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家の隣に魔王が住んでいる!  作者: 白鈴サキ
Version4 イベントは突然訪れる
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Ver.4.3.0 魔王に攻撃魔法は効かない?

「あれ、武藤がいない……」

 

 席へ戻ると隣の席がぽっかりと空いていた。部屋の中を見渡してみても、あの特徴的な明るい髪色が見当たらない。机の上には並々と注がれたビールが置かれたままだった。

 どこ行っちゃったんだろう……?

 すると、横で立ち尽くしていた私に気づいた勇崎さんが顔を上げて私の独り言を拾った。


「武藤ならついさっき、外へ出た」


「……そう、ですか」


 なんだ、どっか行っちゃったのか……。菅野さんのこと、聞いてもらおうと思ってたのに……。

 座布団の上で足を崩すとふんわりとした質感が疲れた足腰を迎え入れてくれた。長いこと立っていたからか、足の裏を中心に全体がじんじんと痛い。


「はぁ……」

 

 さっきまで楽しい気分でいたのに菅野さんの長話に付き合うことになったせいで、疲れてしまった。

 それに菅野さんは私にデバフまでかけてきた。まだ心の中がモヤモヤとしている。いくら忘れようとしてもなかなか離れてくれない。なんと鬱陶しいことだろう。


「めんどくさかった……」

 

 ちょっとでも言葉に吐き出していかないとモヤモヤは溜まる一方だ。

 おなかも空いてきたし、何か食べよう……。

 そう思い、俯いていた顔を上げると武藤が頼んでいたビールが目に入る。

 そこで私はピンと来た。

 そういえば――武藤がさっき、嫌なことはこれ……お酒で流すと言ってたような。

 本当に流せるの?……いやいやいや。飲兵衛の言うことは信じちゃいけない。


「ビールは……やっぱりまだ苦手だったし、日本酒は……さすがに飲めないや」

 

 と思いつつも、手が勝手にメニュー表を取っていた。

 数ページにも渡るお酒の写真をじっくりと読み込みながら、結局どれにしようかと悩み始める始末。

 いけないとは分かっているんだけど……分かっているんだけどね。

 

「よしっ」

 

 武藤の言っていたことはさておいて。

 今日はもう、たくさん飲んじゃえ。せっかく良いお店に来たんだし。

 パタンと勢いよくメニュー表を閉じ、他の人が注文を取るタイミングに合わせて私も名乗りをあげ、お酒を頼んだ。





 *********





 空いたグラスの数々。中途半端に残っている料理皿。時間が経つにつれ、各テーブルの上はとっ散らかり始めていた。

 かくいう私の目の前にも、もう何度目に注文したか自分でも分かっていない飲み物が置かれている。

 えっとー……これは……何を頼んだんだっけ……?

 判断力がだいぶ落ちていると自覚はしている。だけど、意識はちゃんとあるから酔ってはいないはず。

 まだ……まだ、大丈夫なはず。

 

「うん、おいしい」

 

 中身の分からない飲み物を飲んでみると炭酸が喉を潤した。少し、酸っぱい。

 

 ――嫌なことはこれで流す。


 武藤はなかなかいいことを言う。言っていたことはあながち間違いではなかったのだ。

 モヤモヤと抱え込んでいた気持ちがいつの間にか綺麗さっぱりと、流されていた。 

 名言を残した当の本人は長電話なのか、まだ戻ってこない。

 体格の良い武藤が壁の役割を果たしていたのか、座っていた場所が空いているだけでその奥にいる勇崎さんが視界に入り、なんだか落ち着かなかった。

 私はそのまま視線を移し、勇崎さんを見た。

 勇崎さんは静かにお酒を嗜んでいて酔っている様子はなく、ただ、周りの様子を眺めているようだった。

 

 私と勇崎さん……たしか、歳は近いはず。なのに、勇崎さんは余裕があるというかなんというか。大人の楽しみ方をしているといいますか。

 わいわい騒ぐのもたくさん飲むのも、楽しみ方のひとつだけど、こう勇崎さんの楽しみ方は品に溢れているというか……。

 ……私もいつかはああいう余裕みたいなのが出てくるのかな。

 私は少しの間、勇崎さんに見入ってしまっていた。

 はっと気づいた頃には自然と声を掛けていた。


「ゆうざきさん」

 

 理由は分からないけど、勇崎さんと話したくなってしまったのだ。

 

「――なんだ?」


 飲みかけていたグラスをそっと机に置きなおし、勇崎さんは私を見た。

 距離を詰めたわけでもないのに隣が空いているからか、勇崎さんが近くにいるような変な錯覚に陥る。

 考えなしに話しかけていたせいで、一番重要である話題を考える暇も無かった私は、何をいうまでもなく、


「わたし、やりましたよ……!」


 と高らかに宣言していた。


「……何を?」


 勇崎さんは困惑気味に聞いてきた。

 

