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地下からの反撃


レジスタンスのアジトを脱出した翔たちは、地下通路を伝って、クロノスの支配が色濃い未来都市の中心部へと向かっていた。


「ここから先は、クロノスの警戒がさらに厳しくなる。気をつけて進もう」


マックスが、先頭を歩きながら、翔たちに注意を促した。彼の青い瞳は、暗闇の中でも周囲の状況を正確に捉え、危険を察知するセンサーの役割を果たしている。いつもの冷静な口調だった。


「プチ、周囲の様子はどうだ?」


アヤが、プチに尋ねた。


「ピッ敵影なし!でも、油断は禁物ピッ!」


プチは、背中のアンテナを器用に動かしながら、周囲の情報を収集している。彼の小型ボディと優れた機動力は、偵察任務に最適だった。


「エレーヌ、何かあったら、すぐに歌で知らせてくれ」


翔は、エレーヌに声をかけた。


「ええ、任せて」


エレーヌは、静かに頷いた。彼女の歌声は、敵を混乱させ、味方を鼓舞する、強力な武器となる。

一行は、慎重に歩みを進めていった。地下通路は、まるで迷路のように入り組んでおり、方向感覚を失いそうになる。暗闇の中、彼らの足音だけが、不気味なほどに、反響していた。しかし、マックスの正確なナビゲーションのおかげで、彼らは迷うことなく目的地へと向かうことができた。


「この先を右に曲がると、クロノスの監視ステーションがあるはずです」


マックスが、翔たちに告げた。


「そこを突破できれば、クロノスの情報ネットワークにアクセスできる可能性が高まります」


「よし、そこが最初の目標だな」


翔は、力強く頷いた。その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。


「でも、どうやって突破する?敵に見つからずに、監視ステーションに近づくのは、至難の業だよ」


アヤが、不安げに言った。その声は、わずかに震えていた。


「心配いらない。私に考えがある」


翔は、ニヤリと笑い、懐から小さな装置を取り出した。その表情には、確かな自信が浮かんでいた。それは、マックスが過去の世界で作った、特殊な発信機だった。


「これは、特定の周波数の音波を発信する装置だ。この音波を、クロノスの監視システムに干渉させれば、一時的に、彼らの目を欺くことができるはずだ」


翔は、装置の使い方を説明しながら、アヤとエレーヌに手渡した。


「アヤはこの装置を使って、クロノスの監視システムに音波を送ってくれ。エレーヌはその歌声で、僕たちの接近を援護して欲しい。プチは、敵の動きを察知したら、すぐに知らせてくれ」


「わかったわ」


「任せて!」


「ピッ了解」


アヤ、プチ、エレーヌは、それぞれ、自分の役割を確認し、力強く頷いた。


「マックス、君は僕と一緒に、監視ステーションに突入する。準備はいいか?」


「もちろんです、翔」


マックスは、力強く答えた。その青い瞳が、決意を込めて、静かに輝いた。


「よし、作戦開始だ!」


翔の合図で、一行は、慎重に監視ステーションへと近づいていった。

アヤは、翔から受け取った装置を操作し、特定の周波数の音波をクロノスの監視システムに向けて発信した。その瞬間、監視システムの赤いランプが、不規則に点滅し始めた。すると、監視カメラの映像が乱れ、警報装置が誤作動を起こし始めた。それは、まるで、クロノスの鉄壁の守りが、音もなく崩れ去っていくかのようだった。


「今よ!エレーヌ!」


アヤが、エレーヌに合図を送った。

エレーヌは、深く息を吸い込み、力強く歌い始めた。彼女の歌声は、地下通路に響き渡り、クロノスの兵士たちの注意を引きつけた。その歌声は、まるで、傷ついた世界を癒すように、優しく、そして力強く、響き渡った。


