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04 正妻って!

「リジー、キスをしよ」


 美しいと言えるほどのアラン王子が私の顎に手を添えた。瞳が綺麗。


 そっと顎を持ち上げられて、優しくキスをされた。温かい唇が私の唇にあわさる。そっと唇が離れて、私が目を開けると、口角をあげた王子の顔があった。


「リジーがキスしている顔、さいこー」

 

 体の力が抜けた私は、無意識に両手をアラン王子の背中に回していた。



 頬を上気させたアラン王子に微笑まれる。


 とろんとした私は馬車の座席にもたれかかった。



「今日はリジーが主役だから。花嫁は生涯に一度だろ。続きは後に取っておく。俺はリジーを幸せにするからさ」



 長い足を組んだアラン王子はうっとりとするような瞳で私を見た。



 私は何がなんだか分からない状態で、ふわふわとした心地で宮殿に着いた。馬車を待ち構えていた大勢の人たちに華々しく出迎えられた。


 とにかくアラン王子がそばにいると、気持ちが落ち着かない。私は心ここにあらずの状態でどうしたら良いのか分からなかった。




 連れて行かれた部屋には国王陛下がいらした。



「エリザベス・ディッシュ公爵令嬢、我が家族へようこそ。其方が私の娘になることを歓迎する」



 国王陛下とその隣にいるお妃さまに大歓迎された。



「あ、リジー、こっちが俺の妻のヨナン」



 この世のものとも思えない美形のお姉様に、にっこりと艶やかに微笑まれて、私は思わずよろめいた。


 ドレスも素晴らしく、細部まで凝った作りで、最上級の仕立てのドレスを優雅に着こなしてらしている。



 褐色の髪、 

 透き通るような肌、

 温かさを感じるブラウンの瞳、

 長ーいまつ毛、

 桜色の唇。


 び・け・い。



 えぇ……っ?

 王子の正妻って、この人?

 私より断然綺麗!

 私より断然妖艶!


 私、この人にいじめられる?

   


 王子が耳元でささやいた。


「ね、リジー。あいつ男だから、用心してー。あいつは男が好きだけど、やばいぐらい女も好きだから」  



 は?

 今、なんとっ!?

 男?

 誰がっ?

 ヨナン様がっ!?

 


 美しいヨナン妃にウィンクされて、私はたじたじと後退った。アラン王子がすっと顔を近づけてきて、耳元でささやいた。

 


「あ、俺は女じゃないとむりだからさ。ヨナンが男なのは秘密ね。リジーが俺の花嫁になってくれて、すんごい嬉しー!可愛いいリジーを失いたくなかったから」



 ヨナン妃の目の前で、アラン王子から唇に熱烈なキスをされて、私は呆然とした。




 ***


 私がさりげなくアラン王子にささやかれたのは、美しいレースをあしらった豪華で雅なウェディングドレス姿の時だ。


 レースが何重にも重ねられて、ふわふわの夢のような白いウェディングドレスを着せられて、大聖堂で挙式をあげている時。



「ほら、ヨナンの狙っているのは、あの美しい若者」


 アラン王子にひそひそささやかれて、私はヨナン妃の方をちらりと見た。



 大聖堂で参列しているヨナン妃のほんの少し先に、若い従者がいた。ヨナン妃は熱心にその従者を見つめているが、従者の方は気づかない。


 私の視線に気づいたヨナン妃は、私に訳ありげに微笑みかけてきた。



 カオス……!

 アラン王子の正妻は美人な男。

 スレンダー美人だが、男?


 

  

「誓います」

「誓います」


 私たちは誓いの言葉を述べた。素晴らしい挙式だった。


 大聖堂で、生涯初めてで、おそらく最後の(そう願うよ!)結婚式をあげてもらった。



 ヴァージンロードを歩いたが、全然ヴァージンなんかじゃない。


 大事なものは知らない男に散らした。

 だが、式は挙げることができた。

 男を正妻にした王子と。




 

 マリーは泣き崩れ、父と母は嬉し涙を浮かべて私を祝福してくれていた。



 急遽用意された結婚式にもかかわらず、アラン王子の本気度は十分に伝わる、温かくも豪華な式だった。





「リジー、あなたをアランが最高に可愛いいと言っていたのよ」


 式の後、美しいヨナン妃はそっと私の耳にささやいた。


 声は男の声だった。


「俺とも?」



 きゃーっ!!

 


 顔を真っ赤にした私のところに、アラン王子がまっしぐらにやってきた。


「ヨナン、この可愛い人は俺のリジー。わかるよね?」



 凛々しい顔をしながらも、厳しい声でヨナン妃に詰め寄っている姿は、何故かとても格好良く見えた。



「わかるわ。政略結婚じゃあ、得られない幸せを手に入れるのね、アラン?」



「俺はリジーを幸せにするからっ!」




 私のワンナイトは、予期せぬ展開へ。



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