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3度目の異世界

 俺たちはまたこの世界に立っていた。夢の世界なんだか異世界なんだかパラレルワールドなんだかわからないが、ラフィアス・オンラインにそっくりな、しかし極めて現実世界としか思えないようなゲームなんだか現実なんだかわからない世界だ。


 結局開発室のメンバーはそれぞれのグループを作り別々にログインした。ログイン時間も僅かだがランダムに変えている。一緒に行動するのも良いが、別々のグループを作って現地で偶然出会う、あるいは死亡まで出会うことのない可能性もあるが、その方が面白いのではないかという意見を採用した。

 

 ゲーム時間だがやはり今は仕事中ということもあり、テストプレイとはいえあまりゲームに時間をかけるのはよくないとの意見から現実時間30分に対してゲーム時間60年という設定にした。さすがに60年もプレイする気はないが寿命を60年後に設定しているので、最低でも現実時間の30分以内にはログアウトして戻ることができる。30分程度ならテストプレイとして許容されるであろうという判断だ。

 

 各自の強さだが、さすがにLV200は強すぎだしつまらないだろうということで、人工知能ミネルヴァおすすめ設定の年齢=LVに設定している。ミネルヴァによるとこれでもこの異世界の人間の平均よりは強いとのことだ。職業と名前は各自の本サーバーでのキャラクターを踏襲している。いつも戦士でプレイしている者はここでも戦士職だ。アイテムは本サーバーで所持している物と同じだけをこちらにコピーしている。通貨はミネルヴァに金貨をこちらの世界の金貨に変えてもらい、本サーバーと同じ額を所持することにした。基本的に財布は別々で、もし足りなくなったらお互いに貸し借りすることになっている。

 

 さすがに一般ユーザーとしてログインして死亡までログアウトできないのはきついだろうということで、全員が管理者権限スーパーユーザーの特権を有している。管理者権限スーパーユーザーと言っても各自が自身に機能制限――いつでも解除できるのだが――を課している。とりあえずログアウトはいつでも可能で、アイテムは無限に所持できる。グループ内のプレイヤー同士の通信は可能だが、他のグループとの通信は機能制限している。その他に通常プレイヤーであったら違法強化チート行為に該当する様な機能は当然制限を加えた。と言ってもいつでも制限解除できる状態なのだが。

 

 タカヤンとミカリンこと吉野川みかはフールと再会した時に一緒にいたほうがいいと考え同じグループにしてもらい、その他のメンバーは4人ずつ3つのグループにくじ引きで分けた。俺のグループは俺とミカリン、そしてシガシガこと信楽しがらきしおりとノノミンこと小野おのののの4人だ。このハーレム状態に他のメンバーからは文句も出たが、くじ引きの結果なので仕方がない。

 

 各グループの出現場所だが、ミネルヴァによりランダムで決定される。よって俺達がフールがいるであろうメイウール城塞都市の近くからスタートできる保証は何もない。メイウール城塞都市のあるラファイアス王国とはまったく別の国から始まることも考えられる。予備知識がないため、一体いくつの国家があるのかはわからない。この世界での活動をつまらなくしないためにあえてミネルヴァに聞いていないのだ。

 

 前回2回の異世界への出立とは異なり、今回は完全に遊び気分だ。 

 

 1つだけ懸念材料がある。フールのことだ。前回フールから貰った彼女と連絡を取れる水晶は持ってはいるが使うつもりはない。懸念とは時間のことだ。前回のログアウトから現実世界でおよそ3時間程度経過しているので本来であればこちらの世界の時間でも36日程度なのだが、今回現実時間30分に対してゲーム時間60年という設定にしている。この設定にしてからログインするまでに時間差があるため、下手したら数年が経過している可能性があるのだ。


 設定変更からすぐにログインしてはいるが、少なくても数ヶ月、あるいは2、3年位は経過しているかもしれない。前に来た時にこの時代の年数を誰にも聞いていなかったので時間の経過はフールに直接今何歳か聞くくらいしか測りようがない。そもそもフールに再び会えるかどうかそれすらも未知数なのだが。



――――



「さて、やって来たね。異世界に」


 俺が3人、ミカリン、シガシガ、ノノミンに声をかける。


「へーすごいですね。現実としか思えない……」

「ほんとすごいです……」


 最初にシガシガが続いてノノミンが感嘆の声を上げる。


 俺達が今いる場所は草原のど真ん中、遠くに森と思われる木々が見え、遥か遠方には頂上が白く染まる山々からなる連峰が連なっている。いったい森がどの方角なのか、ここからは見えないがどっちに街があるのか、まだ何もわからない。


「すごいでしょー、魔法だって使えるんだよ!」


 先にこの世界に来たことのあるミカリンが先輩面せんぱいづらして自慢気に答える。


「じゃあまずは近くの街に行ってみようか」


 俺が3人に声をかける。


「タカヤンさん、街がどこにあるかわかるんですか?」


 ノノミンが答える。


「いや、わからない」


 俺が返答する。


「あ、私魔法使えますよ」


 シガシガが答えた。シガシガはたしか神官職だったか?。


「じゃあ、シガシガお願いしようかな」

「はい、『地形把握:グローバルマップ』」


 シガシガはなんの疑問も抱かず普通に魔法を唱える。その方法がラフィアス・オンラインと同じだと確信しているかのようだ。魔法を唱えると彼女の目の前に薄く青くて今にも消えそうなくらい透明に近い地図が空中に出現した。


「えっと私たちは今ここにいますね。それでこの森はちょうどここから真北に位置していてその左側、西ですね、西に少し行ったところに街らしき物があります。ダンジョンや洞窟ではなさそうなので街でしょうね」


 シガシガが指差したそれは俺が見てもまあ街だろうなとわかるくらいの形がはっきりしないシルエットのような姿で地図上に存在している。


「じゃあ、そこへ向かいましょうか。私の『飛行集団:フライング・マス』でびゅーと飛んでいってもいいですけどどうします?」


「せっかくだから散歩気分で歩くのはどうですか?」


 ミカリンの提案にノノミンが答える。


「ノノミンに賛成。歩くと疲れるのかどうかも知りたいしね。まだこの世界のこと手探り状態だ。先輩方サポートよろしくおねがいしますよ」


 シガシガが同意する発言をした後、俺とミカリンを見る。


 俺とミカリンは軽く笑いながら頷いて応える。4人はその街へと向かい、散歩のごとく気楽に歩き出した。

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