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母の影を追って


場所は、レジスタンスのアジト、作戦会議室。窓の外は、薄暗い夜明けを迎え、未来都市のシルエットがぼんやりと浮かび上がっている。その光景は、希望と不安が入り混じる、今の彼らの心情を、表しているかのようだった。部屋の中央に置かれたテーブルには、ホログラムプロジェクターが設置され、白亜紀の風景を映し出していた。それは、これから彼らが向かう、未知の世界の光景だった。


「母さんが…クロノスと…」


翔は、力なく呟き、俯いた。その手には、母親が大切にしていた、あのペンダントが握られている。そのペンダントは、まるで今の翔の心情を表すかのように、鈍い光を放っていた。


「信じたくない…何かの間違いであってほしい…」


「翔…」


エレーヌが、心配そうに翔に声をかけた。彼女の優しくも力強い歌声は、今は、沈黙の中に溶け込んでいる。その静けさは、翔の心の嵐を、物語っているかのようだった。


「…だが、プチの証言を、無視することはできない…」


リョウが、重々しく口を開いた。彼の顔には、長年の戦いで培われた、深い思慮の色が浮かんでいる。


「…真実を確かめる必要がある…」


「…ああ…」


翔は、ゆっくりと顔を上げ、力強く頷いた。


「…母さんが、なぜクロノスに協力しているのか、その理由を…そして、クロノスの真の狙いを、突き止めなければならない…」


翔の瞳には、深い悲しみと、それを乗り越えようとする、強い決意の光が宿っていた。その決意は、仲間たちへの、信頼と、未来への希望によって、さらに強固なものとなっていた。


「…そのためには、まず、お母さんの足取りを追う必要がある…」


アヤが、翔に、優しく語りかけた。彼女の知的な瞳は、この状況を打開するための、手がかりを探し求めている。その瞳には、友を思う、優しさと、必ず真実を突き止めるという、強い意志が込められていた。


「…マックス、何か手掛かりは掴めたか…?」


翔は、マックスに問いかけた。


「…はい」


マックスは、静かに答えた。


「…クロノスの中枢基地から持ち帰ったデータの中に、翔の母親と思われる人物の、行動記録が残されていました…」


「…本当か…!?」


翔は、身を乗り出して、マックスに詰め寄った。


「…ああ。それによると、彼女は、過去の世界に、何度もタイムトラベルしていたことが、確認できます…」


「…過去の世界…?」


翔は、意外な事実に、目を見開いた。


「…はい。そして、その中でも、特に頻繁に訪れていたのが…」


マックスは、そこで言葉を切り、翔の顔を、じっと見つめた。その瞳には、これから告げる事実の、重大さが、込められていた。


「…白亜紀…恐竜たちが生息していた時代です…」


「…白亜紀…!?」


翔は、驚きの声を上げた。


「…まさか…母さんが…!?」


「…なぜ、そんな昔の時代に…?」


アヤも、困惑した表情を浮かべた。


「…理由は、まだわかりません…」


マックスは、首を横に振った。


「…しかし、彼女が、白亜紀に、何らかの目的を持って、行動していたことは、間違いありません…」


「…母さんの目的…」


翔は、固唾を飲んで、マックスの次の言葉を待った。その表情は、真剣そのものだった。その胸中は、母親の真実を、知りたいという、一心でいっぱいだった。


「…そして、もう一つ、重要な発見がありました…」


マックスは、さらに続けた。


「…それは、あの『古代植物』に関するものです…」


「…古代植物…!?」


翔は、以前訪れた、白亜紀で発見した、あの不思議な植物のことを思い出した。その言葉は、翔にとって、過去と未来を繋ぐ、重要な鍵となる予感がした。


「…ええ。我々が、以前、白亜紀で遭遇した、あの植物です…」


マックスは、翔の記憶を辿るように、ゆっくりと言葉を続けた。


「…あの植物には、未知のエネルギーが、秘められている可能性があります…」


「…未知のエネルギー…?」


翔は、マックスの言葉に、俄然、興味を引かれた。その言葉は、翔にとって、未来を救う、希望の光のように、聞こえた。


「…はい。そして、そのエネルギーが、クロノスの『プロジェクト・ニューエデン』を阻止する、鍵となるかもしれないのです…」


「…どういうことだ…?」


リョウが、マックスに問いかけた。その声には、疑念と、一抹の不安が、込められていた。


「…クロノスの技術は、時間軸に干渉することで、その効果を発揮します…」


マックスは、説明を始めた。


「…しかし、あの『古代植物』のエネルギーは、時間軸そのものに、揺らぎを与える性質を持っている可能性があります…」


「…つまり、そのエネルギーを使えば、クロノスの技術を、無効化できるかもしれない、ということか…?」


アヤが、マックスの言葉を、補足するように言った。その声には、科学者としての、強い探究心が、込められていた。


「…はい、その可能性は十分にあります。さらに…」


マックスは、アヤの方を向き、真剣な表情で言った。


「…アヤさん、あなた自身も、その『古代植物』と、深く関わっている可能性があるのです…」


「…私が…!?」


アヤは、驚きの声を上げた。


「…ええ。あなたの記憶、そして、あなたが、なぜ、恐竜博士として、あの時代に存在していたのか…」


マックスは、言葉を選びながら、続けた。


「…その理由が、『古代植物』のエネルギーと、関係している可能性があるのです…」


「…どういうこと…?私には、何も…」


アヤは、混乱した様子で、頭を抱えた。その表情には、失われた記憶への、もどかしさと、真実を知りたいという、強い渇望が、入り混じっていた。


「…今は、まだ、はっきりとはわかりません…」


マックスは、首を横に振った。


「…しかし、白亜紀に行けば、すべての謎が、解き明かされるかもしれません…」


「…白亜紀に…」


翔は、マックスの言葉を、反芻するように呟いた。その言葉は、彼に、新たな決意を、促すものだった。


「…母さんの真実を知るためにも…そして、クロノスの計画を阻止するためにも…」


翔は、ゆっくりと立ち上がった。


「…僕たちは、白亜紀に行く…!」


翔の瞳には、強い決意の光が宿っていた。


「…しかし、そのためには、マックス、君の力が必要だ…」


翔は、マックスを見つめながら、言った。


「…『古代植物』のエネルギーを、君の中に、取り込む必要がある…」


「…ええ、わかっています…」


マックスは、静かに頷いた。


「…しかし、それは、簡単なことではありません。未知のエネルギーを、それも、大量に取り込むのは、非常に危険です…」


「…覚悟の上だ…」


マックスは、決意を込めて、言った。その声は、わずかに震えていたが、同時に、強い意志が、感じられた。


「…未来のため、そして、翔、あなたのために、私は、全力を尽くします…」


マックスの青い瞳は、決意に満ちた、強い光を放っていた。その強い光は、まるで、翔を優しく見守っているかのようだった。


「…マックス…」


翔は、マックスの覚悟に、胸を打たれた。


「…ありがとう…」


翔は、マックスに、心から感謝した。


「…よし、みんな、準備をしよう…!」


翔は、仲間たちに、声をかけた。


「…白亜紀に行くぞ…!」


「…ああ…!」


仲間たちは、力強く頷いた。


「…必ず、未来を救う…!」


翔は、固く決意を胸に、白亜紀への、新たな旅立ちの準備を始めた。



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