謎の集団
「ショウ、ちょっとココデ休もう。」
朝から江戸の町を歩き回っていた翔は、さすがに疲れてきた。ツユとの稽古で体は鍛えられてきたものの、慣れない下駄で歩き続けるのは大変だった。
「そうだね、マックス。喉も乾いたし…。」
二人は、道端の茶屋を見つけて、一休みすることにした。冷たいお茶を飲みながら、翔はマックスに尋ねた。
「ねえ、マックス。未来を変えるって、具体的にどうすればいいの?」
「ソレハ、マダ、ワカラナイ。キミノチチ、ショウタロウノ、シジニ、カンケイシテイル、ジダイ、ト、バショニ、タドリツケバ、ナニカ、ワカルカモシレナイ。」
マックスは、少し困ったように答えた。
「お父さんの死…。一体、何が関係しているんだろう…。」
翔は、父の死について思いを巡らせた。父は、なぜタイムマシンの研究をしていたのか。そして、なぜ事故で亡くなってしまったのか。
その時、翔は背筋に冷たいものを感じた。まるで、誰かに見られているような、嫌な感覚だ。
「ショウ、キヲツケテ。アヤシイヤツラガイル。」
マックスが、鋭い声で言った。
「アヤシイヤツラ…? どこ…?」
翔はキョロキョロと周囲を見回したが、特に変わった様子は見られない。
「アソコダ。ワタシニハ、ミエル。」
マックスが指差す方を見ると、黒装束の男たちが数人、人混みに紛れてこちらを観察していた。彼らは、鋭い目つきで翔たちを監視している。その目は、まるで獲物を狙う獣のようだった。
「あれは…、まさか…!」
マックスは、男たちの服装を見て、ある集団を思い出した。
「クロノス…。」
「クロノス…? なんだい、それ?」
翔は、聞き慣れない名前に首を傾げた。
「レキシカイヘンヲ、クワダテル、ナゾノ、シュウダン、ダ。」
マックスは、クロノスについて説明した。
「彼らは、時空を超えて、歴史に介入し、自分たちに都合の良いように過去を改変しようとしているんだ。そして…、ワタシタチノヨウナ、タイムトラベラーヲ、ショウメツシヨウトシテイル。」
「そんな…!」
翔は、クロノスの存在に驚きを隠せない。
「なぜ、僕たちを狙うんだ…?」
「ワタシタチガ、カレラノジャマヲスルカラ、ダ。」
マックスは、真剣な表情で言った。
「クロノスは、歴史が変わってしまうことを恐れている。彼らは、自分たちが築き上げた支配体制が崩れることを恐れているんだ。だから、僕たちのような存在を消そうとしているんだ。」
「でも、僕たちはまだ何もしていないよ…?」
翔は、納得がいかない様子だった。
「ソレハ、カンケイナイ。カレラハ、キケンブンシヲ、ツブスノガ、シゴトナンダ。ワタシタチハ、カレラニトッテ、キケンナソンザイ、トイウコトダ。」
マックスは、クロノスの冷酷さを説明した。
「そんな…!」
翔は、恐怖で体が硬直した。その時、
「翔! 逃げろ!」
聞き覚えのある声がした。振り返ると、ツユが刀を抜き、クロノスの男たちに向かって走り出していた。
「ツユ…さん…?」
翔は、ツユの突然の登場に驚きを隠せない。
「ツユ、キケン、ダ!」
マックスが叫んだ。しかし、ツユは構わず、男たちに斬りかかった。
「邪魔するな!」
男の一人が、ツユに襲いかかった。ツユは、軽やかに身をかわし、刀を振り下ろす。男は、腕を斬られ、悲鳴を上げた。
別の男が、ツユに飛び掛かる。ツユは、冷静に相手の動きを見極め、一瞬の隙を突いて、男の足を斬りつけた。男は、バランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
さらに、ツユは、残りの男たちにも果敢に立ち向かう。彼女の動きは、まるで舞いを踊っているかのように優雅で、それでいて、力強い。刀が空気を切り裂く音が、周囲に響き渡る。
「翔、この隙に!」
ツユは、翔に叫んだ。
「でも…!」
翔は、ツユを置いて逃げることができなかった。
「心配しないで。私は大丈夫!」
ツユは、力強い声で言った。
翔は、マックスに促され、その場を離れた。