13 あなたほんとーっにおかしいんじゃないの?
私はアラン王子も起こして、イザークと一緒に状況を説明した。私たちの話を聞いて、アラン王子は真っ青になった。
「ペジーカのエネルギー資源の共有差し止めだとっ!?なんてことを……」
ほぼ裸同然で毅然とした態度になったアラン王子は、ベッドから飛び出して、廊下にそのまま飛び出した。
燃えるような瞳で、真一文字に唇が結ばれていて、素晴らしいイケメンっぷりだったが、裸同然のままだ。
イザークがズボンと上着をひったくるようにかき集めて、アラン王子の後を追って行った。
「アラン!」
廊下の向こうから、イザークが叫ぶ声がしたが、裸同然でアラン王子が自分の元に駆けつけたらヨナンは喜ぶはずだ。
とにかく私は起きてやってきたマリーに、街娘の格好をするのを手伝ってもらった。
アラン王子と仲が良いことに嫉妬したヨナン妃が、私に怒り心頭だとマリーには説明した。
「それほど愛されて、お嬢様はお幸せなのです!」
マリーはびくともしなかった。
婚約者クリフに婚約破棄された主人が川に身を投げようとしたと信じ切っているマリーは、第一妃が嫉妬に狂うほど怒っている事実がむしろ誇らしいようだ。
「お嬢様は愛されていますからねっ!」
マリーにとっては嬉しいことのようだ。
「でも、なぜ街に行かれるのです?」
マリーは私のブーツをテキパキと用意しながら、ふと真顔になって聞いてきた。
「お怒りモードのヨナン妃のストレス発散で……その……ペジーカしかご存知ないヨナン妃を我が国の色んな所にご招待して、気分リフレッシュしてもらおうかと思って」
それを聞いて、マリーは瞳をウルウルさせて、私を見つめた。
「お嬢様ぁ!感激です。なんとお優しい」
マリーは私を泣きそうな顔で見つめて、抱きついてきた。
いや、マリー、これは打算だらけだ。
聞かない方が良いプランだ。
そんなに私は天使じゃない。
「さようなお嬢様の侍女で、本当に幸せでございます。お供いたします!」
マリーはそう覚悟を決めた様子で言うと、すぐにエプロンを外して自分の鞄を取ってきた。
「いや。マリー、今日も大丈夫だから。ほら、イザークが一緒にね……」
「イザークもご一緒されますかぁ?」
満面の笑みになるマリー。
キラキラの笑顔。
完全に恋する乙女の顔だ。
だめだ、マリー。
イザークはだめだ。
私はとにかくマリーを振り切ろうと、ヨナン妃の部屋に走った。
「お嬢様ぁ!お待ちくださいませっ!私お供いたしますっ!」
マリーが必死でついてきた。
ヨナン妃の部屋の前では、侍女のルーシーが困り顔で外に立っていた。アランの従者も外にいた。
え……?
何?
どうして……?
私は胸騒ぎがして部屋の扉をそっと開けた。
私は自分の目に飛び込んできたものが信じられなかった。床にへたり込んだ。
ベッドの上で一糸纏わぬ姿のヨナンが、アラン王子の上に馬乗りだったから。
アランは服を着ていた。
「なんで?!あなたほんとーっにおかしいんじゃないの?……」
ヨナンは怒り狂っている。
ヨナンはとても美しかった。
イザークがヨナンに声をかけた。
私に部屋を出ろと目で合図をしている。
「もっと楽しいところに行こう、ヨナン」
私は床にへたり込んだまま、四つん這いになり、そっと後ろに後ずさった。
のぞいた私は、ヨナンと同罪だ。
修羅場は他人が見て良いものではない。
2人の問題だから。
私はそっと部屋を退散した。
「ちょっとあなた顔が赤いわよっ!」
ヨナンの勝ち誇った声がしてビクッとした。そりゃあんな美人があんな格好したら、誰だって……。
私も泣きたかった。
私が部屋に入ったことを侍女のルーシーは言わないだろう。
私たちは能面のような表情で顔を見合わせた。
部屋に大人しく戻ろう。
ヨナンは傷ついたようだ。
怒りはおさまるまい……。
私はうなだれて自分の部屋に戻ろうとした。
戻りかけたところで、アラン王子が扉を開けて、そっと私に伝えた。
「馬車を用意している。裏口から脱出だ」
私は密かに頷いた。
計画発動だ。
とにかくヨナンには気晴らしが必要だ。
私を排除しようとしているヨナン。
彼女には別の幸せがあると思ってもらわないと、勝ち目が無い。
国を戦に巻き込む訳には行かない。
私は黙々と、この前イザークと抜け出た宮殿の裏門に向かった。
マリーは黙ってついてきた。
さっき見た衝撃の光景が頭から離れない。
いや、こちらに勝ち目なしのヨナンの美しさに落ち込んだ。
私のワンナイトは、予期せぬ展開へ。




