で俺達の装備を強化する計画は頓挫してしまった。
さて、どうするか、他のグループとも連絡を取りたいしな。『通信スクロール』を使えば連絡を取れるけど、同じパーティ以外との連絡は反則かな。なんて考えていた。
「この国には学校というものがあるんですよね?」
僧侶であるシガシガがフェルトに尋ねた。
「ええ、ありますよ。私も2ヶ月だけですが、剣士の学校へ通っていました。魔術師の学校もありまして私はそこに5歳から7年間通ったんですよ。フールも通わせようと思ったのですが、この子は才能はあるんですが、落ち着きがなくて学校には向かなかったみたいです」
「私はラファイアス王国の方が好きなんだよ」
「それで、この子は勝手に家を出てラファイアス王国に行っちゃったんです。向こうで仕事を見つけられたから良かったけど……」
「じゃあ元々はフールちゃんはフレイタム王国の出身なんですね?」
俺がフェルトに尋ねる。
「ええ、そうです。ここには私1人が住んでいますが、私とフールの両親はフレイタム王国内の別の家に住んでいますよ」
「私も時々家に手紙書いてるもん。別に家出ってわけじゃないし……あっちの国のほうがのんびりしてていいんだよね」
フールが弁解する。
「フールも途中まではエリートだったんですけどね。なーにが気に入らないんだか」
「お姉ちゃんが先生辞めちゃったからでしょうが!」
「しょうがないでしょ。お姉ちゃんはお姉ちゃんのやりたいことがあったんだから」
なるほど、フェルトがフールに魔法を教えたってこの事だったのかな。フェルトはフール以上の魔術師って感じだな。今もそうであるかは不明だけど。
「ところでフールちゃん、フレイタム王国でどこか見ておいたほうがいい場所ってあるかな?」
アサシンであるノノミンがフールに問いかける。
「え、えと、そうですね……ここにはアサシンの学校なんて無いですし、ノノミンさんの行きたそうなところって……エルメル酒場の地下のバーとか、暗黒騎士が囚われているという噂の地下牢とか……街の検問を避けるために私が使ってる地下通路……とか?……」
「地下ばっかりだね。どこも行きたくないし」
ノノミンはバッサリ切り捨てる。
「そういえばフールちゃん、この国の女王様がかわいいとか言ってたよね。私達も女王様に会えないのかな?」
ミカリンがフールに尋ねる。
「ミカリンさんに頼まれたとしても、さすがにそれは無理かと……」
フールが首を振っている。
「会えると思うよ」
突然フェルトが口を挟んできた。
「お姉ちゃん!」
何かを制するようにフールが大きな声を出す。
「え、だって面白そうじゃん、この人達すごく強そうだし」
「お姉ちゃんだめだって。ネガル様は忙しいの!!」
「え、暇でしょあの娘」
「ダメダメ、絶対ダメだって」
なぜかフールが頑なに否定している。
「そうだ皆さん、フレイタム王国の市場でも見に行きませんか? いろいろ珍しい物が売っていて面白いですよ」
フールが話題を変え、俺達の同意を待たずに「ささ、行きましょ、行きましょ」と外へ出る支度を始める。
「ああ、私は家で寝てるから。みんなで行っておいで」
フールの姉のフェルトは行く気がないらしい。




