暴かれた真実
場所は、レジスタンスのアジト、作戦会議室。先ほどの話し合いから、少し時間が経ったことが伺える。しかし、メンバーたちの表情には、先ほどまでの決意は失われておらず、決意を新たに、次の作戦について話し合おうとしていた。テーブルの上には、解析途中のデータや、資料が散乱している。それらは、彼らが、どれだけ真剣に、この戦いに臨んでいるかを、物語っていた。翔、リョウ、ケンタ、エレーヌは、固唾を飲んで、アヤとマックスの報告を待っていた。部屋の隅の簡易ベッドでは、プチがまだ静かに眠っている。その小さな体は、まだ痛々しい傷跡を、いくつも残していた。その寝顔は、まるで、この世界の、争いや、苦しみとは、無縁であるかのようだった。
「解析…完了しました…」
マックスが、静かに、しかし、はっきりとした口調で言った。彼の青い瞳は、いつになく真剣な光を帯びている。その声は、これから告げられる事実の、重大さを物語っていた。その一言が、張り詰めた空気を、一瞬にして、引き裂いた。
「これが、クロノスの『プロジェクト・ニューエデン』の全貌です…」
アヤが、ホログラムプロジェクターを起動すると、部屋の中央に、地球の映像が映し出された。その青く美しい星の姿は、しかし、これから語られる、恐ろしい計画によって、大きく変貌を遂げようとしていた。その映像は、彼らの希望を打ち砕く、絶望的な未来を示していた。
「クロノスは、環境制御装置を使って、地球環境を、人工的に操作しようとしています…」
アヤが、ホログラム映像を指差しながら、説明を始めた。
「しかし、それは、表向きの目的…真の狙いは、別にあります…」
アヤは、そこで言葉を切り、深刻な表情を浮かべた。その口調は、これから語られる、恐ろしい真実を、予感させた。
「彼らは、装置から特殊な粒子を散布し、その粒子を吸い込んだ人間の脳内に埋め込まれたマイクロチップを操作…全世界の人々を、洗脳し、完全な管理下に置こうとしているのです…」
「何だって…!?」
リョウは、驚愕の声を上げた。
「そんげなことが、本当に可能なのか…!?」
ケンタも、信じられないといった表情で、アヤに問いかけた。
「ええ…。クロノスは、それを可能にする技術を、既に確立しているわ…」
アヤは、重苦しい口調で答えた。
「そして、これは、その技術の応用例…」
アヤは、プロジェクターを操作し、別の映像を映し出した。その声には、かすかな、嫌悪感が混じっていた。その映像は、彼らにとって、見るに堪えない、忌まわしいものだった。
そこには、クロノスに支配された未来都市の様子が映し出されていた。
人々は、一見、平和に暮らしているように見える。しかし、その瞳には、生気がなく、まるで、操り人形のように、クロノスの指示に従って行動していた。その光景は、自由を奪われた、人間の尊厳の、蹂躙そのものだった。彼らの姿は、人間が、人間らしさを失った、未来の、暗い一面を、映し出していた。
「これは…!?」
翔は、映像を見て、愕然とした。
「これが、クロノスの望む、未来の姿…」
エレーヌが、震える声で言った。その声には、深い悲しみと、絶望の色が、滲んでいた。
「人々から、自由意志を奪い、完全に支配する…。それが、『プロジェクト・ニューエデン』の、真の目的なのよ…」
アヤが、悔しそうに言った。
「許せない…!こんなことが、絶対に許されていいはずがない…!」
翔は、拳を強く握りしめ、怒りを露わにした。
「しかし、どうやって、そんなことが…」
リョウは、疑問を投げかけた。
「彼らは、何のために、人々を洗脳し、支配しようとしているんだ…?」
「おそらく…指導者の、歪んだ理想を実現するためでしょう…」
マックスが、静かに言った。
「奴は、自分の理想とする世界を、力ずくで創り上げようとしているのです…」
その声には、怒りと、侮蔑の感情が、込められていた。
「自分の理想、だと…?」
翔は、クロノスの指導者の言葉を、思い出した。
「…我々の理想の世界を創るのだ…」
「奴は、自分こそが、世界の救世主だと、本気で信じているのかもしれない…」
リョウは、苦々しい表情で言った。
「だが、そんなことは、絶対に認められない…!」
翔は、強い決意を込めて、言った。