「くわしくはいえないんですけど……」

 

 本当は「菅野さんを倒してきました!」と伝えたかったけれど、勇崎さんの前で菅野さんの名前を出すのは躊躇われる。

 

「とりあえず、めちゃくちゃがんばったんです……!」


 私がぼやかしながら答えると、勇崎さんはその様子を黙って見ていた。


「ぎせいはあしこしでしたが……これでわたしたちをおそってこないでしょう」

 

 今日だけでかなり成長したといっても過言では無い。

 なんせ相手は強敵、菅野さん。武器は木の枝一本ならぬ、言の葉のみ。足に怪我は負ったけど、防具はなくとも勝てたのだ。

 私はもう勇崎さんと出会った頃のプルプルと震え上がる最弱モンスターではない……!


「やってやったんです……!」


 私はぐっと親指を立てて勇崎さんの前に振り下ろす。呆気にとられた菅野さんのあの間抜けな顔が蘇って、ついニヤけてしまいそうになる。

 勇崎さん……できることなら菅野さんのあの顔を――あなたに見せてあげたかった。

 勇崎さんはずっと親指の先を見ていた。

 そして、視線を私に移すと


「……そうなのか。よかったな」

 

 と言い、目頭を押さえたまま俯いてしまった。

 きっと、私のあまりの成長具合に感動してしまったのかもしれない。

 いいですとも、いいですとも。私はさながら影の勇者さ。思う存分、噛み締めてくだされ。

 ――と、冗談はさておき。


「どうかしましたか……?」


 あまりにもそこから動かなくなってしまったので、私は心配になり声をかけた。

 もしかして、体調が悪くなっちゃったとか……?

 私の声に勇崎さんは小さく反応をして顔を上げた――かと思いきや、目頭を抑えたままで今度は手のひらをこちらに向けてきた。


「気にしないでくれ……」


 静止を促すようにピタッと目の前で止められる。


「はーい……?」

 

 うう……顔がよく見えない……。

 でも、気持ち悪くなったとか頭が痛いとかではなさそうだ。良かった良かった。

 

 ――というか、勇崎さんの手……大きいな。すらっと長く伸びた指は骨ばっていて、がっしりとしている。

 下手したら鷲掴みされてしまいそうだ。……なんちゃって。

 勇崎さんは一息ついた後、やっと手を下ろしてくれた。

 しかし、そのまま前に向き直してしまったので、私は一人寂しく晩酌を再開することにした。

 残念、もっと話したかったのに。

 

「……おっと〜?」


 体勢を変えようと足を動かしただけで体が大きく揺れ動いた。目の前も船の上にいるみたいにぐわんぐわんと揺れている。

 あれ、おかしいな……こんなに食べて飲んでるというのに体は重いどころか、軽いと感じる。

 直近で似たような体験をした気がしなくもないが、よく覚えていない。


「きょうはいっぱいのんじゃおっかな……!」

 

 気分も良いし、これは菅野さんを倒した祝杯だ……!

 私はさらにお酒を頼み続けて、来るたびにそれをぐいぐいと勢いよく飲み干した。

 時々、勇崎さんの視線を感じて横を振り向いてみるけれど、すぐに逸らされてしまう。

 はて……?


「ふう……」

 

 もう一杯、もう一杯。

 一息ついた頃には、さらに気分が良くなっていた。


「ゆうざきさん、のまないんですか?」


「ああ」


「むとう、まだもどってきませんね~」


「……だな」


 相変わらず勇崎さんはあまり喋らない。

 それに対して、私はいつもよりもぽんぽんと言葉が出てくる。


「これおいしくないですか?」

「美味かった」

「ですよね!」


「ゆうざきさんってたべられないものとかあるんですか?」

「特にない」

「おとなだぁ……あ、そういえば、ゆうざきさんっておいくつなんですか?」

「……今年で三十だな」

「……ってことは、わたしとふたつちがいですね~。ぜんにんのたけもとさんに、「わかいものどうし、がんばってね~」っていわれてたんですよ~」

「俺も言われたな……」

「ふふ~、ゆうざきせんぱいですね~」


「ずっと、すごいたのしいきぶんなんですよね〜」

「だろうな」

「どうしてでしょうね~」

「……」

「……ゆうざきさん?」

「あまり飲みすぎるなよ」

「はあい」

 

 隣の武藤が戻ってこないので勇崎さんがよく見えるし、話しかけやすかった。

 私が一方的に喋ってる気がするけど、勇崎さんはなんとも思っていないんだろうか。

 あれ、私……さっきの菅野さんみたいになってない……?

