未知なる力
場所は、レジスタンスのアジト内、研究ラボ。壁一面には、様々な化学式や、古代植物のスケッチ、そして、マックスの内部構造図などが貼られている。その雑然とした空間は、彼らが、どれだけ熱心に、研究に取り組んでいるかを、物語っていた。部屋の中央には、大型の実験台が設置され、その上には、以前採取もしていた古代植物のサンプル(化石化している)が置かれている。そのサンプルは、特殊な容器に入れられ、厳重に保管されていた。
翔、アヤ、マックスは、数日前から、この研究ラボに籠り、古代植物の力について、徹底的な研究を行っていた。
「…これが、マックスが、以前採取した、古代植物の化石ね…」
アヤは、実験台の上に置かれた、古代植物のサンプルを、じっと見つめながら言った。その声には、科学者としての、好奇心が、滲んでいた。その植物は、すでに化石化しているものの、微かに緑色の光を放っているように見える。その神秘的な光は、見る者を、太古の世界へと誘うかのようだった。
「…ええ。この植物には、未知のエネルギーが、秘められている可能性があります…」
マックスが、静かに答えた。彼の青い瞳は、古代植物の化石を、詳細にスキャンしている。
「…このエネルギーが、クロノスの技術に、干渉できる可能性があるのよね…」
アヤは、期待と不安が入り混じった表情で、呟いた。
「…はい。しかし、そのためには、このエネルギーの性質を、正確に理解し、制御下に置く必要があります…」
マックスは、冷静に答えた。
「…翔、あなたも、手伝ってくれる…?」
アヤは、翔に、助けを求めた。その声には、彼への、信頼が込められていた。
「…ああ、もちろん…!」
翔は、力強く頷き、アヤの隣に立った。
「…何から始めればいい…?」
「…そうね…まずは、このサンプルの、詳細な分析から始めましょう…」
アヤは、そう言うと、顕微鏡や分光器などの、様々な分析機器を、手際よく準備し始めた。
「…マックス、あなたには、私の作業を、サポートしてもらいながら、並行して、あなた自身の内部データの、分析も進めてほしいの…」
アヤは、マックスに、指示を出した。
「…古代植物に触れて以来、あなたの中で、何らかの変化が起きているのは、間違いないわ…」
「…はい、その通りです…」
マックスは、静かに頷いた。
「…エネルギー効率の向上、未知のエネルギーの感知、回復力の向上…」
マックスは、自分の胸に手を当てながら、言った。
「…これらは、すべて、古代植物の影響によるものと、考えられます…」
「…その変化を、詳しく調べることで、古代植物の力の、謎を解く、手がかりが掴めるかもしれない…」
アヤは、期待を込めて、言った。
「…ええ、その可能性は十分にあります…」
マックスは、力強く答えた。
「…よし、早速、始めよう…!」
アヤの合図で、翔たちは、古代植物の研究を開始した。
翔は、アヤの指示に従い、様々な実験器具を使い、古代植物の化石を、詳しく調べていった。
アヤは、顕微鏡を覗き込みながら、古代植物の細胞構造を、観察していた。
マックスは、目を閉じ、自身の内部センサーと、古代植物のエネルギー波形を、照合しながら、詳細なデータを収集していた。その様子は、まるで、真理の探究に、全てを捧げる、科学者たちのようだった。
研究室には、機械の作動音と、翔たちが作業する音だけが、静かに響いていた。
長い時間が経過した。
しかし、なかなか、決定的な手掛かりは、見つからなかった。
「…くそっ…!どうして、何も、わからないんだ…!」
翔は、苛立ちを隠せずに、声を荒げた。
「…落ち着いて、翔…」
アヤが、翔の肩に、そっと手を置いた。
「…きっと、何か、見落としていることが、あるはずよ…」
