暴かれた真実
「『プロジェクト・ニューエデン』…それは、環境制御技術を用いて、地球を人工的な楽園に変えるというものだ。しかし、その裏には、恐るべき真実が隠されている」
リョウは、重々しい口調で語り始めた。翔たちをアジトの奥にある、大きな部屋へと案内した。部屋の中央には、大きなテーブルが置かれ、その周りには、椅子が並べられている。壁には、未来都市の地図や、クロノスのエンブレムが描かれた資料などが貼られていた。それらは、彼らが、どれだけ真剣に、クロノスと戦っているかを物語っていた。その様子は、ここがレジスタンスの作戦会議室であることを示していた。
翔、マックス、アヤ、プチ、エレーヌは、テーブルを囲むように椅子に座った。リョウは、彼らの向かい側に座り、神妙な面持ちで話を続けた。
「環境制御技術自体は、本来、荒廃した地球を再生させるために開発されたものだ。砂漠を緑に変え、汚染された空気を浄化し、自由に天候を操ることさえ可能になる、まさに夢のような技術だ…」
リョウは、そこで言葉を切り、苦々しい表情を浮かべた。その表情には、クロノスへの深い憎しみが刻まれているようだった。
「しかし、クロノスは、その技術を悪用し、人々を支配するための道具に変えてしまった…」
「どういうことだ…?」
翔は、リョウの言葉に、嫌な予感を感じながら、問いかけた。
「『プロジェクト・ニューエデン』の要となる環境制御装置…その中枢システムには、人間の精神に干渉し、思考を操作する機能が組み込まれているんだ」
「思考を操作する…?」
アヤが、信じられないといった表情で、聞き返した。
「ああ。その装置を使えば、人々の意識を自由に操り、クロノスに従順な奴隷に変えることができる。現に、未来都市の住民たちは、クロノスの支配を受け入れ、まるでロボットのように働かされている…」
リョウは、悔しそうに、拳を握りしめた。その拳は、怒りで、小さく震えていた。その光景は、まさに悪夢そのものだった。
「クロノスは、この技術を使って、地球全土を支配下に置き、自分たちの都合の良い世界を創り上げようとしているんだ…」
リョウの言葉に、翔たちは、愕然とした。
「そんなことが、許されていいはずがない…!」
エレーヌが、怒りに声を震わせた。普段は優しい彼女からは、想像もできないほどの、強い怒りだった。
「ああ。だから、俺たちは、命懸けで、奴らと戦っているんだ」
リョウは、決意を込めて、力強く言った。
「しかし、奴らの力は強大だ。最新鋭の兵器、強固なセキュリティシステム、そして、洗脳された市民たち…俺たちだけでは、太刀打ちできない…」
リョウは、悔しそうに、俯いた。その表情には、苦渋の色が浮かんでいた。
「だからこそ、僕たちが来たんです」
翔は、リョウの目を見つめながら、言った。
「僕たちは、過去を変え、未来を救うために、ここに来たんです。クロノスの野望を阻止するために、一緒に戦わせてください」
翔の言葉に、リョウは、顔を上げ、翔の目を、真っ直ぐに見つめた。その瞳には、一瞬、驚きの色が浮かんだ。
「翔…ありがとう…」
リョウは、静かに、しかし、力強く言った。その声には、翔への信頼と、未来への希望が込められていた。
「お前たちの力があれば、きっと、クロノスを倒せるはずだ…!」
リョウの瞳には、希望の光が灯っていた。
「これから、一緒に戦っていこう…!未来のために…!」
リョウは、翔に手を差し出した。
「はい…!未来のために…!」
翔は、リョウの手を、力強く握り返した。
その瞬間、二人の間には、固い絆が生まれた。それは、言葉を超えた、魂の繋がりだった。
「しかし、具体的な手がかりが、まだ掴めていない…」
リョウが、難しい表情で言った。
「クロノスの計画の全貌、そして、環境制御装置の場所…それらを突き止めなければ…」
「それなら、僕たちに考えがあります」
マックスが、静かに、しかし、はっきりとした口調で言った。
「過去の歴史を調べれば、クロノスの計画のヒントが見つかるかもしれません」
「過去の歴史…?」
リョウは、マックスの言葉に、首を傾げた。その意図が、すぐには理解できない様子だった。
「はい。クロノスは、過去を改変することで、未来を自分たちの都合の良いように作り変えようとしています。つまり、過去の歴史を調べれば、彼らが何を変えようとしたのか、そして、彼らの真の目的は何なのかが、わかるはずです」
マックスは、リョウに、詳しく説明した。
「なるほど…確かに、一理あるな…」
リョウは、納得したように頷いた。その表情には、わずかに希望の光が灯ったように見えた。
「しかし、どうやって過去の歴史を調べる?クロノスは、情報統制を徹底している。過去に関する資料は、ほとんど残されていないはずだ」
