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ラフィアス・オンライン開発室  作者: 高瀬ユキカズ
バランスの悪いパーティ
19/85

ダークエルフの村

 ユウは1人見知らぬ土地で目が覚めた。


「目が冷めましたか……」


 見知らぬダークエルフに声をかけられる。そこは質素な部屋で家具は何もない。壁の木は薄そうで外からの光が漏れて入ってきているそんな狭い部屋にユウは寝かされていた。


「こ、ここはどこですか?」


 起き上がってユウが尋ねる。


「私達の村ですよ。ダークエルフが100人ほど暮らしています」


 そのダークエルフが答える。彼女は銀色の長い髪、少し黒い肌に尖った耳、やや露出の多い服装をして背丈はユウより高いかもしれない。

 

「私はこのダークエルフの村のおさをしているエルム・グルントと申します。魔王リュクンヘイムの城に囚われたあなたを助けたのです」


 リザードマンに連れられるユウを見かけたダークエルフが隠密行動を得意とする別のダークエルフと共にユウを救出し、エルムの元に連れてきたという。

 

 この村はダークハイト村と言い、魔王リュクンヘイムの統治している亜人の帝国――ビグルム帝国――とは一応中立の立場をとっているとのことだ。中立と言っても実際は魔王リュクンヘイムには逆らえず定期的に何らかの供物を差し出しているそうだ。敵としてはみなされていないためリュクンヘイムの領地へも比較的に容易に入ることができるらしい。


 さすがにユウと一緒にいた他の3人までも救うとなると完全な敵対行動とみなされる可能性があるため救出できなかったというが、エルムにとっては同族でない人間の命などには関心がないのかもしれない。

 

「助けていただきありがとうございました。御礼の言葉もございません」


「いいえ、礼にはおよびません。ダークエルフは人間どもの迫害により大きく数を減らしています。1人でも多くのダークエルフの命を救う、これは同族として当然のことと思います。ところでなぜあなたは男性の服装をしているのですか?」


 エルムがユウに尋ねる。


「え、あ、僕は男なんです。よく女性に間違われますが……」


「ああ、そうだったのですか。これは失礼しました。ところでお名前を伺ってよろしいでしょうか」


「はい、僕はユウと申します」


「ユウ、ですか。ユウ何とおっしゃいますか?」


「あ、『ユウ』だけなんですよ僕の名前は、エルム・グルントさん」


「エルムで結構です。セカンドネームが無いのは珍しいですね。では『ユウ』さんなぜ魔王リュクンヘイムに囚われることになってしまったのか伺ってもよろしいでしょうか?」


 ちょっと困ったなと思ったがこれも情報を得る一環だとユウは思ってユウは当り障りのない答えをした。仲間と冒険の旅に出たが道に迷ってしまった。街を探していたところゴブリン・ソーサラーの罠にかかってしまってゴブリンの里に迷い込んだ、そして囚われることになった、と説明した。エルムは納得の行かないような表情をしていたが「そうですか」と頷いて答えた。

 

 ユウは情報を得るためにここぞとばかりに逆にエルムに質問をした。それにエルムは快く答えてくれた。

 

 エルムによるとこの国、魔王リュクンヘイムの支配する帝国は様々な亜人により支配されている国だそうだ。魔王リュクンヘイムの力は強大で、英雄シグルスを始めとする英雄級の力を持つ者たちを次々に跳ね除けていったという。


 彼らは人間種に敵意を持っているがダークエルフはその中には含まれていないようで今のところ敵意は持たれていないようだと話す。


 魔王は自身の統治する領土に亜人を集めて周囲に村を作らせ、生きる盾としての防壁として利用しているのだとエルムは話す。


 この村、ダークハイト村は魔王リュクンヘイムの城から北西に位置し、間には巨人族の里やホビットの村があるらしい。リザードマンが言っていたヴァンパイヤやデーモンらは村は形成しておらず城の中のどこかに潜んでいるようだと言っていた。

 

 周辺国家としては東側にラファイアス王国という人間が支配する国があり、数年前までは魔王リュクンヘイムの命令により小競り合いを仕掛けていたが、魔王が領土を広げることに余り興味がなかったのか自然にその侵攻はなくなっていったそうだ。魔王が眠りについたのではないかという噂もあるが確かめる術はない。ただその頃からこの帝国内の村々の小さな争いがなくなり、わりと帝国内が落ち着いているとのことだった。

 

 帝国には通貨というものがなく、ダークハイト村内や他の村とのやり取りも物々交換が中心だということだ。魔法を使えるダークエルフは少数でエルムを含め5人だという。ただし個々が剣や弓の技術を磨いており、ゴブリン程度なら軽く村を滅ぼせるくらいの武力はあると話す。

 

 エルムの表情は暗い。笑みこそ浮かべてはいるが長年迫害されてきた者のそれだ。ここにはエルム1人しかいないため判断はできないが、他のダークエルフもそう違いはないだろう。

 

