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第1話 まるで折り紙じゃないみたい。

プロローグ:噂の始まり


東京郊外の住宅街、いつものようにママ友たちが公園のベンチに集まり、子供たちが遊ぶ様子を見守りながらおしゃべりに花を咲かせていた。話題は子育てや近所の噂から、ふと奇妙な方向に転がった。


「ねえ、知ってる? 最近、めっちゃ精巧な折り紙があちこちで見つかってるんだって」と、綾花が目を輝かせて切り出した。彼女の手にはコンビニで買ったコーヒー。隣でスマホをいじる結花が顔を上げた。


「え、どんなの? 普通の折り紙じゃないの?」結花が興味津々に尋ねる。


「それがさ、普通じゃないの! 極上の和紙でできた、めっちゃ小さな折り紙。鶴とかじゃなくて、まるで本物みたいなミニチュアの家具とか動物とか! この前、近所の神社で千羽鶴の中に混ざってたのが見つかったって。誰かが置いたみたいなんだけど、誰も作った人を知らないの」と綾花が興奮気味に続ける。


「え、ちょっと不気味じゃない? でも、なんかロマンチック!」真理が笑いながら言う。「インスタで見たよ、誰かがアップしてた。めっちゃリアルで、ルーペで見ないと細かさがわからないレベル!」


ママ友たちの会話は、まるで都市伝説のように広がっていった。誰がそんな折り紙を折っているのか、なぜそんな場所に置かれているのか。誰も答えを知らないまま、噂は尾ひれをつけて東京中に広がった。



めるぽよとハマキンのピックポック配信


日本の若者に大人気のSNS「ピックポック」。その夜、インフルエンサーのめるぽよとハマキンが、いつものように賑やかなライブ配信をしていた。背景には派手なLEDライトと、めるぽよのピンクの髪が映えるセット。ハマキンは手に小さな箱を持っていた。


「よお、みんな! ハマキンだぜ! 今日さ、めっちゃヤバいもん見つけたんだよ!」ハマキンがカメラに向かって叫ぶ。めるぽよが横で「え、なになに!? 見せて見せて!」と飛び跳ねる。


ハマキンが箱を開けると、そこには手のひらサイズの折り紙でできたミニチュアの喫茶店が現れた。カウンターには小さなコーヒーカップ、テーブルにはメニューまで再現されている。コメント欄が一瞬で「え!?」「なにこれ!」「神すぎ!」と埋め尽くされる。


「これ、渋谷の路地裏で拾ったんだよ。めっちゃ精巧だろ? 和紙の質感がやばいし、こんな小さいのに細部まで完璧!」ハマキンが興奮気味に説明する。「誰が作ったかわかんねえけど、ネットで話題になってるらしいぜ!」


めるぽよがルーペを取り出し、カメラに近づけて見せる。「見て見て! このカップ、ちゃんと取っ手まであるよ! どうやって折ったの!? 魔法!?」


コメント欄はさらに加速し、「#謎の折り紙職人」がトレンド入り。視聴者たちは「これ、絶対日本の国宝級の職人だろ」「いや、妖精の仕業じゃね?」と盛り上がる。配信は100万ビューを突破し、折り紙の謎は日本中を駆け巡った。



そして、噂は世界へ


ニューヨークのオークション会場。クリスティーズの豪華なホールは、現代アートや希少な工芸品を求める富豪たちで埋め尽くされていた。この日の目玉は、日本から持ち込まれた「謎の日本の折り紙」と題された、極上の和紙で作られたミニチュアの商店街だ。東京の浅草で発見されたこの作品は、仲見世通りの小さな店々が精巧に再現されていた。


オークショニアが壇上で紹介する。「次にご紹介するのは、日本で話題沸騰中の作者不明の折り紙作品です。和紙の質、精密さ、そしてその芸術性は類を見ません。開始価格は5万ドルです!」


会場がざわつく中、すぐに札が上がる。「6万!」「7万!」と声が飛び交い、オンライン入札も急上昇。最終的に、ミニチュアの商店街は驚異の50万ドルで落札された。落札者は匿名のコレクターだったが、インタビューでこう語った。


「これほどの技術は見たことがない。まるで生きているかのようなディテールだ。東京の街角で発見されたと聞いて、ますます興味が湧いた。誰が作ったのか知りたいが、それが謎であることもこの作品の魅力だ」


オークションのニュースはCNNやBBCでも取り上げられ、「日本の折り紙革命」「謎のアーティスト」と世界中で報じられた。SNSでは「#OrigamiMystery」がグローバルトレンド1位に躍り出る。



世界に広がる好奇心


折り紙の噂は、日本を起点に世界中に広がっていた。京都の鴨川沿いで見つかったミニチュアの五重塔、横浜の港に置かれた小さな客船、大阪の道頓堀で発見されたたこ焼き屋の屋台。どの作品も、極上の和紙で作られ、驚異的な精密さで人々を魅了した。


誰もが同じ疑問を抱いていた。「誰がこんな折り紙を折っているのか?」


学者たちは「失われた日本の伝統技術の復活」と分析し、アート愛好家たちは「現代のバンクシー」と呼び、子供たちは「折り紙の妖精」と囁き合った。しかし、作者の手がかりは一切ない。作品には署名もなければ、メッセージもない。ただ、極上の紙と無限の想像力だけが、日本各地に静かに現れ続けた。

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