第12話 行ってきます
魔女の森。
それはリューゼニス王国のロックリア領南部にある深い森だ。
エストが魔女に薦められた”帝立魔術学園”があるレッカ帝国は、リューゼニスの南東に位置し、ここロックリア領は帝国に隣接した領地。
帝都へは、馬車を使って一週間。
歩いたら途方もない時間が掛かる。
股間照明事件から時は流れ、エストは十歳になった。
身長は魔女を追い越し、旅立ちの時が来た。
帝国へ行くための準備は整え、着替えやお金などを背嚢に詰め、腰には魔女とお揃いの氷の魔道懐中時計が提げられている。
寂しくないようにと、もう一つ作ったのだ。
「エストよ、本当に一人で大丈夫かの?」
「……多分、僕より師匠の方が寂しいかも」
「はっ、ははーん? ままままさか!」
「お姉ちゃん。師匠のことはよろしくね」
「もっちろ〜ん。でも、ウチも心配だよ〜」
ドアの前で、魔女とアリアは見送ることに。
既に涙目になっている魔女を優しく抱きしめたエストは、小さく笑みを浮かべた。
今生の別れではない。
最長で五年の別れになるだけだ。
それも、早ければ三週間後には帰ってくる。
二人もそれは分かっていたが、どうしても寂しいものがある。
男子三日会わざれば刮目して見よ。
帰ってきた時のエストは、別人のような顔つきになっているかもしれない。
「それじゃあ、行ってきます」
「っ……行ってらっしゃい……なのじゃっ」
「行ってらっしゃ〜い。気を付けてね〜」
「うん。すぐ帰ってくるから」
それが、エストの精一杯の言葉だった。
雪のように白い髪。空のように青い瞳。
そんな印象を与えるエストを見送ると、魔女はアリアの胸で泣いた。
我が子が行ってしまったと。
ただ、感じるのだ。
ローブの内ポケットにある懐中時計。
三人の手が繋がった家族写真。
甘えん坊ながらに成長した、大切な一人息子を。
第一章 完
本作はカクヨムにて先行公開してあります(なろう投稿時点で460話ほど)。
毎日7話更新ぐらいのペースで追いかけますが、多分途中で失速します。ですので、気に入ってくださった方は、ぜひカクヨムの方でお楽しみください!
ちなみに言っておくと、本作はハーレム要素はありません。この後、女の子がそれなりに出来ますので、早めにお伝えしておきます。では、引き続き楽しんでいただけると幸いです。