 そんなに魔王リュクンヘイムの力は強大なのだろうか。僕達ラフィアス・オンラインから来た者でも太刀打ち出来ないのであろうか。レベルにしたら何レベルに該当するのだろうか。そんなことをユウは考えていた。


 エルム達に協力してあげたいと思うほどの親近感はまだ無いが、恐らくは自分達の命をかけて助けてくれたであろうエルム達に何らかのお礼くらいはしたいと考えた。


 しかしお礼と言っても何ができるだろうか。僕が叶えられるかどうかは別にして、果たしてエルム達に何かの望みがあるのだろうか。ただ静かにここで暮らしたいだけなのかもしれない。やはり直接聞くのがいいか、でも初めて会った僕にどこまで本音で話をしてくれるのだろうか。

 

「エルム……さん。あなた達は、ダークエルフのあなた達は何か望む事ってあるのでしょうか? ここでひっそりと生きることが望みなんでしょうか?」


 エルムは突然のその問いかけに少し無言になって、静かに口を開く。


「私は……いえ私達は何度も話し合いました。ここでこのまま生きていきたいのだろうかと。私達の望みはあります。私達は人間達や他のエルフと共に暮らしたいのです。確かに人間には迫害を受けました。しかしそれは心ない一部の人間によるものだと私達は知っています。昔は人間やエルフと共同生活ができていたんです。私自身も100年前はラファイアス王国のギルドに所属し人間達とパーティを組んで冒険に出かけていたのです。今でもあの頃のことを思い出します。あの頃はその生活がずっと続くものと思っていました」


「そもそもなんで人間はダークエルフの迫害を始めたのですか?」


 エルムはまた押し黙ってしまった。ユウはエルムが口を開くのを静かに待った。


「それは……私達が魔王リュクンヘイムを解放したと人間が誤解してしまったからです」

「どういうことでしょうか?」


 ユウが先をうながす。

 

「魔王リュクンヘイムを解放してしまったのは恐らく人間なんです。約100年前の話です。ラファイアス王国の南にある山岳地帯の奥深くに1つの迷宮ダンジョンがありました。この迷宮ダンジョンはそれまで手付かずだったのですが、発見されてから多くの冒険者により探索され、多くの財宝が持ち出されました。この迷宮ダンジョンはそれまで3階層で構成されていると思われていたのですが、さらに下の階層があることがわかりました。そこでギルドを中心として迷宮ダンジョンの探索チームが結成され、4階層以降の探索が開始されました。私もそのチームに加わっていたのですが、3階層に待機して4階層以降を探索するチームの補助に当たったのです。なぜかその時は人間だけで構成されたパーティが4階層以降に潜り、エルフ、ダークエルフ、ドワーフなどは3階層以降には入れてもらえませんでした」


 少し間を開けてエルムが話を続ける。


「ある日のことでした。私達が物資を届けようと4階層への入り口に待機をしていました。すると巨大な轟音とともに4階層へ降りる階段からモンスター達が溢れ出てきたのです。最初こそ私達はモンスターと交戦し、そのうちの数体を討ち滅ぼしましたがとても対処できる数ではありませんので、ラファイアスへと逃げ帰ることになりました。当然のように私達は人間を見捨てて帰ってきた者として非難されることになってしまいました」

 

 ユウはエルムの話を静かに聞いている。


迷宮ダンジョンから地上にモンスターが溢れ出てくることを恐れたラファイアス王国は討伐隊を組み、3000の軍勢でその迷宮ダンジョンへと向かいました。あとから分かったことですがその時すでに多くのモンスターと魔王が迷宮ダンジョンの外へと出ていました。そしてモンスター達と迷宮ダンジョンから出てきた魔王はすでに西方へと移動していました。3000の軍勢を3方に分けて捜索し、その一つが魔王と遭遇し壊滅状態に陥ったそうです。魔王は智謀に長けた存在です。その軍勢を全滅はせず数人を生かして帰らせました。その生き残った人間が魔王の言葉『ダークエルフにより復活を実現できた』をそのままラファイアス国王に伝えたのです。そして国王は私達を含め人間以外の種をことごとく殺すよう命令を出し今に至ります」


「なるほど。誤解を解くのは簡単ではなさそうですね」

「ええ、困難でしょうね」


 エルムは重い口調で答える。


(僕がラファイアス王国行ったら殺されるじゃん)ユウは思った。そして、


「ダークエルフがリュクンヘイムを討ち滅ぼせばいいんじゃないかな?」


 思ったことが口に出てしまった。


「そうですね。それができればいいのでしょうけどね」


 少し呆れた感じでエルムが答える。


 そうだ僕が魔王リュクンヘイムを倒そう。なぜかユウはそんな結論に達してしまった。

 

 とりあえず僕はいつでもこの村に戻ってくれるように位置情報をマークしておく。位置情報のマークにより街と街の間、もちろん街ではなく迷宮ダンジョンでもどこでも妨害魔法がないエリアならアイテム、『天使の翼:エンジェルズウィング』で自由に移動ができるからだ。


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