序章 『もう一つの世界』
俺はここ数ヶ月間、学校へは行っていない。
高校生活が始まってから最初の半年ぐらいは真面目に通っていた。それからはさっぱりだ。
別に学校で勉強するのが嫌なわけではない。友達と呼べる存在がいないわけでもない。
理由は一つ。学校に行くのが面倒なのだ。
夏ならば自転車で往復一時間半。冬であれば雪のためにバス通学を余儀なくされる。毎日数百円。合計すれば月数千円だが、それだけ金を払って登校することになんの意味があるのだろうか?
俺には理解できない。
テストがある日は仕方なくだが学校に行っている。学年数百人の中で十番以内に入れば文句はないだろう。勉強というものはいかに短時間で集中できるかだと思っている。
では学校をサボってまで何をしているのか?
俺が一日の大半を費やしているのは<The Bullet of a Warning>というオンラインゲームだ。直訳で『戒めの弾丸』、通称『Warning』。主にFPSと呼ばれ、一人称視点シューティングゲームというジャンルに属する。
このゲームは現実に存在する銃がメインとなっている。それでモンスターを狩ったり、他のプレイヤーを倒したりするのだ。RPGに似ているようにも聞こえるが、レベルなんてものは存在しない。その代わりに階級が存在し、経験値が貯まれば階級が上がり、様々なボーナスがもらえる仕組みとなっている。ボーナスの一つにスキルポイントというものがある。それを数百種類のスキルの中から好きなものを選んで振り分けるのだ。そうすることで個性溢れる自分だけのキャラクターを作ることが可能になる。
ゲーム自体はまだ一周年も迎えていない新作で、俺がハマったのは高校に通い始めた頃だった。
そんなできたてホヤホヤのゲームだったが、プレイ人口は異常な速度で増えていった。サービス開始からわずか三日でサーバーパンクを起こし、臨時メンテナンスがあった。これはプレイヤーが一度に集中してログインすることで起きる渋滞のようなものだ。
対策として、最初は国ごとで、次に都道府県ごとに分けられた。普通のオンラインゲームであれば国ごとでサーバーを分け、そこからいくつかのチャンネルを作って終了なのだが、運営会社である<センチネル>は、地域対抗戦仕様のためにあえて細かくサーバーを分けた。よって、ゲーム内で他のプレイヤーを見かけたときは同じ都道府県に住んでいるということになる。ゲーム内で知り合い、友人登録をし、リアルで会うことはそう珍しい話ではない。
だがそんなこと、俺には関係なかった。
俺は人見知りだ。人見知りの基準がよく分からないが、初対面の人には絶対に話しかけることのできないタイプだ。
たまに俺が人見知りだと言うと「俺も人見知りだわー」とかいうやつがいるが、そいつは人見知りの意味を理解していない。女の子に話しかけられてベラベラ喋り出すやつのどこが人見知りなのだろうか? バカにされてる気分だ。そういうやつを見るといつも死ねばいいのにとか思ってしまう。口には出さないけど。
話がそれたが、リアルでは友人はいた。地元の高校だということで中学からの友人が多かったからな。でも人見知りな俺のことだ。ゲーム内ではフレンドが少なかった。ただひたすらモンスター狩りをし、レアドロップを狙って駆け回っていた。友人が欲しいと思うこともあるが、対人戦をするわけでもないのでさほど重要でもない。
レアな銃を求め、高い階級を目指し、人に認められるほどの技術を身に付ける。そうすれば自然と周りには人が集まってくる……はず。
俺の話はここらでいいだろう。そろそろ向こうの俺も退屈してきたころだ。いかねばなるまい。
俺達の――
『戦場』へ。




