クロノスの追跡
「これは…!」
アヤは、研究所の奥で見つけた一枚の古びた記録ディスクを、プチに接続して解析していた。
「アヤ、どうしたの?」
「これを見て!翔!」
アヤは、解析されたデータを表示したモニターを翔に向けた。
そこには、恐竜の絶滅に関する衝撃的な情報が記されていた。
「なんと…、恐竜を絶滅させたのは、隕石の衝突なんかじゃなかった…!」
アヤは、言葉を失った。
記録ディスクには、白亜紀末に地球に接近した巨大隕石は、実はクロノスが意図的に引き寄せたものだったと記されていたのだ。
「クロノスは、未来から白亜紀にやってきて、この研究所を拠点に、恐竜絶滅計画を実行したみたい…。」
「でも、なんで…? クロノスは、どうしてそんなことを…?」
翔は、理解ができなかった。
「ここに書かれている内容によると…、クロノスは、人類が地球を支配する未来を作るために、恐竜を絶滅させる必要があったらしいの。」
アヤは、記録ディスクの内容を読み上げた。
「恐竜が絶滅しなければ、人類は進化できず、クロノスが望む未来は実現しない。だから、彼らは、タイムマシンを使って白亜紀にやってきて、隕石を引き寄せることで、恐竜を絶滅させた…。」
「そんな…!」
翔は、クロノスの恐るべき計画に、驚きを隠せない。
その時、研究所の入り口から、複数の足音が聞こえてきた。
「ダレカ、クル!」
マックスが、警戒した。
「まさか…!」
アヤは、嫌な予感がした。
次の瞬間、研究所の扉が勢いよく開け放たれ、黒ずくめの男たちが侵入してきた。
「クロノス!」
アヤは、叫んだ。
「見つけたぞ!タイムトラベラー!」
男たちの一人が、翔とアヤを見つけ、叫んだ。
「ショウ!アヤ!ニゲロ!」
マックスは、二人に叫んだ。
翔とアヤ、そしてマックスとプチは、研究所の奥へと逃げ込んだ。
「待て!」
クロノスの男たちは、二人を追いかけてきた。
翔たちは、研究所の裏口から、外へと飛び出した。
「…!」
しかし、裏口の前には、さらに多くのクロノスの男たちが待ち構えていた。
「しまった!囲まれた!」
翔は、叫んだ。
「リーダー、タイムトラベラーのガキ共です!」
「よくやった!これで歴史改変を阻止できるぞ!」
リーダー格の男は、ニヤリと笑った。その顔には、醜い傷跡があった。
「ショウ、アヤ、ジタバタしてもムダだ。大人しくつかまるんだな。」
男たちは、ゆっくりと翔たちに近づいてくる。
「どうしよう、マックス…?」
翔は、後ずさりしながら、マックスに助けを求めた。
「ショウ、オチツイテ、ココハ、ワタシにマカセテ。」
マックスは、体から強い光を放ち、クロノスの男たちを包み込んだ。
「うわあああああ!」
男たちは、悲鳴を上げた。
マックスの光は、男たちの動きを封じ込めた。
「なんだ!?この光は!?」
リーダー格の男は、驚き、叫んだ。
「イマダ、ニゲロ!」
マックスは、翔とアヤに叫んだ。
翔たちは、その隙に、森の中へと逃げ込んだ。
「待てーっ!逃げられるかーっ!」
クロノスの男たちは、光の効果が切れると、再び翔たちを追いかけ始めた。
「こっちだ!」
アヤは、森の中を走りながら、翔たちを先導した。
森の中は、昼間でも薄暗く、巨大なシダ植物が行く手を阻む。
「うわっ!」
翔は、木の根に躓き、転びそうになった。
「翔、大丈夫?」
アヤが、心配そうに翔に声をかけた。
「う、うん…。」
翔は、立ち上がりながら答えた。
その時、翔は、前方に巨大な影が動いているのに気づいた。
「あれは…!」
「ドドドド…!」
巨大な草食恐竜、アンキロサウルスが、木々をなぎ倒しながら、翔たちに向かって突進してきた。
「うわあああああ!」
翔たちは、叫び声を上げながら、必死に逃げ出した。
しかし、クロノスの追っ手も、すぐそこまで迫っていた。
