エピローグ:白亜紀への旅立ち
場所は、レジスタンスのアジトの一角。先ほどまでの激しい議論の余韻が、まだ空気の中に色濃く残っている。翔、アヤ、マックス、そして、アヤの懸命な治療と、マックスのエネルギー供給により、意識と、最低限の動力をを回復したプチ、さらにエレーヌは、リョウたちに見送られ、出発の準備を整えていた。
「…本当に、行くんだな…?」
リョウが、複雑な表情を浮かべ、翔に問いかけた。その声には、心配と、不安、そして、一抹の寂しさが混じっていた。
「ああ…」
翔は、力強く頷いた。
「…母さんの真実を知りたい…。そして、何としても、未来を救いたいんだ…」
「…しかし、危険すぎる…!」
アヤが、翔を止めようと、声を上げた。
「…マックスの、その『共鳴』とかいう方法…本当に、安全なのか、わからないわ…!それに、クロノスはあらゆる時代に『観測者』を配置して、時間軸への干渉を監視しているのよ…!しかも、プチだって、まだ、本調子じゃない」
「…ええ、そのリスクは承知しています…」
マックスが、静かに、しかし、はっきりとした口調で言った。
「…しかし、私の中に眠る、『古代植物の力』は、クロノスの計画を阻止できる、可能性を秘めています。そして、クロノスの時間軸への干渉を阻止、あるいは安定化できる能力があることも掴みました。そのためには、一度、能力をリセットし、再起動する必要があります…」
「…再起動…?」
翔は、マックスの言葉に、首を傾げた。
「…はい。そして、そのためには、白亜紀に生育する、同種の『古代植物』との、『共鳴』が必要不可欠です…」
マックスは、続けた。
「…さらに、『共鳴』には、アヤさんの存在が、必要不可欠なのです…」
「…私…?」
アヤは、自分の胸に手を当て、驚いた表情を浮かべた。
「…アヤさんの、失われた記憶と能力…それらを取り戻すためにも、『共鳴』は、必要不可欠なプロセスなのです…」
「…でも、そんなこと、本当に可能なのか…?」
ケンタが、疑念を込めて、言った。
「…確証はありません。しかし、可能性は十分にあります…」
マックスは、静かに、しかし、強い確信を持って答えた。
「…そして、私には、時間軸の歪みを、感知する能力が、芽生えつつあります。その能力を使えば、クロノス『観測者』の目を、ある程度、掻い潜れるかもしれません…」
「…マックス…」
翔は、マックスの言葉に、希望の光を見出した。
「…しかし、それでも、危険な賭けであることには、変わりない…」
リョウが、慎重な意見を述べた。
「…もし、失敗すれば、お前たちは、過去の世界で、孤立無援となる…」
「…わかっています…」
翔は、リョウの目を見つめ、力強く言った。
「…それでも、僕たちは、行かなければならない…」
「…翔…」
エレーヌが、心配そうに、翔を呼び止めた。
「…何があっても…諦めないで…。そして…必ず、戻ってきて…」
エレーヌは、不安を振り払うかのように、精一杯の笑顔を浮かべた。
「…ああ、ありがとう、エレーヌ…」
翔は、エレーヌに、優しく微笑みかけた。
「…必ず、みんな一緒に、未来へ帰る…!」
「…プチも、行くぞ…!」
翔は、片手で、まだ少し動作が不安定なプチを抱え上げた。
「…ピィ…」(うん!)
プチも、翔の言葉に、小さく頷いた。
「…僕も、行くわ…」
エレーヌが、決意を込めて言った。
「…あなた達だけを、危険な場所に、行かせるわけにはいかないわ…」
「…エレーヌ…」
翔は、エレーヌの言葉に、驚いた表情を浮かべた。
「…それに、私の歌が、きっと、役に立つはずよ…」
エレーヌは、優しく微笑んだ。
「…ありがとう、エレーヌ…」
翔は、エレーヌに、感謝の言葉を述べた。
「…よし、準備はいいか…?」
翔は、マックス、アヤ、エレーヌ、そしてプチに、声をかけた。
「…ええ、いつでも…」
アヤは、少し緊張した面持ちで、答えた。
「…私も、準備完了です…」
マックスは、静かに、しかし、決意を込めて言った。
「…ピィ…!」(準備OK!)
プチも、元気よく鳴いた。
「…よし、行こう…!」
翔は、力強く頷いた。
「…マックス、頼む…!」
翔が、マックスに、合図を送った。
「…はい…!」
マックスは、小さく頷き、目を閉じた。
そして、彼の体から、淡い緑色の光が放たれ始めた。
「…これは…!?」
ケンタが、驚きの声を上げた。
「…マックスが、ゲートを開こうとしている…!」
リョウが、目を見開き、言った。
マックスを中心に、空間が、徐々に歪み始める。
そして、次の瞬間、彼の目の前に、時空の裂け目…白亜紀へと繋がる、ゲートが出現した。
「…さあ、行きましょう…!」
マックスが、目を開け、翔たちに、声をかけた。
「…ああ…!」
翔は、力強く頷いた。
「…アヤ、エレーヌ、プチ、行くぞ…!」
「…ええ…!」
「…ピィ…!」
アヤ、エレーヌ、プチも、決意を込めて、頷いた。
翔、アヤ、マックス、エレーヌ、そしてプチは、ゲートに向かって、歩き出した。
「…翔、アヤ、マックス、エレーヌ、プチ…未来を、頼んだぞ…!」
リョウが、最後に、力強く言った。
「…ああ、任せてくれ…!」
翔は、リョウの言葉に、力強く答えた。
「…必ず、未来を救ってみせる…!」
そして、五人は、光り輝くゲートの中へと、吸い込まれていった。
「…本当に、大丈夫なのか…?」
ケンタが、心配そうに、リョウに問いかけた。
「…わからない…」
リョウは、首を横に振った。
「…だが、今は、翔たちを信じるしかない…」
「…彼らは、必ず、未来を救ってくれる…」
「…ああ、そうだな…」
リョウは、力強く頷いた。
「…さあ、俺たちも、やれることをやろう…」
リョウは、仲間たちに、声をかけた。
「…未来のために…!」
「「「…おお…!」」」
レジスタンスのメンバーたちは、力強く拳を突き上げた。
一方、白亜紀へとタイムトラベルした、翔、アヤ、マックス、エレーヌ、プチは、時空の渦に、飲み込まれていた。
そして、彼らが、次に目を開けた時、そこは、以前訪れた白亜紀とは、異なる世界が広がっていたのだった…。