作戦会議
重戦士である紋別、ダークエルフのユウ、聖騎士のシラゴウ、そして剣士のライオット。
彼らがいるのがここビグルム帝国、亜人により支配された帝国である。現在皇帝という存在がいないため元帝国と言った方が正しいだろうか。
3人いや本来なら3匹というべきか、3匹のリザードマンに連れられて彼ら4人はビグルム帝国の城の中に入った。てっきりご主人様とやらに会わせてくれると思っていたが、4人は地下へと連れて行かれ、地下牢に放り込まれる。装備品を剥ぎ取ろうとでもしたら抵抗しようと思っていたがそんなこともなかったため大人しく牢に入ることにした。いつでも出られるだろうという甘い考えで。
見張りを立てることもなく無言でリザードマンは立ち去り、リーダーである紋別が口を開く。
「さて、牢に入れられちゃったな」
「そうだな。これからどうするか?」
「なんかまだあいつらが悪い奴らって決めつける要素が少ないんだよな」
牢に入れられたとはいえ食料は無数にアイテムボックスに入っているし、いざとなれば何とでもなると考えている一行は危機感がないままこれからの相談にかかる。
「俺達の目標ってものがないんだよな」
「情報が少なすぎるんだよな。まずあいつらが悪人なのかどうか調べる。そこからじゃないか?」
「俺達に危害を加えるように仕向けるとか?」
「でもあいつらの戦闘力すらわかってないんだぞ。流石にそれは危険だ」
「じゃああいつらが悪人か調べる。次に戦闘力を調べる。こんなところか?」
「なんかつまんねーな。もっと面白いと思ってたんだけどな」
「なんか地味だよな。景色は圧巻だったが」
「結局ゲーム感覚が抜けきれてないんだよな」
「そうだな。ゲームより面白いと思ってたんだけどな」
「ゲームなら強くなる、未知を探索する、アイテムを探す、こんなところか?」
「結局情報がないのが問題なのか。とにかく情報収集これに尽きる」
誰も話をまとめないまま4人は会話を続ける。
「他の奴らどうしてるんだろうな? もう飽きちゃってログアウトしてたりして」
「ありうるな、世界はリアルでも今一つ危機感ってものが足りないんだよ」
「まあそれは俺達の心の問題なんだけどな。世界のせいにしちゃダメだよな」
「よしわかった。ゲームだと考えるからダメなんだ。観光に来たと思おう。さっきの景色は凄かった。この城だって威圧感はとんでもない。こんな簡単に凄い景色があるんだから他にもきっとあるはずだ。情報を集める、そして凄い景色を探すこれで行かないか?」
リーダーの紋別が提案する。
「まあ、それは現実的な目標としては正しいかな」
剣士のライオットが同意してくれる。
「やることないしね。僕は探索系の魔法もないし」
唯一まともに魔法が使えるダークエルフのユウが続く。
「魔法が使えない今どうやって情報を得るかだな」
聖騎士のシラゴウが口を開く。
「やはり誰かに聞くのが一番だ。あいつらの誰かからうまく情報を引き出そう。そのための作戦をまず考えよう」
リーダーの発言から情報を得るための作戦会議になった。まずはすでに接触のあったゴブリン・ソーサラー、そしてリザードマンだ。彼らがここに戻ってくる可能性は高い。あとはリザードマンが話していた他の種族のことだが知的能力があるのはヴァンパイアかデーモンくらいだろうか。すると力でねじ伏せるか、いや彼らの戦闘能力がまだわからない。友好関係の構築は困難なように思える。ならば何らかの報酬で釣るか。いっその事俺達の力を示して仲間になるか。
まったくいいアイデアが出ないまま会議は続き、夜になって4人は睡魔が訪れたのでそのまま眠りについた。
目が覚めた時ダークエルフのユウだけがそこにはいなかった。