 めちゃくちゃ嫌がられてたらどうしよう。

 

 話に区切りがついて落ち着いた頃――

 気になって勇崎さんの方を見てみると、彼はスマートフォンを操作していた。

 非常に分かりにくいけど、ひそかに表情が動いているのが分かる。

 ……あ。今、眉が下がった。

 こう見ると勇崎さんって結構、顔に出てるんだよね……本人は気づいてないかもしれないけど。


「……」

 

 整った横顔にちょっとだけ。ほんのちょっとだけ。

「かっこいいなぁ」と思ってしまった事は、私だけの秘密にしておこうと思う。

 それにしても――

 四月に本社に戻ってきた頃の勇崎さんと、最近の勇崎さんの雰囲気は少しどころかかなり違う。

 つんけんとしていて誰も寄せ付けないオーラを出していた彼が今日、この場に馴染んでいる。

 前までの私じゃあ考えられないことが起きている。

 勇崎さんの中で何かが変わったのかもしれないし、私の中の勇崎さんのイメージが変わったのかもしれない。

 どちらにせよこの場に溶け込んでいる彼を見て、私は嬉しいと思った。

 

「ゆうざきさん」


「……どうした?」


 勇崎さんはスマートフォンから目を離し、私を見た。

 その落ち着いた声色に、時々、呼吸が詰まりそうになる。


「……やっぱ、なんでもないです」


 特に話すこともなかったのに口が勝手に名前を呼んでいた。用もないのに呼んでしまったことを申し訳なく思う。

 勇崎さんは私をじっと見た後、「すみません」と近くの店員さんを呼んだので、私もこれで最後にしようと一杯頼むことにした。

 ラストオーダーの時間も近づいているからか他に頼む人は居なくて、注文を伝えると店員さんはすぐに私と勇崎さんが頼んだ分を持って座敷に上がってきた。


「ありがとうございます」


 私と勇崎さんはそれぞれ自分の分を受け取った。

 底に溜まった原液をマドラーでゆっくりとかき混ぜると、氷が淵に当たり、カラカラと綺麗な音がした。

 今まで勢いに任せて飲んでたけど……最後ぐらい味わおう。私は名残惜しくグラスを傾ける。

 

 ――その時だった。

 

「柊さん」


 ちょっとした量を一口。

 口に含んだところで勇崎さんから声がかかった。

 甘い香りが抜けていく。


「……はい?」

 

 横を振り向くと、勇崎さんは透明な液体が入った一杯のコップを私の方へと寄せていた。


「これ」


「……なんですか、これ?」


「水」


 必要な情報を短く伝えると、さらにコップを近づけてくる。


「飲んだ方がいい」


 私は勇崎さんの机の前を見る。

 そこには先ほどまで飲んでいたお酒が少量残っているだけで、少し前に店員さんを呼んで頼んでだであろう物が置かれているわけではなかった。


「あれ……?さっきなにもたのんでなかったんですか?」


「頼んでない」


「じゃあこれは――」


 

「柊さんの分」


 コップの中の水は静かに揺れている。

 驚いている私を置いて、勇崎さんはさも当然のように答えた。

 透き通った視線が私を貫いてくる。

 

「え……?」

 

 勇崎さんは一瞬言い淀んだ後、視線を下げて続けた。


「……結構、飲んでるから」


 いつもはっきりと聞こえる勇崎さんの声。それが今、消え入りそうなくらい控えめだ。

 それに気づいてしまった私は、

 

 ――あ。

 

 突然、身動きが出来なくなってしまった。

 どこかが痛むわけではない。体に悪い異変が起こってしまったのではない。

 じわっと胸の奥が熱くなって、心臓を一掴みされたような衝撃。どこか懐かしさもあるような感覚に。

 私は動けなくなってしまったのだ。

 

 目の前に映る勇崎さんから目が離せない。周りの雑音さえ、耳に入ってこなくなる。

 少し崩れた前髪が憂いを帯びた瞳にかかっていて、その瞳が真剣に私を見つめている。


「……」

 

 そんな勇崎さんの姿を目にした私は……。

 私は――



 

 

「……ありがとうございます」

 

 ――あれ……何を思ったんだっけ……?

 お礼の言葉を口にした瞬間、思っていたことも一緒に外へ飛び出してしまった。

 なにかとても大事なことだったような気もするけど……だめだ。思い出せない。

 水の入ったコップをありがたく受け取り、一口飲むとひんやりとした清涼感が喉元を通っていった。


「体調は?」


「……だいじょうぶです!」


 さっきとは別の意味でモヤモヤする。自分のことなのにまるで分からない。

 どうにかして思い出そうと考え込みそうになった矢先――


「そうか――」

 

 私が声に気づいて振り向くと、勇崎さんは頬杖をつきながら優しい眼差しをこちらに向けていて。

 

「良かった」


 と僅かに目を細めた。

 

「――あの、ゆうざきさん」


 珍しい、なんて思うよりも先に私はまた、勇崎さんの名前を呼んでいた。

 

