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エピローグ - 新たな時代、希望の歌


それから、数年の月日が流れた。 世界は、あの過酷な戦いが嘘のように、平和を取り戻していた。かつて荒廃していた大地には緑が溢れ、澄み渡った青空には鳥たちが自由に舞っている。 そして、何よりも人々の生活を劇的に変えたのは、恐竜たちの存在だった。 白亜紀で絶滅を免れた恐竜たちは、この未来世界で新たな進化を遂げ、繁栄を謳歌していた。巨大な草食恐竜が悠々と草原を歩き、小型の肉食恐竜が森の中を駆け回る。空には翼竜たちが優雅に舞い、その雄大な姿は人々の心を魅了した。


「見て、アヤ!新しい種類のトリケラトプスよ!」


エレーヌが興奮した声を上げ、遠くで草を食む巨大な恐竜を指差した。


「ええ、本当に!この時代に適応して、独自の進化を遂げたのね」


アヤは目を輝かせながら、エレーヌの言葉に頷いた。彼女は今や世界的に有名な恐竜研究者となっていた。そして恐竜使いたちのリーダーとして、人間と恐竜の共存を目指し、日々研究と指導に励んでいる。


「ピィ!ピィ!」


アヤの足元では、プチが元気に駆け回っていた。あの小さかったプチも今ではすっかり成長し、成体のヴェロキラプトルと同じくらいの大きさになっていた。しかし、その愛くるしい仕草は昔のままで、アヤや他の人々の心を癒してくれた。


「プチ、あまりはしゃぎすぎると危ないわよ」


アヤは優しくプチをたしなめた。


「ピィ!」


プチはアヤの言葉に返事をするように一声鳴き、再び元気に走り出した。


「本当に、平和な世界になったわね」


エレーヌは遠くを見つめながら、感慨深げに言った。


「ええ、これもみんなのおかげよ」


アヤはエレーヌの言葉に頷き、微笑んだ。


「私の歌が少しでも役に立てたのなら、嬉しいわ」


エレーヌはそう言うと、静かに目を閉じ、風に身を任せた。彼女の歌声は今や世界中で愛され、人々に希望と癒しを与え続けていた。

その時、一人の青年が彼らに向かって歩いてくるのが見えた。


「翔!」


アヤは青年の姿を認め、声を上げた。


「二人とも、こんなところにいたのか」


翔はアヤとエレーヌに追いつき、優しく微笑んだ。


「どうしたの、翔?何かあった?」


アヤが翔に尋ねると、彼は少し照れくさそうに頭を掻いた。


「いや、別に大したことじゃないんだ。ただ、二人と一緒にこの景色を見たかっただけだ」


翔はそう言うと、遠くを見つめた。その視線の先には、恐竜たちと人間が共に暮らす平和な世界が広がっていた。


「本当に、美しい世界ね」


エレーヌはその光景に、感嘆の声を上げた。


「ええ。これもみんなの犠牲の上に成り立っている。そのことを、決して忘れてはいけないわ」


アヤは力強く言った。


「ああ、そうだな」


翔はアヤの言葉に深く頷いた。


「そういえば、マックスは?」


アヤが翔に尋ねた。


「ああ、あいつなら今は研究所で新しいシステムの調整をしてるよ」


翔はそう言うと、遠くに見える近未来的な建物を指差した。


「時間軸の歪みを監視し、安定させるシステム。それが完成すれば、もう二度とあんな悲劇は繰り返されない」


「マックス、頑張っているのね」


アヤはマックスの活躍に思いを馳せ、微笑んだ。

マックスはあの最終決戦の後、奇跡的に一命を取り留めた。そして、レジスタンスの技術者たちの協力により、新しいボディを与えられ、再び彼らの仲間として活動しているのだ。彼の時間軸を修復する能力は、この平和な未来世界を維持するために必要不可欠なものとなっていた。


「さあ、私たちも行きましょう!やるべきことはまだたくさんあるわ!」


アヤはそう言うと、翔とエレーヌを促し、歩き出した。


「ああ!」


翔もアヤに続き、力強く頷いた。


「ええ!」


エレーヌも二人に続き、歩き出した。


「ピィ!」


プチも元気よく鳴き声を上げ、彼らの後を追いかけた。

彼らは希望に満ちた未来へと向かって歩いていく。その足取りは力強く、そして軽やかだった。

翔は時折、空を見上げ、過去で別れた母親に想いを馳せた。

(母さん、見ていてくれ。俺たちはあなたの想いを決して無駄にはしない。必ずこの平和な世界を守り抜いてみせる)

翔は心の中で母親に誓った。彼は母親の深い愛情と犠牲を決して忘れない。そして、その想いを胸に未来へと進んでいく。


「ねえ、翔」


ふと、アヤが翔に話しかけた。


「何だ?」


翔がアヤを見つめると、彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。


「ありがとう。あなたと出会えて本当に良かった」


「アヤ」


翔はアヤの言葉に、胸が熱くなった。


「俺もだ、アヤ。お前がいてくれたから、ここまで来ることができた」


翔はアヤの手を優しく握りしめた。


「これからも、ずっと一緒よ」


アヤは翔の目をまっすぐに見つめ、言った。


「ああ、約束する」


翔も力強く頷いた。

二人はしばらくの間、黙って歩き続けた。しかし、その沈黙は決して気まずいものではなかった。むしろ、二人の絆の深さを表すような温かい沈黙だった。


「さあ、行きましょう!私たちの未来へ!」


アヤはそう言うと、翔の手を引き、再び歩き出した。


「ああ!」


翔もアヤに続き、力強く歩き出した。

エレーヌはそんな二人を優しく見守りながら、彼らの後ろを歩いていく。


「ピィ!」


プチは楽しそうに鳴き声を上げ、彼らの周りを駆け回った。

彼らの行く手には、希望に満ちた未来が広がっている。恐竜たちと人間が共に生きる平和な世界。

それこそが、彼らが命懸けで守り抜いた未来の姿だった。

そして、その未来を築くために、彼らの新たなる物語が今、まさに始まろうとしていた。

(完)



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