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理屈じゃない 2話

 これってもしかしてデートってことなのか?


 いやでも、もう一度聞くっつってたし、もう一回、今度はきちんと理屈を整えてから告白しろってこと?


 でもそれならわざわざ日曜日に、しかも駅前で待ち合わせる? それこそ校舎裏で良くね?


 となると、やっぱりこれデートなのか? だって若い男女が休みの日に駅前で待ち合わせてやることなんてデートか新興宗教の勧誘くらいしかねえだろ?


 でもそんなこと期待して浮かれてたら「私は一言もそんなこと言ってない」って言われそうだな。


 津栗(つくり)さん滅茶苦茶理屈っぽいっつーか、理屈まみれだったからな。


 見た目通りのクールさというか、でも俺が不整脈だと勘違いしてた時は必死だったな……。


 なんか、不思議と嫌な気分にはならなかったんだよな。それくらいオレの中で津栗さんはやっぱり特別な存在なんだ。


 うん……、やはりデートじゃないな。


 もう一度、今度はきちんと告白しろってことだろ。望むところだ。俺もその方がいい。


 あれからもう一度色々考えてみたんだ。今度は行ける……!




「――おや? もう来ていたのか?」


 つ、津栗さん!? そ、そっちこそもう来たの!? まだ……約束の時間から30分も早いけど。


「うん? あぁ、先に本屋に寄るつもりだったのでな。その往復の時間と、電車の到着時間を鑑みたらこのタイミングで到着の電車に乗るしかなかっただけだ」


 日常で『鑑みる』とか使う人初めて見た……。そ、そっか。別に浮かれて少し早く――いや、なんでもない。


直正(なおまさ)くんこそ早いのだな」


 お、俺はその、待ち合わせに遅れないようにしてただけだから。


「おや、時間には厳しいのだな。でも30分以上余裕をもって行動するなんて、直正くんの普段の生活逆に忙しなさそうだな。もう少し緩くしてもいいんじゃないか?」


 は、はは……。まぁ今度からはそうするよ。


 あ、えっと、来てくれてありがとう。


「提案したのは私だ。別にお礼を言われることではない」


 ま、まぁそうなんだけど。それに、私服姿……か、かかっ、可愛いね。


 ――よっしゃ! 言えたぜ……昨日ネットで調べたからな。とにかくまずは女の子は褒めろって――


「今それ関係あるのか?」


 か、関係あるよ。あるに決まってるだろ!


「どうして?」


 そ、それはその、……すす、好きな女の子が可愛い服着てたら言いたくなるよ。喜んでほしいから。


「なるほど。理解した」


 あ、理屈が通った。よっしゃ!


 ……俺は何に喜んでんだ?


「じゃあどうする? まだ時間はあるけど」


 手首を返して時計を見る所とか女の子って感じで良いなぁ……。


「聞いてるのか?」


 あ、え、はい、すみません! どうするって……どうしましょう?


「忘れたのか? 直正くんが私のことを好きな理由を教え――」


 わああ! わかってるよそれは! そんな大きい声で言わなくても。


「私より君の方が声が大きい」


 よ、よくそんなこと平然として言えるなぁ。


「君から言ってきたのだろう? 私のことを好きって」


 そ、それはそうだけど……。


「で、改めて訊くけど、どうして私のことが好きなのだ?」


 こ、ここで言うの? みんなめっちゃ行ったり来たりしてるけど。


「駅前だからな。電車を使う人が往来しているのは自然なことだ」


 そりゃそうだけど……。ムードとかその……ま、まぁとにかくわかったよ。言うよ。


 俺は、津栗さんのことが、す、好きで。それはやっぱり一目惚れだ。津栗さんの切れ長の瞳とか、ほどほどに伸びた黒髪とか好きだ。


 でも、それだけじゃないんだ。ていうかそんな部分部分の話じゃないんだよ。全身全て、トータルで見て、『津栗夕梨(つくりゆうり)』さんを見て好きになったんだ。


「やっぱり外見での判断ということなのだな……」


 いや違う。


「何?」


 この前話して、津栗さんって面白いなって思ったんだ。ちょっとイラっとした瞬間も正直あったけど。


「この前って、10分もないくらいの会話だっただろう。それだけで私の15年間を知った気になってるわけか?」


 そんなことはない。でも確かに知らないことはまだまだ沢山あると思うんだ。

 だからもっと知りたいと思ったんだ。津栗さんのことを。普段どんなことをしてるのかなとか、何が好きなのかとか、どんなことで笑うのかなって……。


 だから……俺は、津栗さんのそばにいつも居たいんだ。君を見ていたい。


「……なるほど」


 ――やった、通じたか!?


「私が普段何してるか気になるのならノートにまとめてこよう。いつもそばに居られるのは迷惑だ。お風呂に入ったりトイレにも行くからな」


 伝わってねえええええええええええええええ!


「私のことを見ていたいなら写真にでも撮って待ち受けにすればいい」


 ……え? それはオッケーなの!?


「別に減るものではないし、君が見ていたいって言い出したのだろう? 盗撮されるのは嫌だがきちんと申し出てきたのであれば私もやぶさかではない」


 『やぶさか』って日常で使う人初めて見たかも。……もう俺混乱してきた。


「撮るのか? 撮らないのか?」


 と、撮ります! あ、ポーズ決めてくれてたのね……。


「――で?」


 で?


「改めて訊くけど、どうして私のことが好きなのだ?」


 いや言ったっての! もう言った!


「そうか。もういいのだな」


 え、ちょっ、そ、そう言われると、なんだか――。


「じゃあ、私はそろそろ行く。ノートにまとめるのに時間がかかるから、次の木曜日、放課後教室で」


 あっ、ちょっ――……行っちゃった……。




 や、やっぱデートじゃなかったか。はぁ…………。


 …………、まぁ、写真撮れたし、ちょっと良かったか? いや良かったと思おう。私服姿も見れたし。ノートにもまとめてくれるみたいだし……。っていうかノートって、ワードとかじゃなくて? まぁなんでもいいけどこれは良いことなのか?


 つーか、本屋って東口じゃなくて西口だよな? 待ち合わせ時間まで時間つぶしに行くっていうなら、どうしてこっちの東口に先に来たんだろ?


 でも、津栗さんが意味もなくそんなことするはずないし……。


 まさか……。


 ドジっこなのか!?

短期集中連載です!

また明日も夜9時頃続きを公開します!

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