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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
第一章 目覚めたテディベア
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追跡

「コッチダ!」


マックスに導かれ、翔は江戸の街を必死に駆け抜けた。路地裏をくぐり抜け、人混みに紛れ込み、追っ手の目を欺く。心臓がバクバクと高鳴り、息が切れて足がもつれそうになる。


「ショウ、ガンバッテ! モウスコシデ、カレラヲ、フリキレル!」


マックスが、肩越しに後ろを確認しながら叫ぶ。しかし、クロノスの追っ手は、執拗に二人を追いかけてくる。曲がり角を一つ曲がるたびに、黒い影が迫ってくるように感じる。


「くそっ…、しつこいなぁ…!」


翔は、息を切らしながら、前だけを見て走り続けた。

曲がり角を曲がると、そこは行き止まりだった。


「しまった…!」


翔は、絶望的な気持ちになった。目の前には、高い塀が立ちはだかり、逃げ道はどこにもない。捕まってしまう…。不安と恐怖が、翔の心を締め付ける。


「どうしよう、マックス…?」


「オチツイテ、ショウ。ココカラ、カワラニ、トビウツロウ。」

マックスは、冷静に言った。


「え…? でも、こんなに高い…!」


二人がいたのは、二階建ての建物の裏だった。下を見ると、地面までかなりの高さがある。飛び降りたら、大怪我をしてしまうかもしれない。


「シンパイシナイデ。ワタシニ、マカセテ。」


マックスは、翔の体を抱きかかえると、飛び降りた。


「うわああああ!」


翔は、思わず叫んだ。風を切る音が耳元で轟き、地面がみるみる近づいてくる。目をぎゅっとつぶる翔。しかし、次の瞬間、予想していた衝撃はなかった。マックスは、空中で不思議な力を発動させ、二人をゆっくりと地面に降ろした。まるで、羽根のように、ふわりと着地したのだ。


「ダイジョウブカ、ショウ?」


「うん…、なんとか…。」


翔は、まだ心臓がドキドキしていた。しかし、マックスの不思議な力に、改めて驚かされた。


「さあ、行こう!」


二人は、再び走り出した。

しばらく走ると、人通りの少ない裏路地に出た。道の両側には、長屋がずらりと並んでおり、人の気配はほとんどない。ひっそりと静まり返った路地裏は、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。


「ココデ、カレラヲ、マチブセシヨウ。」


マックスは、路地裏の影に隠れた。


「え…? マチブセ…? どうやって…?」


翔が尋ねると、マックスは、小さな体から光を放ち始めた。


「コレデ、カレラヲ、ゲンカク、サセル。」


マックスの光は、路地裏全体を照らし出し、まるで幻のような空間を作り出した。壁や地面がゆらゆらと揺らめき、現実とは思えない光景が広がっている。

追っ手たちが路地裏に差しかかると、目の前に広がる光景に、彼らは立ち止まった。


「なんだ、これは…?」


「幻…?」


男たちは、困惑している。目の前の光景が信じられず、足を踏み入れるのをためらっているようだ。

その隙に、翔とマックスは、路地裏を抜け出し、再び走り出した。


「やつらを、ふりきったぞ!」


翔は、喜びの声を上げた。


「ヨカッタ…。」

マックスも、安堵の表情を見せた。

二人は、クロノスの追っ手を、間一髪で振り切ることに成功した。そして、たどり着いたのは、朱塗りの鳥居がいくつも並ぶ、静かな神社だった。


「ココなら、シバラク、アンゼンダロウ。」


マックスは、境内を見回し、そう言った。


「そうだね…。」


翔も、ほっと胸を撫で下ろした。境内は静かで、鳥のさえずりだけが聞こえてくる。


「それにしても、クロノスって、一体何者なんだろう…?」


翔は、不安そうにマックスに尋ねた。


「詳しいことは、まだわからない。でも、おそらく、未来で大きな力を持っている組織だろう。歴史を改変することで、自分たちに都合の良い未来を作ろうとしているのかもしれない。」


マックスは、真剣な表情で答えた。


「そんな…。」


翔は、クロノスの恐ろしさを改めて実感した。


「でも、僕たちは、彼らに負けるわけにはいかない。未来を守るために、僕にできることをやらなきゃ。」


翔は、決意を新たにした。


「そうだね、ショウ。僕たちも、もっとクロノスのことを調べないと。」


マックスも、真剣な表情で言った。

二人は、神社の境内で、今後のことを話し合った。クロノスとは何者なのか、なぜ自分たちを狙うのか、そして、未来を変えるためにはどうすればいいのか。

しばらくすると、翔は、神社の本殿に目が留まった。


「マックス、あそこに行ってみよう。」


翔は、本殿に向かって歩き出した。


「ショウ、ココハ、シンセイナバショダ。」


マックスは、翔に注意した。


「わかってるよ。」


翔は、静かに本殿に近づき、手を合わせた。

(どうか、未来が救われますように。)

翔は、心の中で祈った。



一方、ツユは、クロノスの男たちを相手に、激しい戦いを繰り広げていた。


「この女、なかなかやるな…!」


男たちは、ツユの剣術に手を焼いていた。次々と繰り出される鋭い攻撃に、彼らは防戦一方だ。

ツユは、冷静に刀を振るい、次々と男たちを倒していく。しかし、相手は数で勝る。次第に、ツユは追い詰められていく。


「くそっ…!」


ツユは、歯を食いしばった。額からは、汗が流れ落ちている。疲労困憊ながらも、ツユの闘志は消えない。

その時、ツユの脳裏に、翔の姿が浮かんだ。稽古に励む翔の真剣な眼差し、 笑顔…。


「翔、君を守る!」


ツユは、最後の力を振り絞り反撃に出た。

一瞬の隙を突いて、ツユは、男たちのリーダーに斬りかかった。リーダーは、ツユの攻撃を避けきれず、胸を深く斬られた。


「ぐああああ!」


リーダーは、悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。

残りの男たちは、リーダーが倒れたのを見て、戦意を喪失し、逃げていった。


「ハア…、ハア…。」


ツユは、息を整えながら、刀を鞘に収めた。体は傷だらけで、痛みと疲労が襲ってくる。それでも、ツユの心は、翔の無事を願う気持ちで満たされていた。


「翔…」


ツユは、翔のことが心配でたまらなかった。

(あの時、広場で翔を見かけた時、なぜか懐かしい気持ちになった。まるで、昔、どこかで出会ったことがあるような…。幼い頃の弟に、どこか似ていたのかもしれない。)


ツユは、翔と出会った日のことを思い出していた。

(剣術を教えてほしいと、目を輝かせて頼み込んできた翔。最初は、子供心からの好奇心だろうと思っていた。でも、翔は違った。彼は、真剣に強くなろうとしていた。稽古にも、いつも一生懸命だった。)


ツユは、翔に剣術を教えた日々を懐かしく思い出す。

(翔は、素直で、優しい子だ。そして、強い心を持っている。きっと、どんな困難にも立ち向かっていけるだろう。)


ツユは、翔の成長を心から信じていた。

(どうか、無事でいて…。)


ツユは、静かに祈った。

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