恐竜博士アヤ
「ショウ、ナビゲーションキノウニヨルト、コダイショクブツガ、アルノハ、コノサキダ。」
マックスは、険しい崖っぷちを指差した。
「え…? あんな危ないところ…?」
翔は、足がすくむ思いだった。崖下は、深い谷になっており、底が見えない。
「ショウ、シンパイシナイデ。ワタシガ、イル。」
二人は、恐る恐る崖っぷちに近づいていった。
その時、
「キャアアア!」
悲鳴が聞こえた。
「な、なんだ…?」
翔は驚いて、声のする方を見た。
すると、崖下から、人間の少女が、必死に崖をよじ登ろうとしているのが見えた。
「危ない!」
翔は、とっさに崖っぷちまで駆け寄り、少女の手を掴んだ。
「大丈夫ですか!?」
翔は少女に声をかけた。
「あ…、ありがとう…。」
少女は、翔に助けられ、ほっとした様子で言った。
「危ないところでしたね。どうして、こんなところに…?」
翔は、少女に尋ねた。
「私は、アヤ。恐竜の研究をしているの。あそこに、珍しい恐竜の巣があるって聞いて、見に来たんだけど…。」
アヤは、崖下を指差しながら、説明した。
「恐竜の研究…?!」
翔は、驚きを隠せない。まさか、白亜紀に、恐竜を研究している人間がいるとは…。
「ええ、そうなの。でも、あなたは…? どうして、こんなところにいるの?」
「僕は、翔。未来から来たんだ。」
「未来から…?!」
アヤは、目を丸くした。
「そうなんだ。僕は、未来を救うために、白亜紀に来たんだ。」
「未来を救う…?!」
アヤは、さらに驚いた。
「うん。詳しいことは、後で説明するよ。それより、君はどうして、一人でここにいるんだ?」
「私は、この辺りで、新しい種類の恐竜を探しているの。でも、なかなか見つからなくて…。」
アヤは、少し残念そうに言った。
「そうなんだ。僕たちは、古代植物を探しているんだ。」
「古代植物…?」
アヤは、首を傾げた。
「うん。未来を変えるために、必要な植物なんだ。」
「そうなんだ…。」
「もしよかったらだけど、色々危ないことも多いし、一緒に探さない?」
「うん!」
アヤは、嬉しそうに答えた。
こうして、翔とアヤは、協力して、古代植物と新しい種類の恐竜を探すことになった。
アヤは、12歳くらいの少女で、肩まで伸びた黒髪をポニーテールにしている。好奇心旺盛な様子を表す大きな瞳が印象的だ。
白亜紀の過酷な環境に対応できるよう、丈夫な生地で作られた茶色のサファリジャケットとカーゴパンツを着て、足元はトレッキングシューズといういでたち。
腰には、小型のポーチや道具入れがベルトで固定されており、中にはメモ帳やペン、虫眼鏡などの研究道具が入っているようだ。
「あ、そうだ! これは、プチ。」
アヤは、小さな恐竜ロボットを翔に紹介した。
「プチ…?」
翔は、ロボットを不思議そうに見た。
「プチは、私の相棒なの。いろんなことができるのよ。」
「プチ、翔くんに、ご挨拶して。」
「はじめまして、翔さん。プチです。」
プチは、ロボットとは思えないほど、流暢な言葉で挨拶した。
「すごい…! ロボットなのに、喋るんだ…!」
「プチは、私が作った、特別なロボットなの。恐竜の言葉を理解したり、危険を察知したり、いろんなことができるのよ。」
アヤは、得意げに言った。
プチは、体長50センチほどのヴェロキラプトル型のロボットだ。
鮮やかな緑色の体で、目はカメラ、口はスピーカーになっており、アヤと会話したり、恐竜の言葉を翻訳したりすることができる。
背中の小さなアンテナで、様々な情報を送受信し、タイヤの足で素早く移動する。
アヤとプチは、まるで本当の恐竜博士と、その助手のようなコンビだ。
「すごいね! 君は、天才なんだね!」
翔は、アヤに感心した。
「そんなことないわ。それに、この時代、ロボットくらい、珍しくないでしょ?」
アヤは、いたずらっぽく笑った。
翔は、アヤの言葉に、ドキッとした。
(この時代…? ロボットが珍しくない…? どういうことだろう…?)
翔は、アヤの言葉の意味がわからなかった。
翔とアヤ、そしてプチ。
力を合わせて、白亜紀の冒険を続けることになった。