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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
中世ヨーロッパ冒険譚
37/134

闇の影

朝の澄み切った空気の中、翔はギヨームから剣術の指導を受けていた。


「もっと腰を落として!剣は体の一部のように扱え!」


ギヨームの厳しい声が響く。


「ハッ!」


翔は、額に汗を浮かべながらも、真剣な表情で剣を振るう。

数日間の療養で、翔の腕の傷はほぼ完治していた。


「いいぞ、翔!その調子だ!」


ギヨームの激励に、翔はさらに熱心に稽古に励んだ。

その頃、アヤは屋敷の庭で薬草の研究に没頭していた。


「この薬草は、傷の治りを早める効果があるはずだわ…」


アヤは、ルーペで薬草を仔细に観察しながら、メモ帳に書き込んでいく。

プチは、アヤの隣で、庭に咲く花を眺めていた。


「ピィ…きれいだな~」


プチは、花に顔を近づけ、くんくんと匂いを嗅いだ。


「プチ、手伝ってくれる?」


アヤが声をかけると、


「ピィ!なんだい?」


プチは、アヤの方を向いた。


「この薬草をすり潰して、ペースト状にしてほしいの」


「ピィ!わかった!」


プチは、小さな体で器用に薬草をすり潰し始めた。

屋敷の中では、マックスが暖炉のそばでくつろいでいた。


「それにしても、平和だな~」


マックスは、炎の揺らめきを見ながら、呟いた。

その時、屋敷の門を叩く音が響いた。


「誰だろう…?」


使用人が、玄関へ向かった。

ドアを開けると、そこには、顔面蒼白の男が立っていた。


「ギヨーム様はいらっしゃいますか!?」


男は、息を切らしながら叫んだ。


「近隣の村で、原因不明の病気が流行り始めたのです!」


男の言葉に、使用人は事態の深刻さを察知した。


「すぐに、ギヨーム様をお呼びします」


使用人は、急いでギヨームを呼びに行った。

ギヨームは、使用人に案内された男を応接間に通した。男は、息も絶え絶えに、震える声でギヨームに訴えた。


「ギヨーム様…大変です…!」


男の顔色は土気色で、額には脂汗が浮かんでいる。ギヨームは、男の様子から只事ではないと察し、彼に近づいて肩に手を置いた。


「落ち着いて話してくれ。何が起こったんだ?」


男は、ギヨームの落ち着いた声に少しだけ冷静さを取り戻したようだった。深呼吸をしてから、男は震える声で語り始めた。


「わ、私の村…ティエール村で…原因不明の病気が…!」


「病気…?」


ギヨームは、眉をひそめた。ティエール村は、彼の領地内にある小さな村だ。


「は、はい…数日前から、村人が次々と高熱や咳、体に赤い斑点を発症するようになったのです…!」


男の言葉に、ギヨームの表情はさらに険しくなった。


「原因は分かっているのか?」


「い、いえ…全く分からず…治療法も見つかりません…!」


男は、絶望的な表情で訴えた。


「村人は…どれくらい…?」


ギヨームは、言葉を詰まらせながら尋ねた。


「も、もう…半数以上が…!」


男の言葉に、ギヨームは言葉を失った。

(半数以上…だと…?)

ギヨームは、事態の深刻さを改めて認識した。原因不明の病、急速な感染拡大、そして有効な治療法がないという絶望的な状況。


「すぐに、村へ向かおう」


ギヨームは、決意を込めて言った。


「翔、アヤ、プチ、マックス、調査に行く!手伝ってくれ!」


ギヨームが声をかけると、


「はい!」


「ピィ!」


「了解です!」


3人は、すぐに準備を始めた。

ギヨームは、馬を用意させ、一行は急いで村へと出発した。

ギヨームの心は、不安と焦りで重く沈んでいた。


ギヨーム一行がティエール村に到着すると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。

かつては活気に満ち溢れていた村は、静寂に支配されていた。家々からは、苦しむ人々のうめき声や咳き込む音が漏れ聞こえてくる。道の脇には、衰弱しきった人々が倒れ込み、助けを求める力もない様子だった。

広場の中央には、井戸がポツンと佇んでいる。普段なら、村人たちが集い、水を汲んだり、談笑したりする場所だが、今は誰もいない。水桶が転がり、打ち捨てられたままになっている。