「……なんだ?」


 普段はクールなのに、ふとしたときに素顔の一部を見せてくる勇崎さん。

 そのギャップにやられてしまった人物が一人。

 ――あぁ、私……さっきこう思ったんだ。


「わたし――」

 

 早く、伝えたい。

 この気持ちをまた、忘れてしまう前に。

 言葉にしてしまうことは、思い出すことよりも簡単で単純だった。

 だから私は何の脈略もなく、


「わたし、べつによびすてでもかまわないですよ」


 なんて攻めたことを言った。

 

「――は?」

 

 そうだそうだ、思い出した。

 私、もっと勇崎さんのことを知りたいって思ったんだった。

 そうとなればまず、仲良くなるところからと思って呼び方から変えてもらおうと思ったんだ!

 あー、スッキリした……!


 私たちの間だけ時が止まってしまったのではないかと錯覚するような静かな時間が生まれている。

 勇崎さんは石化したかのように動かない。私はというと呑気に笑っていた。


「……冗談か何かか?」


 その一言を皮切りに、勇崎さんはやっと石化状態から解けたみたいだ。

 

「やだなぁ、じょうだんだなんて……!ちがいますよ〜、むとうよんでるみたいに″ひいらぎ”ってよんでくださいってことです」


「それは分かってる……」

 

 私が一生懸命説明したと言うのに、それを聞くとまた、勇崎さんは目頭を押さえだしたのだった。

 深く息を吸った後、再度、私の様子を窺うように聞いてくる。

 

「……嘘だろ」


「うそじゃないです」


 そんな嘘、吐くわけないじゃないですか。

 私は満足げに鼻を鳴らして経緯を説明をした。


「ほら、ゆうざきさんって″さん″づけでよぶいめーじがないといいますか……なんていうかこう、さらっとよぶ……みたいな?「ひいらぎ」……みたいな!?あとやっぱり、なかよくなるにはまずこういうとこからかなと、わたしおもっちゃいまして……!」

 

 勇崎さんは最初、静かに聞いていたはずなのに私が最後まで言い切った頃には、武藤の席にある座布団に手をついて前屈みになっていた。

 私を見上げる顔には眉間の皺がいつも以上に刻まれている。なんでちょっと不服そうなんだろう。

 

「……酔ってるのか?」


「よってないです」


「酔ってるよな?」


「よってないです」


「絶対酔ってるよな」


「よってないですって……!」


 断じて酔った勢いで言ったわけではない。

 疑うことを止めない勇崎さんと否定を続ける私。

 その後も似たようなやりとりが何回か続き――


「もう!ひどいですよ、ゆうざきさん……!」

 

「分かった、分かったから……!」


 私たちのやり取りに周りがこそこそとざわつき始めた頃には、二人して呼吸を整えていた。


「……はぁ」

 

 勇崎さんは私の強い反発にとうとう諦めがついたのか、がくりと肩を落としていた。


「これでわたしのかちですね~」


 私は少し温くなってしまった水を飲み干し、ピースサイン。

 勇崎さんはその傍らで、俯きながらくしゃりと前髪をかき上げていた。


「――だろ」


 ……? 

 今、何か言っていたような気がしたけど……はて?

 ふかふかの座布団に向けられた言葉が私に届くはずもなく。

 さらに勇崎さんは、そこからぴくりとも動かなくなってしまった。

 あれ、これデジャヴというやつでは……?私は少しだけ席を寄り、再び勇崎さんに声をかける。 


「……ゆうざきさん」


「……」


「ゆうざきさん」


「……」


「ゆうざきさーん!」


 何度呼んでも返事はない。

 仕方ない、しばらくそっとしておいてあげよう。

 魔王様、今宵、生まれて初めての負けを味わったのかもしれない……それで傷心してしまって動けなくなってしまった……のかも。

 それにしても今日だけで菅野さんだけでなく、勇崎さんにまで私が勝ってしまうとは……。我ながら恐るべし。

 武藤の席が無くなってしまったので、私は元の位置に戻ろうと体を少し横にずらそうとした。

 すると――

 

「柊――」


 微かに聞こえた私の名前を呼ぶ声。


「……これで、良いのか?」


 振り向くと勇崎さんは顔を上げ、恥ずかしそう――というよりは悔しそうな顔をし、戸惑いの目を私に向けていた。

 

 ――柊、か。

 自分で言いだしたはずなのに呼ばれ慣れていないせいで、なんだか心が落ち着かない。

 だけど、勇崎さんに「柊」と呼ばれた時――水面をそっと撫でるような優しい風が吹いたような気がした。


「はい!もう、バッチリです……!」


 私は指で丸を作ってみせる。

 勇崎さんはそれを見てまた「はぁ……」とため息を吐くと、下を向いてしまった。

 けれど、向ける際に垣間見えた表情はどこか照れくさそうだった。

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