プロローグ
薄暗い礼拝堂に、二人の少年が並んで跪いていた。兄のギヨームは15歳、弟のリュシアンは12歳。今日、彼らは騎士叙任式を迎え、正式に騎士となる。厳かな雰囲気の中、司祭が聖書を読み上げ、騎士団長が二人の肩に剣を置く。
「汝ら、神と王に仕え、弱きを助け、正義を守ることを誓うか?」
「誓います!」
二人の声が、礼拝堂に響き渡る。ギヨームは、誇らしげに胸を張った。騎士になることは、幼い頃からの夢だった。弟のリュシアンも、兄と同じように騎士になれることを喜んでいた。
だが、その喜びは長くは続かなかった。
叙任式の後、祝宴が開かれた。騎士や貴族たちが集い、酒を酌み交わし、歌い踊る。ギヨームとリュシアンも、祝宴の席に加わった。
その夜、悲劇が起こった。
祝宴の最中、突如として城が何者かに襲撃されたのだ。敵は、黒い鎧を身にまとった騎士たち。彼らは、容赦なく人々を斬りつけ、城を焼き払っていった。
混乱の中、ギヨームはリュシアンとはぐれてしまう。必死に弟を探し回ったが、リュシアンの姿はどこにも見当たらない。城は炎に包まれ、人々の悲鳴が響き渡る。ギヨームは、絶望の淵に突き落とされた。
その後、リュシアンは死亡したと伝えられた。ギヨームは、深い悲しみと喪失感に苛まれながらも、騎士としての責務を果たすために、戦場へと赴いた。
数年後、ギヨームは、戦場で黒い鎧を身にまとった騎士と遭遇する。その騎士は、強力な魔力を使って、ギヨームを圧倒した。
「貴様は…誰だ?」
ギヨームが問いかけると、騎士は兜を脱ぎ捨てた。その顔を見て、ギヨームは驚愕する。
それは、死んだはずの弟、リュシアンだった。
「兄上…覚えていないのですか?私は、クロノスに仕える騎士です」
リュシアンは、冷酷な笑みを浮かべて言った。ギヨームは、弟がなぜクロノスに身を投じたのか、理解できなかった。
「なぜ…?」
ギヨームが問いかけると、リュシアンは答えた。
「私は、あの日、死にませんでした。クロノスに救われたのです。そして、彼らは私に力を与えてくれました。私は、クロノスと共に、この世界を支配するのです」
リュシアンは、再び兜を被り、ギヨームに背を向けた。
「兄上…邪魔をするなら、容赦はしません」
そう言い残し、リュシアンは姿を消した。ギヨームは、深い悲しみと怒りに震えた。