「…そうだな…」
翔は、深く息を吸い込み、気持ちを落ち着かせた。
「…もう一度、最初から、考えてみよう…」
翔は、自分自身に言い聞かせるように、呟いた。その表情は、真剣そのものだった。
「…古代植物…マックス…アヤ…白亜紀…」
翔は、これまでの出来事を、一つずつ、思い返していった。
そして、ふと、あることに気づいた。
「…そうだ…!アヤが、言ってたじゃないか…!」
翔は、突然、叫んだ。
「…この植物、何かに似てるって…!」
「…え…?」
アヤは、翔の言葉に、驚いた表情を浮かべた。その瞳には、希望の光が、宿ったように見えた。
「…アヤ、君は、この植物と、似たようなものを、見たことが、あるんじゃないのか…?」
翔は、アヤに、問いかけた。
「…それは…」
アヤは、記憶を探るように、目を閉じた。
「…そういえば…昔、どこかで…」
アヤは、何かを思い出しそうになり、しかし、すぐに、頭を振った。
「…ダメ…どうしても、思い出せない…」
「…アヤ…」
翔は、アヤの様子を見て、心配そうに、声をかけた。
「…きっと、君の記憶の中に、すべての謎を解く、鍵があるはずだ…」
「…私の、記憶…」
アヤは、自分の頭に手を当て、もう一度、記憶を辿ろうとした。アヤは、目を閉じ、過去の記憶を、必死に、手繰り寄せようとした。しかし、その記憶は、まるで、霞のように、掴みどころがなかった。
その時、アヤの脳裏に、一瞬、何かの光景が、フラッシュバックのように、蘇った。
「…!?」
アヤは、目を見開き、息を呑んだ。
「…どうしたの、アヤ…!?」
翔が、アヤの変化に気づき、問いかけた。その声には、強い期待が、込められていた。
「…今、何か…見えたような…」
アヤは、混乱した様子で、言った。
「…何が、見えたんだ…!?」
翔は、さらに問いかけた。
「…わからない…はっきりとは…でも…恐竜たちと、巨大な…植物…?それと…誰か、知らない人の顔…」
「…恐竜と、巨大な植物…そして、人…?」
翔は、アヤの言葉を、反芻するように呟いた。その言葉は、まるで、失われた記憶の、断片を、繋ぎ合わせようとしているかのようだった。
「…マックス、何か、わかるか…?」
翔は、マックスに問いかけた。
「…アヤさんの見た光景…おそらく、彼女の、失われた記憶の、断片でしょう…」
マックスは、静かに言った。
「…そして、彼女の記憶喪失と、『古代植物の力』には、何らかの、関連性が、あると思われます…」
「…やっぱり、そうか…」
翔は、マックスの推測に、確信を得た。
「…アヤ、君の記憶が、戻れば、この『古代植物』の謎も、解けるかもしれない…」
「…私の、記憶…」
アヤは、自分の頭に手を当て、もう一度、記憶を辿ろうとした。その言葉は、彼女自身に、言い聞かせているかのようだった。
「…でも、どうやって…?」
「…今は、まだ、わからない…」
翔は、正直に答えた。
「…でも、必ず、君の記憶を、取り戻す方法を、見つけ出す…」
「…翔…」
アヤは、翔の目を見つめ、ゆっくりと頷いた。
「…ええ、私も、頑張るわ…」
アヤは、決意を込めて、言った。その言葉は、二人にとっての、新たな約束となった。
「…ありがとう、アヤ…」
翔は、アヤに、感謝の言葉を述べた。
「…さあ、研究を続けよう…」
翔は、仲間たちに、声をかけた。
「…まだ、謎は、山積みだ。でも、きっと、真実に、たどり着けるはず…!」
翔の言葉に、アヤとマックスは、力強く頷いた。その背中には、未来への希望と、真実への、強い意志が、感じられた。
三人は、再び、古代植物の研究に、没頭していった。
未知なる力への、探求。
そして、失われた記憶への、旅路。
すべては、未来を救うために。