11 だめ。リジーじゃなきゃだめ
「アラン王子の初めての相手は、本物のヨナン妃ということですか?」
「うーん。結婚はしていなかたから、ただのヨナンの時かな。俺と違って女性。イザークは俺の本名」
私は泣きたくなった。
「俺とヨナンは瓜二つなんだよね。政略結婚だったんだ。でも、アランがヨナンに惹かれて前向きになり、結婚が予定より早まった」
「政略結婚?」
私の耳が少し遠くなったのだろうか。
なんだか聞きたくないような、耳がふわふわする感じだ。
急激なストレスで聞こえにくい。
「イエスだ、リジー。元々、利権が絡む複雑な国家間の問題を解消するための政略結婚が仕組まれていた。ヨナンがアランとの結婚を嫌がって、仕方なく俺が身代わりになった」
「本物のヨナンが結婚を嫌がった?ほんと?」
初夜のベッドインの時、いざことをしようとしたアラン王子は、嫁いだのは男だと種明かしされて、そう告げられたようだ。
突然のことで、アラン王子も相当に戸惑ったようだ。
「でも、ヨナンとアランは先に結ばれていたってところがポイント。結婚する前にヨナンはアランを弄んだ」
はぁっ!?
ヨナンはアランを弄んだ?
なんちゅー女だ。
婚前合体か。
もしかしてその時処女喪失?
「あぁ、ヨナンの初めての相手は、別にいるから。アランがただ弄ばれただけ」
アラン王子は赤くなったり青くなったり、やけ酒を煽るようにグラスの中の酒をかっくらうように飲んでいる。
いつの間にかベッドからピローを1つ持ってきて、大人しく抱いている。
こんなイケメンが切ない初恋の果てに、どうしようもなく傷ついたという図なのだろうか。
「俺は振られたの」
アラン王子は煌めく瞳で言った。
「俺は情けない王子なの」
アラン王子は私の方を見つめて、切ない調子で言った。
「リジー、俺はリジーがいないとダメな奴なんだ」
アラン王子はしかめた顔で言った。
「リジーにしかできないの」
「は?」
「え?アランなんて!?」
これにはヨナン妃も驚いた顔をしてアラン王子を見つめた。
「もー、だめ。リジーじゃなきゃだめ」
呂律がまわらなくなってきたアラン王子は、私にそうささやくと、後ろにひっくり返って、気を失うように寝入ってしまった。
今、私じゃないとできないって言った!?
今、言ったよね!?
そういうことだよね……?
あの最初の夜、「愛している」って何度も言われたような気がしたけれど、こんなに軽い男なら、絶対に気のせいだと思っていたけれど、そういうことなの?
私としかできなくなってたってこと!?
きゃーっ!?
責任重大じゃない。
私、にやけるのをやめなさいっ!
はしたないっ!
「なーに、にやけちゃって。アラン、そんな事になってたなんて……」
へーっとヨナン妃改めイザークは、ぼんやり宙を見つめて考え込んだ。
だが、突然色っぽい顔で私を見つめて、私の耳に息を吹きかけたヨナン妃。
私は思わず震えたけれど、はしっと胸を両手で抱えて防御した。
「この身はアラン王子の身なのっ」
私がヨナン妃を嗜めると、一瞬真顔になったヨナン妃は、フッとつぶやいた。
「ますますリジーが欲しくなること言うんだから。俺じゃだめ?」
「だーめ」
「可愛いなぁ。でも、リジー。俺が降りるってことは、本物のヨナンと入れ替わるってことだから。用心しなよ」
へ?
今なんて?
本物のヨナンと入れ替わる……。
「流石にバレるっしょ。子はできないし。第二妃に夢中って噂が本国に届いて、ヨナンが俄然アランに興味を持ったと言うわけ。アランにちょっかいを出したいらしい。俺もそろそろ騙しきれない限界だしねぇ」
妖艶な微笑みを浮かべたイザークにそう言われて、私は呆然とした。
アラン王子の初めての相手が、こちらにやってくる?
第一妃として?
ちくりどころではない、嫉妬の痛みが私を猛烈に貫いた。
「リジー、もっと……」
むにゃむにゃと寝ぼけて呟きながら正体もなく寝入るアラン王子は、神々しいまでのイケメンだった。
寝言はまあ、間抜けだけど。
2人でなんとかヨナン妃のソファまでアラン王子を運び、私はそのままフラフラと自分の部屋のベッドまで戻った。
早くも失恋の気分だ。
太刀打ちできない美女が襲来する。
ヨナン妃が女だったら、多分、アランはいちころだ。
そんな気持ちでいっぱいだ。
どうする、私?
私のワンナイトは、予期せぬ展開へ。




