江戸の暮らし
「ここが、僕たちがしばらくお世話になる家だよ。」
マックスに連れられて、翔が辿り着いたのは、道の脇にずらりと並んだ長屋の一室だった。木造の簡素な家で、入り口は引き戸になっている。
「せ、せま…!」
翔は思わず声を上げた。六畳ほどの部屋に、ちゃぶ台と布団、小さな棚があるだけの質素な空間。現代の翔の部屋とは比べ物にならないほど狭く、物が少ない。
「ショウ、コレガ、江戸ジダイノ、庶民ノ、クラシダ。」
マックスは、当然のように言った。
「そうなんだ…。」
翔は少しがっかりしたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「よし! ここで暮らすのも、いい経験になるかもしれない!」
好奇心旺盛な翔は、早速長屋を探検し始めた。共同の井戸や厠、炊事場など、現代では見られないものがたくさんある。
「みんな、ここで生活しているんだね…。」
翔は、長屋の人々の暮らしぶりを興味深く観察した。
夕方になると、翔はマックスと一緒に、屋台で夕食をとることにした。美味しそうな匂いに誘われて、焼き鳥の屋台に立ち寄った。
「これ、ください!」
翔は、焼き鳥を指差して注文した。
「へい、お待ち!」
屋台の店主は、威勢のいい声で返事をした。
しかし、焼き鳥を一口食べた翔は、顔をしかめた。
「しょっぱい…!」
タレの味が濃く、翔には少し辛すぎたようだ。
「ニホンノ、ショクブンカハ、キミトッテハ、アワナイカモシレナイ。」
マックスが、翔の気持ちを察して言った。
「そうみたい…。でも、お腹すいたから、何か食べないと…。」
翔は、仕方なく焼き鳥を食べた。
「あの…、すみません。お醤油、もらえますか?」
翔は、屋台の店主に話しかけた。
「…?」
店主は、翔の言葉を理解できない様子だった。
「あ、あれ? 通じてない…?」
翔は、困ってしまった。
「ショウ、ココデハ、キミノコトバハ、ツウジナイ。」
マックスが、翔に耳打ちした。
「そうだった…。どうしよう…。」
翔は、途方に暮れた。
「ワタシニ、マカセテ。」
マックスは、小さな体を震わせると、不思議な音が流れ始めた。
「…!」
すると、翔の言葉が、江戸時代の言葉に翻訳されたのだ。
「あの…、すみません。お醤油、もらえますか?」
翔が、もう一度話しかけると、店主は、
「へい、かしこまりました!」
と、笑顔で醤油を渡してくれた。
「すごい! マックス、ありがとう!」
翔は、マックスの翻訳機能に感動した。
「コレデ、コトバノ、カベヲ、コエルコトガ、デキル。」
マックスは、得意げに言った。
翔は、マックスの助けを借りながら、江戸時代の暮らしを体験していく。