アヤの秘密
「ねえ、翔。あの子、ずっとこっちを見てるけど…。」
アヤが、少し不安そうに、翔の後ろに隠れるようにして言った。
「あ、ごめんごめん。紹介が遅れたね。」
翔は、アヤとプチの方を振り返り、マックスを紹介した。
「えっと、アヤ、プチ、こっちがマックス。僕の…、えーっと…。」
翔は、マックスを何と紹介すればいいのか、少し迷った。
「アイボウ、ダ。」
「相棒…?」
アヤは、目を丸くした。
「ぬいぐるみが…、喋った…!」
アヤは、信じられないという様子で、マックスを見つめた。
「ショウ!ナゼ、コノコニ、ボクノコトヲ、ナイショニシテイタンダ!? ボクハ、キミノコト、シンヨウシテイタノニ…!」
マックスは、顔を真っ赤にして翔に詰め寄った。
「え…?い、いや、だって…。」
「ショウ、ボクヲ、ナカマハズレニ、スルノハ、ヤメテクレ…。ボクダッテ、キミタチト、ナカヨクナリタイ…。」
マックスは、うるうると涙を浮かべながら訴えた。
「そんな…、そんなつもりじゃ…。」
翔は、慌てて言い訳をした。
「ショウ、ボクハ、キミト、イッショニ、ボウケンヲ、シタインダ。キミヲ、タスケタインダ。ナカマ、ナン、ダカラ…。」
マックスは、真剣な表情で言った。
「マックス…。」
翔は、マックスの言葉に、胸を打たれた。
「わかったよ、マックス。もう、君を仲間外れにしたりしないよ。ごめんね。」
「ホントウニ…?!」
マックスは、顔を輝かせた。涙もどこへやら、すっかり笑顔だ。
「ああ、本当だよ。僕たちは、最高のコンビだもんね!」
翔は、マックスに笑顔を向けた。
「ああ、ショウ!ボクモ、ソウ、オモウ!」
マックスは、嬉しそうに言った。
「…。」
アヤとプチは、二人のやり取りを、ぽかんとした顔で見つめていた。
「あの…、ちょっと、二人とも…。」
アヤは、遠慮がちに二人に声をかけた。
「あ、ごめんごめん。アヤ、プチ、改めて、こっちがマックス。僕の…、相棒だよ。」
翔は、改めてマックスを紹介した。
「はじめまして、マックス。私は、アヤ。恐竜の研究をしているの。」
「はじめまして、アヤ。ボクは、マックス。ショウの相棒だ。よろしくね。」
「はじめまして、マックス。ボクは、プチ。アヤの相棒のロボットです。」
「はじめまして、プチ。ボクは、マックス。ショウの相棒の…、ぬいぐるみです。」
「ぬいぐるみ…?」
プチは、首を傾げた。
「ああ、ボクは、ちょっと変わったぬいぐるみなんだ。」
「そうなんだ…。よろしくね、マックス。」
「こちらこそ、よろしくね、プチ。」
こうして、翔とアヤ、マックスとプチは、お互いに紹介し合い、打ち解けることができた。
翔は少し緊張した面持ちで、話を切り出した。
「ところでアヤ、君はどうして恐竜の研究をしているんだい?」
アヤは翔の少し沈んだ表情に気づき、真剣に耳を傾けた。
「それはね…。」
アヤは、少しだけ表情を曇らせた。
「私の両親は、恐竜学者だったの。でも、私が小さい頃に、調査中に消息不明になってしまって…。」
アヤは、言葉を詰まらせた。
「…そうだったんだ。」
翔は、アヤの気持ちを察し、優しく言葉をかけた。
「二人は、白亜紀の恐竜について研究していたの。いつか、両親のように、恐竜の謎を解き明かしたい。そして、行方不明になった両親を見つけたい。それが、私の夢なの。」
アヤは、力強く言った。
「きっと、見つかるよ。君の両親は。」
「ありがとう、翔。」
アヤは、翔に微笑みかけた。
その時、プチが、何かを発見した。
「アヤ、あそこに、何かあるみたいだよ!」
プチは、指差した。
「あれは…?」
アヤと翔は、プチが指差す方向を見た。
そこには、古い建物の一部のようなものが、地面から突き出ていた。
「あれは…、もしかして…。」
アヤは、目を輝かせた。
「行ってみよう!」
翔は、アヤの手を取り、遺跡へと駆け出した。
遺跡は、かなり古く、崩れかけている部分も多かったが、かつては、かなり大きな建物だったようだ。
「これは…、研究所…?」
アヤは、遺跡の中を見て、驚いた。
研究所の中には、古びた研究機器や資料が残されていた。
「これは…、私の両親の研究所…!」
アヤは、壁にかかった写真を見て、叫んだ。
写真には、若い頃のアヤの両親が写っていた。
「お父さん…、お母さん…。」
アヤは、涙を浮かべながら、写真を見つめた。
「アヤ…。」
翔は、アヤの肩にそっと手を置いた。
アヤは、涙を拭くと、研究所の中をくまなく探し始めた。
そして、机の引き出しから、一枚の紙を見つけた。
「これは…?」
アヤは、紙を開いた。
そこには、アヤの両親の筆跡で、メッセージが書かれていた。
「アヤへ。もし、このメッセージを読んでいるとしたら、私たちは、もうこの世にいないだろう。
私たちは、恐竜の研究中に、ある恐ろしい組織の陰謀に巻き込まれてしまった。
その組織は、クロノスと呼ばれている。
クロノスは、タイムトラベルの技術を悪用し、歴史を改変しようとしている。
私たちは、クロノスの計画を阻止しようとしたが、失敗してしまった。
アヤ、君は、クロノスに気を付けて。
そして、もしできることなら、クロノスの計画を阻止してほしい。
愛するアヤへ。お父さんとお母さんより。」
アヤは、両親のメッセージを読み終えると、顔を上げた。
その顔には、悲しみ、怒り、そして、強い決意が入り混じっていた。
「クロノス…。彼らは、私の両親を奪っただけでなく、タイムトラベルの技術を悪用して、歴史を…、未来を…、メチャクチャにしようとしているのね…!」
アヤは、怒りで体が震えるのを抑えきれなかった。
「翔、覚えてる?あなたが、未来から来たって言ってたこと…。」
アヤは、翔の目をまっすぐに見つめた。
「うん。僕は、未来でクロノスが引き起こすであろう危機を食い止めるために、ここに来たんだ。」
翔は、真剣な表情で答えた。
「そうか…。やっぱり…。」
アヤは、小さく呟いた。
「私の両親は、クロノスに殺されたんだわ…。そして、翔、あなたも、クロノスに狙われているのよ…!」
アヤは、翔にクロノスの危険性を訴えた。
「え…?」
翔は、驚きを隠せない。
「あなたも、タイムトラベラーだから。クロノスは、自分たちの計画を邪魔する者を、絶対に許さない。だから、あなたも…!」
アヤの言葉に、翔はハッとした。
(そうか…。僕も、クロノスに狙われているんだ…。)
翔は、改めてクロノスの恐ろしさを実感した。
「翔、一緒に戦おう!クロノスを倒して、未来を守ろう!そして…、私の両親の仇を…!」
アヤは、涙をこらえながら、力強く言った。
「アヤ…。」
翔は、アヤの決意に心を打たれた。
「ああ、もちろんだ!僕も、未来のために、そして…、アヤのために、クロノスを倒す!」
翔は、力強く答えた。
翔とアヤは、互いに見つめ合い、固く握手を交わした。
二人は、共通の目的を持ち、共に戦うことを誓ったのだった。