第3話私の悩み
学校が終わって、マンションの一室。
「ただいま〜」
言ってみるものの、返事が帰ってこない。恐らく私以外にまだ誰も帰って来てないのだろう。
手を洗って部屋に直行し、ベッドにダイブする。
「はぁ、なーんで言えなかったんだろ...」
今日の昼休み、1人だった悠真に一緒にご飯を食べようと誘おうと思ったが、友達を待っているのを知った事と悠真を前にして上手く話せなかった事に後悔する。
「昔はもう少し素直だったんだけどなぁ...」
中学生、高校生へと成長していくにつれて悠真に対する態度は段々酷くなっていった。今ではメール以外でまともに話せないくらいだ。
スマホを取り出して写真アプリを開いて一枚の写真を見る。それは、彩花がまだ中学生になったばっかりの頃、悠真と一緒に撮ったツーショットだった。
「はぁぁぁ、好き...」
悠真に対しての恋心は幼い頃からの物だった。いつも周りに優しく、自分が泣いていたらすぐに駆けつけてくれる。常に周りが優先で自分の事は二の次になっている所。気づけば彩花は悠真に惚れていた。
「大大大好き」
本人に言えたら良いのに、と思うが絶対に言えないだろう。そもそも、言えなかったのが現状だ。
「ほーんとに悠真君の事好きねぇ」
その声でバッ、と身体を起こす。
そこにはニヤニヤした顔で私を見るお母さんがいた。
「ってお母さん?!いたの?!」
「ずっと居たわよ、寝てて貴方が帰ってくる音で目が覚めたの。で、すぐ部屋に行くから何事かと思って見にいってみたら、ねぇ?」
「居たなら言ってよ...//」
先程までの行動すべて見られていたとなると消えたくなるくらい恥ずかしい。顔が真っ赤になっているのを手で隠す。
「貴方早く好きって言わないと取られちゃうわよ?悠真君」
「ちょっとからかわないでよ...それに、あの陰キャに彼女ができるわけないでしょ」
「ふふ、まぁ頑張ってね」
お母さんはそう言ってリビングへと行ってしまった。
「はぁ、びっくりした」
今度からはちゃんと確認しよ...。
「あ、こないだのアーカイブ見ちゃお」
次に私はYouTubeで悠真のチャンネルを開く。
悠真が配信をしている事に気づいたのは結構最初の方だった。適当にYouTubeを見ていると、悠真の声と似ている人を見つけ、最初は気のせいかと思ったが、年齢や特徴などで悠真と確信し、今では配信を見逃さないようになってしまった。それに、私が唯一素直になれる手段として、リスナーとして悠真にコメントするというのがある。
「楽しそうにしてる悠真も、いい...」
あぁいけない、また顔が緩んでしまった。配信だけでしか見せない一面がこれまた良い。
本当、私以外に悠真の良さを知らなくていい。むしろ知ってほしくない。
悠真を好きなのは私だけで良い。
それから、夕飯時。お母さんはお父さんにこの事を話して、お父さんまで「悠真君なら大歓迎だよ」とからかってくるのだった。