マックスの分析
「くそっ……!」
翔は悔しさを噛みしめるように拳を握りしめた。クロノスのメンバーに設計図を奪われたことが、彼のプライドを深く傷つけていた。
「どうすればよかったんだ……?」
翔は自問自答を繰り返した。
「翔、自分を責めないで」
アヤが翔の肩にそっと手を置いた。
「君はよく頑張ったわ」
「ありがとう、アヤ」
翔はアヤの優しさに触れ、少しだけ落ち着きを取り戻した。
「でも、このままではいけない。僕たちは必ずクロノスを倒し、未来を守るんだ!」
その時、マックスが口を開いた。
「翔、アヤ」
「どうしたの?マックス」
翔はマックスに視線を向けた。
「実は、盗まれた設計図について詳しく分析してみたんだ」
マックスは小さな体で真剣な表情を見せた。
「分析……?どうやって?」
アヤが尋ねた。
「僕の体には高性能な分析装置が搭載されているんだ。設計図のデータを解析し、クロノスが何を企んでいるのか調べてみた」
マックスは体の中から小型のプロジェクターを取り出した。プロジェクターは空中にホログラムを映し出す。そこには複雑な図形や記号、そして数式が表示されている。ホログラムは蒸気機関の設計図を立体的に表示し、さらにそれを未来の核融合炉の設計図と重ね合わせて表示している。二つの設計図には驚くほど多くの共通点があることがわかる。特にエネルギーを発生させる部分の構造はほとんど同じである。
「なるほど……これは……」
アヤは感心した様子で言った。
「ワットさんの蒸気機関の技術は、未来の核融合エネルギーにつながるものなんだ」
「未来のエネルギー技術に繋がる重要な情報……?」
翔はマックスの言葉を繰り返した。
「ああ」
マックスは頷いた。
「ワットさんの蒸気機関の技術には、未来のエネルギー技術のヒントが隠されているんだ。クロノスはそのことに気づいている。そして、その情報を利用して未来の技術革新を妨害しようとしているんだ」
「未来の……エネルギー技術……?」
翔は首をかしげた。
「ああ、翔」
マックスは翔に説明した。
「未来では化石燃料に代わる新しいエネルギー源として、核融合エネルギーが実用化されている。核融合エネルギーはクリーンで安全なエネルギーだ。太陽が光り輝くのと同じ原理を利用していて、海水からほぼ無限に取り出せる資源を燃料とするんだ。二酸化炭素を排出しないから地球温暖化対策にもなるし、原子力発電のように放射性廃棄物の問題も少ない。まさに夢のエネルギーと言われているんだ。しかしクロノスはワットさんの蒸気機関の技術を利用して、核融合エネルギーの開発を妨害しようとしているんだ」
「どうしてそんなことを……?」
アヤが疑問を口にした。
マックスは少し間を置いてから答えた。
「クロノスは、技術の独占を企んでいるのかもしれない。未来のエネルギー技術が広く普及すれば、自分たちの影響力が低下することを恐れているんだ。あるいは、歴史を変えること自体が目的で、エネルギー問題を混乱させ、自分たちが支配しやすい世界を作り出そうとしているのかもしれない」
翔はマックスの説明を聞いて愕然とした。
「そんな……」
翔は呟いた。
「クロノスはそこまでして未来を変えようとしているんだ……」
翔の脳裏に、未来で見た荒廃した世界が再び浮かんだ。乾いた大地、枯れ果てた植物、そして飢えに苦しむ人々。
「奴らは僕たちの未来を奪うつもりなんだ!」
翔は怒りと恐怖で体が震えた。
「僕たちは絶対に奴らを止めなければならない!」
「もしクロノスが未来のエネルギー技術を手に入れたら、未来は壊滅的な被害を受けることになるだろう……」
翔は仲間たちの顔を一人一人見つめた。
「僕たちは絶対に奴らを止めなければならないんだ!」
翔の言葉にアヤも真剣な表情で頷いた。
「ええ、翔の言う通りよ。私たちは科学者として未来を守る義務があるんだ!」
「ピッ!ボクも未来を守る!ピッ!」
プチは元気よく言った。
「ええ、プチ」
エレーヌは優しく微笑んだ。
「私たちは未来を信じているわ。そして未来は必ず私たちの手で守ることができると」
翔は仲間たちの顔を一人一人見つめた。
「僕たちは絶対にクロノスを倒す!そして未来を守るんだ!」
翔の言葉に、仲間たちは力強く頷いた。彼らはクロノスの陰謀を阻止し、未来を守るために再び立ち上がるのだった。マックスの分析が、彼らの決意を一層強くしたのだった。