「僕たちは、必ず、クロノスの野望を阻止する…!」
「ああ、その通りだ…!」
リョウも、力強く頷いた。
その時、部屋の隅で、微かな物音がした。
「…ん…」
プチが、目を覚ましたのだ。
「プチ…!気がついたのか…!」
翔は、プチに駆け寄り、その小さな体を抱き上げた。その瞬間、翔の胸に、安堵感が広がった。
「…翔…ここは…?ピ」
プチは、まだ、ぼんやりとした様子で、周囲を見回した。
「大丈夫だ、プチ。ここは、レジスタンスのアジトだ…」
翔は、プチに、優しく声をかけた。
「…そうだったのか…ピ」
プチは、少しずつ、記憶を取り戻しているようだった。
「…それで…クロノスの…データは…ピッ?」
プチは、翔に、力なく問いかけた。その声は、掠れて、小さかった。その問いかけは、彼にとって、最も、気がかりなことだった。
「ああ、無事に回収できた。お前の、おかげだ…」
翔は、プチに、感謝の言葉を述べた。その声には、心の底からの、感謝が込められていた。その言葉は、プチにとって、何よりも、嬉しいものだった。
「…それなら…よかった…ピッ」
プチは、安心したように、目を閉じた。その表情には、かすかな笑みが、浮かんでいた。その笑顔は、彼が、精一杯、役目を果たしたことへの、満足感を表していた。
「…でも…僕…見たんだ…ピッ」
プチは、再び、目を開け、言った。
「データ保管庫で…見たんだ…ピッ」
「何を…見たんだ…?プチ…」
翔は、プチの言葉に、真剣な表情で聞き返した。
「…クロノスの…指導者…と…」
プチは、途切れ途切れに、言葉を紡いだ。
「…一緒にいた…翔の…お母さん…みたい…な…人…ピッ」
「何だって…!?」
翔は、プチの言葉に、衝撃を受けた。
「お母さんが…クロノスの指導者と…!?」
「…ああ…二人…一緒に…話してた…ピッ」
プチは、力なく頷いた。その光景は、彼にとって、悪夢以外の、何物でもなかった。その言葉は、まるで、翔にとって、青天の霹靂だった。
「そんな…馬鹿な…」
翔は、信じられないといった様子で、首を振った。
「一体、どういうことなんだ…?」
「…わからない…ピ」
プチは、それだけ言うと、再び、意識を失ってしまった。
「プチ…!しっかりしろ…!」
翔は、プチを、必死に揺り動かしたが、反応はなかった。
「…アヤ!プチを…!」
翔は、アヤに、助けを求めた。
「ええ…!すぐに、手当てを…!」
アヤは、医療キットを取り出し、プチの治療を始めた。その手つきは、素早く、そして、正確だった。
「…お母さんが…クロノスと…」
翔は、呆然と、呟いた。
「…信じられない…何かの、間違いであってほしい…」
翔は、その場に、膝から崩れ落ちた。
「翔…」
エレーヌが、心配そうに、翔に声をかけた。
「…今は、何を信じていいのか、わからない…」
翔は、力なく呟いた。
「…でも…確かめなければ…」
翔は、ゆっくりと顔を上げ、決意を込めて言った。
「…母さんの真実を…」
その言葉は、自分自身に、言い聞かせているかのようだった。翔の瞳には、深い悲しみと、そして、真実を求める、強い意志の光が宿っていた。
「…ああ、その通りだ…」
リョウが、翔の肩に、手を置き、言った。
「…そのためにも、我々は、前に進まなければならない…」
「…ええ。クロノスの計画を阻止し、未来を救うために…」
アヤも、力強く言った。
「…みんな…」
翔は、仲間たちの顔を、一人ずつ見つめた。
「…ありがとう…」
翔は、仲間たちの支えに、心から感謝した。
「…よし、今後の作戦を立て直そう…」
リョウが、メンバーたちに、声をかけた。
「…まずは、翔の母親の足取りを追う必要がある…」
「…マックス、何か、手掛かりは掴めるか…?」
翔は、マックスに問いかけた。
「…はい。クロノスの中枢基地から持ち帰ったデータの中に、彼女に関する情報が、残されている可能性があります…」
マックスは、静かに、しかし、はっきりとした口調で答えた。
「…よし、すぐに解析を始めよう…」
翔は、力強く頷いた。
「…僕も、手伝う…」
「…私も…」
アヤとエレーヌも、翔に続いた。
「…よし、みんな、全力を尽くそう…!」
リョウの言葉に、レジスタンスのメンバーたちは、一斉に頷いた。その瞬間、レジスタンスたちの、決意は、