リョウは、現実的な問題点を指摘した。
「それなら、私に任せて」
アヤが、自信ありげに、胸を張って言った。
「私は、恐竜学者よ。古文書の解読も、得意分野なの」
アヤは、誇らしげに微笑んだ。
「本当か?それは、頼もしいな!」
リョウは、アヤの言葉に、表情を明るくした。その声には、喜びと、期待が込められていた。
「ピッ!でも、どうやって、そんな昔の資料を手に入れるピッ?」
プチが、首をかしげながら、尋ねた。その表情には、不安と好奇心が入り混じっていた。
「心配いらない。このアジトには、クロノスが廃棄した、古い資料が、いくつか保管されている」
リョウは、そう言うと、部屋の隅にある、大きな棚を指差した。その棚は、古びて埃をかぶっていたが、確かに、貴重な資料が眠っているように見えた。
「あの棚に、過去の歴史に関する資料が、いくつか残っているはずだ。アヤ、早速、調べてみてくれないか?」
「わかったわ!」
アヤは、力強く頷き、棚へと向かった。その足取りは、希望に満ちていた。
「俺たちも手伝うぜ」「僕も!」
ケンタと、他の数名のレジスタンスメンバーが、アヤに続いた。彼らの表情は明るく、やる気に満ち溢れていた。
「ありがとう、助かる…!」
リョウは、彼らに、感謝の言葉を述べた。その声には、仲間たちへの、深い信頼が込められていた。
「翔、お前は、どうする?」
リョウは、翔に問いかけた。その表情は、翔の考えを、見透かそうとしているようだった。
「僕は、マックスと一緒に、クロノスの計画について、もう少し詳しく調べてみたい」
翔は、リョウに、そう答えた。その表情は、真剣そのものだった。
「わかった。何か、わかったら、すぐに教えてくれ」
「ああ、もちろん」
翔は、力強く頷いた。二人の間には、強い信頼関係が築かれつつあった。
「エレーヌ、君は…?」
リョウが、エレーヌに視線を向けると、彼女は静かに言った。
「私は、歌でみんなを励ましたい…この歌が、みんなの希望となるように…」
エレーヌは、そう言うと、静かに目を閉じ、歌い始めた。その姿は、まるで、祈りを捧げる巫女のようだった。
彼女の透き通るような歌声が、部屋中に響き渡った。その歌声は、優しく、そして力強く、聞く者の心を癒し、勇気づけてくれるようだった。その歌声は、この空間にいる全員の心を、一つに繋いでいるようだった。
翔は、エレーヌの歌声に耳を傾けながら、マックスと共に、クロノスの計画について、考えを巡らせた。
「マックス、何か、手掛かりは掴めそうか?」
翔は、マックスに問いかけた。
「はい。クロノスのデータベースにアクセスし、情報を収集しています」
マックスは、目を閉じ、集中していた。
「『プロジェクト・ニューエデン』…環境制御技術…思考操作…」
マックスは、小さな声で、呟きながら、情報を分析していた。
しばらくして、マックスは、目を開け、翔に言った。
「翔、重要な情報が見つかりました。『プロジェクト・ニューエデン』の鍵となるのは、どうやら、とある古代遺跡のようです」
マックスは、真剣な表情で言った。
「古代遺跡…?」
翔は、マックスの言葉に、首を傾げた。その言葉から、何か、重要な意味を感じ取ったようだった。
「はい。クロノスは、その遺跡に隠された、古代のテクノロジーを利用しようとしているようです」
「古代のテクノロジー…?一体、どんな…?」
翔が、マックスに問いかけようとした、その時だった。
突然、アジト内に、けたたましい警報音が鳴り響いた。
「何事だ!?」
リョウが、叫びながら、立ち上がった。
「クロノスに見つかったか…!」
ケンタが、悔しそうに言った。
「まずい…!ここも、もう長くは持たないぞ…!」
リョウは、深刻な表情で、言った。その声には、焦りと、怒りが込められていた。
「翔!お前たちは、早くここから脱出しろ!」
「で、でも…!」
翔は、リョウたちを置いて、自分たちだけ逃げるわけにはいかなかった。
「いいから、早く行け!これは、命令だ!」
リョウは、翔の肩を掴み、強く言った。その瞳には、仲間を守りたいという、強い意志が宿っていた。
「俺たちは、必ず、後から追いつく…!だから、希望を捨てるな…!」
リョウの目には、強い決意の光が宿っていた。
「…わかった」
翔は、リョウの目を見つめ、力強く頷いた。
「マックス、アヤ、プチ、エレーヌ!脱出するぞ!」
翔は、仲間たちに、声をかけた。
「急いで!時間がないわ!」
アヤが、資料を抱えながら、叫んだ。
「ピッ早く、早く!」
プチが、小さな体で、翔たちを先導する。
「みんな、希望を捨てないで…!」
エレーヌが、歌声で、仲間たちを励ました。
翔たちは、リョウたちに見送られながら、アジトを後にした。