「くそっ…!」
翔は、歯噛みした。
「おい、あのデカブツを何とかしろ!」
クロノスの男たちが、銃を構えた。
「ダメだ!あんなのに銃が効くわけないだろう!」
別の男が、制止した。
しかし、焦った男たちは、アンキロサウルスに向かって、銃を乱射し始めた。
「バカヤロウ!やめろ!」
リーダー格の男が、怒鳴ったが、時すでに遅し。
アンキロサウルスは、銃弾を浴び、怒り狂った。
「ガオォォォ!」
アンキロサウルスは、クロノスの男たちに向かって、突進した。
「うわあああああ!」
男たちは、悲鳴を上げた。
アンキロサウルスは、巨大な体で、男たちを次々と跳ね飛ばした。
「こ、こいつ…!」
男たちは、恐怖で立ちすくんだ。
その隙に、翔たちは、逃げることができた。
「ふう…、危なかった…。」
翔は、息を切らしながら、言った。
「アンキロサウルス、ありがとう!」
アヤは、アンキロサウルスに向かって、感謝の気持ちを込めて、手を振った。
アンキロサウルスは、翔たちを一瞥すると、クロノスの男たちを追いかけて、森の奥へと去っていった。
「さあ、行こう!」
アヤは、翔たちを促し、
翔たちは、再び走り出した。
森の中を抜け、しばらく進むと、視界が開けた。
「やっと、クロノスの追っ手から逃げ切れたみたいだね。」
翔は、安堵の息をついた。
「ああ、よかった…。」
アヤも、ほっとした表情を見せた。
「でも、油断は禁物だよ。彼らは、まだ諦めてないかもしれない。」
マックスは、二人に注意を促した。
その時、背後から、けたたましい声が響いた。
「待てーっ!逃がすかーっ!」
クロノスの追っ手が、再び姿を現したのだ。
「しまった!」
翔は、振り返りざまに叫んだ。
「どうする、アヤ?」
「仕方ない!走るしかない!」
アヤは、翔の手を取り、走り出した。
「ショウ、アヤ、コッチダ!」
マックスが、先導するように叫んだ。
三人は、全速力で駆け抜けた。
しかし、クロノスの追っ手は、執拗に追いかけてくる。
「くそっ…、追いつかれる…!」
翔は、焦りで息が上がった。
「翔、諦めないで!」
「アヤ…。」
翔は、アヤの言葉に勇気づけられた。
その時、マックスが叫んだ。
「ショウ!アヤ!カワニ、トビコメ!」
翔たちの目の前には、大きな川が流れていた。
「でも…!」
翔は、ためらった。川は、流れが速く、深そうだった。
「大丈夫!プチ、頼む!」
アヤは、プチに指示を出した。
プチは、川に向かって、小さな装置を投げ込んだ。
すると、装置は、川面に触れると、瞬時に膨張し、ゴムボートのような形になった。
「すごい…!」
翔は、プチの未来技術に驚嘆した。
「さあ、乗って!」
アヤは、翔とマックスをゴムボートに乗せた。
そして、プチもボートに飛び乗ると、川に漕ぎ出した。
「うわあああああ!」
翔は、叫び声を上げた。
ゴムボートは、急流に流され、激しく揺れた。
「ショウ、しっかりつかまって!」
アヤが、翔の手を握り、叫んだ。
「アヤ…!」
翔は、アヤの手を握り返した。
二人は、互いに力を合わせ、激流を乗り越えようとした。
クロノスの追っ手は、川岸で立ち止まり、翔たちを睨みつけた。
「くそっ…、また逃げられたか…。」
リーダー格の男は、悔しそうに言った。
「しかし、奴らは、どこへ向かっているのだ?」
別の男が、尋ねた。
「奴らの目的は、古代植物だ。奴らは、きっと、古代植物がある場所に向かっているに違いない。」
「古代植物…。」
男たちは、顔を見合わせた。
「古代植物を手に入れれば、我々は、歴史を…、未来を…、支配できる!」
リーダー格の男は、目を輝かせながら、言った。
「ああ!」
男たちは、一斉に叫んだ。
クロノスの追っ手は、翔たちを追って、川を下っていった。