「何だ、あの歌声は…?」


「どこから聞こえてくるんだ…?」


クロノスの兵士たちは、突然聞こえてきた歌声に、戸惑い、周囲を見回した。彼らの目には、明らかな動揺の色が浮かんでいた。


「今のうちに、突入するぞ!」


翔は、マックスと共に、監視ステーションへと駆け込んだ。その表情には、一瞬の迷いもなかった。

ステーションの中には、数名のクロノスの兵士がいたが、アヤの装置とエレーヌの歌声によって、混乱状態に陥っていた。


「邪魔だ!」


翔は、兵士たちを素早く倒し、マックスと共に、ステーションの奥へと進んだ。その動きは、まるで、鍛え抜かれた戦士のように、無駄がなかった。


「マックス、情報ネットワークへのアクセスポイントはどこだ?」


翔は、マックスに尋ねた。その声は、焦燥感を帯びていた。


「あそこです!」


マックスは、部屋の隅にある、大きなコンピューターを指差した。

翔は、コンピューターに駆け寄り、キーボードを叩き始めた。指先から伝わる、冷たい感触が、彼の焦りを増幅させた。


「急いで、翔!クロノスに見つかるのも、時間の問題よ!」


アヤが、心配そうに言った。


「わかってる…!」


翔は、必死にキーボードを操作し、クロノスの情報ネットワークへのアクセスを試みた。


「マックス、サポートしてくれ!」


「お任せください!」


マックスは、翔の隣に立ち、コンピューターの画面を覗き込んだ。


「このネットワークは、非常に複雑なセキュリティシステムで保護されています…しかし、私に任せてください…!」


マックスは、目を閉じ、集中力を高めた。彼の青い瞳が、データ処理のスピードに合わせて、高速で点滅している。それは、まるで、彼の頭脳が、フル回転していることを、示しているかのようだった。


「よし…アクセス成功だ…!」


しばらくして、マックスが、目を開け、言った。その声には、安堵と、達成感が込められていた。


「やったぞ、マックス!」


翔は、マックスと顔を見合わせ、喜びを分かち合った。二人の間には、強い信頼関係が築かれていることが、その表情から見て取れた。


「急いで、情報をダウンロードするんだ!」


翔は、再びキーボードに向かい、クロノスの情報ネットワークから、様々なデータをダウンロードし始めた。


「『プロジェクト・ニューエデン』の全貌…環境制御装置の設計図…クロノスの幹部リスト…これで、奴らの計画を阻止できるかもしれない…!」


翔は、ダウンロードしたデータを、一つずつ確認しながら、呟いた。その表情は、真剣そのものだった。その声には、希望と、決意が込められていた。


「時間がない、急ごう!」


アヤが、再び、警告を発した。その声には、切迫感が込められていた。


「わかった、すぐ行く!」


翔は、最後のデータをダウンロードし終えると、コンピューターから離れた。


「よし、脱出するぞ!」


翔たちは、監視ステーションを後にし、再び地下通路へと戻った。


「プチ、出口までのルートを案内してくれ!」


翔は、プチに指示を出した。


「ピッ!任せて!こっちピッ!」


プチは、先頭に立って、出口へと走り出した。

翔たちは、プチの後を追い、地下通路を駆け抜けた。彼らの心臓は、恐怖と興奮で、激しく鼓動していた。

背後からは、クロノスの兵士たちの怒号が聞こえてくる。


「逃がすな!奴らを捕まえろ!」


「早く、早く!」


翔たちは、必死に走り続けた。

そして、ついに、地下通路の出口にたどり着いた。外から差し込む、眩しい光が、彼らを優しく包み込んだ。


「やったぞ!脱出成功だ!」


翔は、大きく息をつきながら、言った。


「ああ、みんな無事でよかった…!」


アヤも、安堵の表情を浮かべた。その瞳には、仲間への深い愛情が込められていた。


「ピッこれも、みんなの協力のおかげピッ!」


プチが、胸を張って言った。その小さな体には、誇らしさが満ち溢れていた。


「ええ、本当に…ありがとう…」


エレーヌは、優しく微笑んだ。その歌声と同じように、穏やかな表情だった。


「さあ、リョウのところへ戻ろう。クロノスの計画について、報告しなければ」


翔は、仲間たちに、そう呼びかけた。

一行は、再び、地下通路へと戻り、リョウたちのアジトへと向かった。



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