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第1話 失敗した野球選手には行く道がない




私は、失敗した選手だ。

幼い頃から大きな期待を背負ってプロの世界に足を踏み入れたが、芳しくない実力にもかかわらず、多くのチャンスを与えられた。

だが、本当に重要な勝負どころで、私は任務を全うできずに降板した。


それ以来、私の野球人生は転がり落ちるような下り坂だった。

今は早期引退を経て、トレーニングセンターで一般の方々に軽くアドバイスを送る仕事をしながら食いつないでいる。


今日は、家族にとって大切な記念日。

私は食べ物を両手いっぱいに買い込み、家へと足早に向かっていた。


だが、今思えば、あの事件が私にとっての「転機」だったのかもしれない。


ブォン――!


「ひったくりよ!」


一人の老婆が、逃げる男を指して叫んでいた。

だが、誰も動こうとはしない。当然だろう。今の時代、ありふれた同情心など贅沢品に過ぎない。

しかし、今日に限っては違った。一瞬見えたあの男の横顔が、かつて他界した大切な誰かと重なって見えたからだろうか。


……無理をしてしまった。

見知らぬ老婆の荷物を取り返すことはできたが、家族との大事な約束の時間には遅れてしまった。

母は「大丈夫よ」と言ってくれたが、私の心はどこか落ち着かなかった。


なぜなら、今日は母の退院記念日だったからだ。


「ふぅー!」

「わあ! お母さん、これからは病気しないで幸せに過ごそうね!」

「母さん、退院おめでとう」

「ああ……。私の子供たち。どれほど苦労をかけたことか。本当にごめんね」


父も目頭を熱くして、照れ隠しにベランダへ出て久々のタバコを吸っていた。

対照的に、妹と姉は我慢しきれず、声を上げて泣きじゃくっている。

私も感情に流されそうになったが、強い心で家族全員分の料理を淡々と並べた。


「さあ、食べましょう」

「叔母さんのところの豚足チョッパルじゃない?」

「ええ。奮発してポッサムと牡蠣キムチも追加しておきました」


和やかな食事の時間。

食事が終わり、私は軽く体を動かすために外へ出た。

その時、見慣れない野球帽を被った女性が、アパートの公園前にある電柱に寄りかかっていた。


ただ彼氏を待っている人だろうと思い、気にせず通り過ぎようとした、その時。

彼女が声をかけてきた。


「どうして、助けたの? あなたにとって、何の得にもならない相手だったでしょう?」

「人を助けるのに、得か損かを考えるのか?」

「昔のあなたは、そうだったわ」


話の通じない女だ。

変な奴だと切り捨てて、コンビニへ続く路地へと向かったが、女は執拗についてきた。


「もし、人生をやり直せるとしたら。やっぱりあの時に戻るのかしら? 野球を始めた……」

「いや」

「?」


私は、ふっと微笑んだ。


「私は今のままでいい。家族と一緒にいられるこの瞬間が、私のすべてだ」


突然、野球帽を被った女性は足を止めた。

そして、何かを決意したように、私のほうへ一つの物体を弾き飛ばした。


「これは……?」

「あなたが、あれほど望んでいたものよ。いいことに使いなさい。スヒョク。」


暗い空の下、街灯の光に透かして見ると、ビットコインのように『B』と刻印されたコインだった。

私の拙い知識で推測するに、何かの記念硬貨のようにも見えた。


洗練された紋様が気に入って、慎重にポケットへ仕舞い込む。

特別な装置がついているようには見えなかった。もしそんなものがあったら、現代ではなくSF小説の話だろうから。


コンビニで姉と父が好きなビールとつまみ、そして妹が好きなサンドイッチを買って家に戻った。


家では、すでに野球のポストシーズンが盛り上がっていた。

我が家が応援しているチームは、やはり『名古屋ドラゴンズ』だった。


「ヒット! 打て!」

「わああああ!」


姉と父はすでに没頭しており、テレビの中に吸い込まれそうな勢いだ。母は久しぶりに戻った我が家の台所や冷蔵庫を整理していた。


「息子、あんたは見なくていいの?」

「え?」

「あんたのいたチームだったじゃない」


そうだ。

家族がドラゴンズを応援するようになったのは、純粋に私の影響だった。

幼少期からそこで訓練を受け、情操を育んできた結果がこれだった。

いずれにせよ、彼らは私が引退する際、多額の支援をしてくれた。


おかげで、苦しかった母の入院費も大部分を賄うことができた。

憎くもあり、感謝してもしきれないチームだった。


だが、もし私に、もう一度チャンスがあるとしたら。


(本当に、戻れるのだろうか……?)


ぎゅっと、拳を握る。


虚しい考えが心に浮かんでは消えた。

こういう時は、じっとしているのが一番だ。


静かに自分の部屋に入り、深呼吸をした。

電気を消し、窓の外に広がる夜空を見上げると、無数の星が目に飛び込んできた。

私が、いつか成りたかった「あの星たち」だ。


(あの星たちは、彼らからすれば矮小な私の願いを、聞いてくれるのだろうか?)


今はただ……。


キラリ――!


タイミングを合わせたかのように、流れ星が窓をかすめていった。

それに呼応するように、私のポケットが光を放ち始める。


「な、なんだ……?」


【 世界を認識します 】

【 ユーザー:■■■■ 】

【 ■■■■へようこそ! 】

【 ■■■の特典として、相手のいない都市(空き都市)をマッチングします 】


そして、私の体は。


パッ――!


どこかへと転送された。

その時。


トントン。


「息子……? 起きてる?」


この状況を知る由もない母の、寂しげな問いかけだけが、部屋のドアの外で虚しく響いていた。

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