家々からは、苦しむ人々のうめき声や咳き込む音が、不気味な静けさの中に響き渡っている。道の脇には、衰弱しきった人々が倒れ込み、助けを求める力もない様子だった。

ギヨームは、馬から降りると、不安な表情で村を見渡した。


「これは…酷い…」


アヤも、その光景に息を呑んだ。


「一体何が…?」


翔は、言葉を失った。


「ピィ…!」


プチは、アヤの肩の上で不安そうに鳴いた。


「我々ノ早急ナ対応ガ必要デス」


マックスは、冷静に状況を分析した。

ギヨームは、村長の家へと向かった。

村長は、憔悴しきった様子でギヨーム一行を迎えた。


「ギヨーム様…お越しいただき、ありがとうございます…」


村長は、深々と頭を下げた。


「一体、何が起こったんだ?」


ギヨームは、心配そうに尋ねた。


「数日前から、村人が次々と高熱や咳、体に赤い斑点を発症するようになったのです…」


村長は、言葉を詰まらせながら説明した。


「原因は分かっているのか?」


「いえ…全く分からず…治療法も見つかりません…」


村長の目は、 絶望で覆われていた。

ギヨームは、村長の話を聞き終えると、すぐに村の中を回り、状況を把握することにした。


「翔、アヤ、プチ、マックス、一緒に行こう」


ギヨームは、一行に声をかけた。

石畳の道は荒れ果て、家々は窓を閉ざし、人の気配がない。時折、開いた扉の隙間から、苦しむ人々のうめき声が漏れ聞こえてくる。

ギヨームは、ある家の前で立ち止まった。中からは、激しい咳き込む音が聞こえる。ギヨームは、恐る恐る家の中へと入った。

薄暗い室内には、藁の上に横たわる女性の姿があった。顔色は青白く、呼吸は荒い。体には、赤い斑点がいくつも浮かび上がっている。


「これは…」


ギヨームは、言葉を失った。

アヤは、女性の脈を測り、額に手を当てた。


「高熱が出ています…そして、脈も弱いです…」


アヤは、深刻な表情で言った。

翔は、女性の苦しむ姿を見て、心を痛めた。


「何か…できることはないのか…?」


翔は、ギヨームに尋ねた。

ギヨームは、首を横に振った。


「今のところ、何も…できることはない…」


ギヨームは、無力感に苛まれた。

一行は、家から家へと移動し、村人たちの様子を伺った。どの家でも、病に苦しむ人々の姿があった。

ギヨームは、村人たちの苦しむ姿を見て、怒りを感じた。

(一体、誰が…こんなことを…!)

ギヨームは、拳を握りしめた。

翔たちもまた、村人たちの苦しみを目の当たりにし、心を痛めた。


「これは…本当に、ただ事ではないな…」


マックスは、村人たちの症状を分析しながら、呟いた。

アヤは、治療法を探し出すために、薬草の知識を総動員していた。

プチは、アヤの肩の上から、周囲を警戒していた。

一行は、日が暮れるまで村の中を歩き回り、状況を把握した。

そして、ギヨームの屋敷に戻ると、対策会議を開いた。

ギヨームの屋敷に戻った一行は、暖炉のある広間に集まり、重苦しい雰囲気の中、対策会議を開いた。窓の外は既に夕闇に包まれ、暖炉の火が部屋を薄明かりで照らしている。


「マックス、何か分かったことはあるか?」


ギヨームが、険しい表情でマックスに尋ねた。


「ハイ…村人タチノ症状ヲ分析シタ結果…コレハ…未知ノウイルスニヨル感染症ダト考エラレマス」


マックスは、深刻な表情で報告した。その言葉に、部屋の空気はさらに重くなった。


「未知のウイルス…?」


アヤは、不安そうに尋ねた。彼女の顔色は、いつもより青白く見えた。


「ええ。このウイルスは、非常に感染力が強く、致死率も高いようです」


マックスの説明に、一同は言葉を失った。翔は、顔をこわばらせ、窓の外の闇を見つめていた。プチは、アヤの肩の上で小さく震えていた。


「治療法は見つかるのか?」


ギヨームが、絞り出すように尋ねた。彼の声には、わずかながら希望が込められていた。


「今のところ、有効な治療法は見つかっていません…」


マックスの言葉に、ギヨームは肩を落とした。


「しかし…」


マックスは、言葉を続けた。


「アヤ、君ノ薬草ノ知識ガ役ニ立ツカモシレナイ」


アヤは、マックスの言葉にハッとした。


「薬草…?」


アヤは、目を輝かせた。


「ええ。君ガ白亜紀デ習得シタ薬草ノ知識ハ、コノ時代デハ未知ノモノデス。もしかしたら、コノウイルスニ効果的ナ薬草ガ存在スルカモシレマセン」


マックスの言葉に、アヤは希望を見出した。


「そうか…!」


アヤは、すぐに自分の持っている薬草の資料を調べ始めた。


「もしかしたら…この薬草と、この薬草を組み合わせれば…!」


アヤは、いくつかの薬草を見つけると、興奮気味に呟いた。


「アヤ、何か…?」


ギヨームが、アヤの様子に気づき、尋ねた。


「まだ、確実なことは言えないけど…もしかしたら、この組み合わせで、ウイルスの増殖を抑えられるかもしれないわ!」


アヤは、希望に満ちた表情で答えた。


「本当か…!」


ギヨームは、アヤの言葉に、わずかな光を見出した。


「でも…まだ、試したわけじゃないから…」


アヤは、言葉を濁した。


「それでも、希望があるなら、試してみる価値はある!」


ギヨームは、力強く言った。

アヤは、マックスの協力のもと、薬草を調合し、薬を作り始めた。

翔とプチは、アヤを手伝い、薬を村人たちに配り歩いた。


「どうか、効いてください…」


翔は、薬を配りながら、心の中で祈った。





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