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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
産業革命の光と影
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へ、へ、へ、へっくしょん!


「こっちだ!」


翔は仲間たちを連れ、屋敷の奥へと続く薄暗い廊下を走り抜けた。 背後からはクロノスのメンバーの怒号が聞こえる。 彼らの足音は、獲物を追う獣のように激しく容赦なかった。


「まずい!追いつかれる!」


アヤが息を切らしながら言った。


「ピッ!ボク、もう走れない!ピッ!」


プチはアヤの肩にしがみつき、弱音を吐いた。


「もう少し頑張ろう、プチ。」


エレーヌはプチの頭を優しく撫でた。


「翔、あそこに扉がある!」


マックスが廊下の突き当たりにある扉を指さした。


「あれは?」


翔は扉に目を向けた。


「わからないけど、とりあえずあそこに隠れるしかない!」


翔たちは扉に駆け寄り、中に飛び込んだ。

扉の向こうは小さな部屋だった。 部屋の中央には大きなテーブルが置かれ、その上には地図や書類、いくつかの奇妙な装置が雑然と置かれていた。

地図にはこの街の工場や政府機関、貧民街などが赤いインクで印されていた。 書類には労働者たちの名簿、工場生産量のデータ、政府高官のリストなどがびっしりと書き込まれている。

奇妙な装置からはカチカチと音が鳴り、不気味な光を放っていた。 テーブルの周りには革張りの椅子がいくつか並べられている。

壁には古い本棚があり、夥しい量の本が並んでいた。 本は古く埃をかぶり、いくつかは表紙が破れていた。 部屋の隅には暖炉があり、その上には古い時計が置かれていた。

時計は止まっており、この部屋が長い間使われていなかったことを物語っているようだった。


「ここは書斎みたいだね。」


アヤが言った。


「でも、人がいないみたい。」


エレーヌが言った。


「ああ、よかった。これで一安心だ。」


翔は安堵のため息をついた。

その時、部屋の奥から物音が聞こえてきた。


「ん?なんだ?」


翔は耳を澄ませた。物音は次第に大きくなる。


「まさか…」


翔は嫌な予感がした。 彼は仲間たちに目で合図を送り、部屋の隅に隠れた。

物音の正体はクロノスのメンバーだった。 彼らは部屋の奥にある隠し扉から入ってきた。


「奴らだ!」


翔は息を呑んだ。

クロノスのメンバーはテーブルを囲み、会議を始めた。 彼らは皆、黒いマントを深く被り、顔を隠している。 マントの隙間から見える彼らの目は、冷たく鋭く光っていた。 彼らの声は低く、どこか不気味な響きを持っていた。 彼らはまるでこの世のものではないような、異様な雰囲気を漂わせていた。

翔たちは息を殺して彼らの会話に耳を傾けた。


「計画は順調に進んでいるか?」


一人の男が尋ねた。


「ああ、問題ない。」


別の男が答えた。


「我々はすでに、この街の重要人物に接触している。市長、銀行家、工場長…彼らは皆、権力者であり金持ちだ。彼らは、さらに豊かになるためなら、どんな汚いことでも喜んでやるだろう。彼らは貧しい人々のことなど、少しも考えていない。彼らは我々の計画に協力してくれるだろう。」


「我々は彼らを利用して、貧富の格差を拡大し、社会不安を煽る。そして混乱に乗じて、政府を転覆させるのだ。この時代を…我々のものにするのだ…!」


「具体的にはどうするんだ?」


男の一人が尋ねた。


「まず我々は工場に潜入し、蒸気機関を破壊する。」


別の男が答えた。


「蒸気機関がなくなれば工場は止まり、労働者たちは失業する。失業した労働者たちは貧困に苦しみ、社会は混乱に陥るだろう。そして我々はその混乱に乗じて政府を倒し、新しい国家を建設するのだ。」


「奴ら一体何をしようとしているんだ?」


翔は仲間たちに小声で問いかけた。


「わからないけど、すごく悪いことを企んでいるみたいね。」


アヤが答えた。


「もしかしたらこの時代を支配しようとしているのかも。」


エレーヌが不安そうに言った。


「もしそうなら僕たちはどうすればいいんだ?」


翔は不安を隠せない様子だった。


「ピッ…怖いよピッ…」


プチはアヤにしがみつき、震えていた。

しばらくすると、クロノスのメンバーは会議を終え、一人ずつ部屋を出て行った。 最後の1人が部屋から出て行くと、隠し扉が音を立てて閉まった。

その時、プチがくしゃみをしてしまった。


「へ、へ、へ、へっくしょん!」


プチのくしゃみの音が部屋に響き渡る。

クロノスのメンバーの一人が、隠し扉の前で足を止め、振り返った。


「ん?今の音は何だ?」


男は鋭い視線で部屋の中を見回した。


「気のせいでしょう。何もいませんよ。」


別のメンバーが言った。


「そうか?しかし、妙だな…」


男はまだ疑っているようだったが、他のメンバーに促され、しぶしぶ屋敷を出て行った。

翔たちは恐怖で凍り付いていた。


「プチ…静かにしないと…」


アヤがプチを叱った。


「ごめんなさい、アヤ。」


プチはしょんぼりとした。


「ボクのせいでみんなに迷惑をかけちゃった。」


プチは自分を責めていた。


「大丈夫だよ、プチ。君のせいじゃない。」


アヤはプチの頭を優しく撫でた。

クロノスのメンバーが去った後、翔たちは安堵のため息をついた。


「ああ…これで一安心だ…」


翔は胸を撫で下ろした。


「でも奴らの計画は恐ろしいものだった…」


エレーヌは不安そうに言った。


「ああ…僕たちは奴らを止めなければならない…」


翔は決意を新たにした。


「絶対に奴らを阻止する!」


翔は心の中で誓った。 彼の目は強い決意に燃えていた。 彼は拳を強く握りしめ、天井を見上げた。


「僕は絶対にクロノスを阻止する!そしてこの時代の人々を苦しみから救うんだ!」


彼の声は静かだが力強い決意に満ちていた。 そして彼は仲間たちと共にクロノスに立ち向かうことを決意したのだった。




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