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最終決戦 - 未来を懸けた一撃 絶望の淵から差す、希望の光


光の剣が、指導者……翔の父親を捉えたかに見えた、その瞬間。指導者は苦悶の表情を浮かべながらも、不敵な笑みを浮かべた。


「無駄だと言ったはずだ。時間操作の前では全てが無力」


指導者はよろめきながらも立ち上がり、再び翔に向かって手をかざした。その手から、漆黒のエネルギーが渦を巻き、今にも解き放たれようとしている。


「くっ!まだ…!」


翔は必死に立ち上がろうとするが、先ほどの攻撃で受けたダメージは大きく、体が思うように動かない。


「翔!」


アヤは翔を助けようと駆け寄ろうとするが、指導者の放ったエネルギー波が彼女を阻む。


「これで終わりだ」


指導者は冷酷な眼差しで翔を見下ろし言った。その声には、もはや父親としての情は一切感じられない。


「おのれクロノス!」


翔は指導者を睨みつけながら、最後の力を振り絞り立ち上がろうとする。しかし、その体は限界を超えており、光の剣を握る手も小刻みに震えていた。

指導者が翔に止めを刺そうと、その手を振り上げた、その時だった。


「やめなさい!」


どこからか、凛とした女性の声が響き渡った。その声は優しさと同時に、強い決意を秘めていた。


「!?」


指導者はその声に反応し、動きを止めた。


「母さん!」


翔は声のする方を見た。そこには、ボロボロの白衣を身に纏い、傷つきながらも気高く立つ、母親の姿があった。


「母さん!無事だったのか!」


翔は母親の無事を確認し、安堵の表情を浮かべた。


「なぜ、ここに?裏切りか?」


指導者は母親を睨みつけながら言った。その声には、怒りと疑念の色が混じっていた。


「ええ。私は最初から、あなたたちに従うつもりなどなかった」


母親は指導者に対してきっぱりと言い放った。その瞳には、強い決意の光が宿っている。


「私はこの時のために、ずっと機会を窺っていたの。『装置』を完成させ、あなたを倒す機会を!」


母親の言葉に、翔とアヤは目を見開いた。


「『装置』?まさか、母さんが?」


アヤは母親の言葉に、驚きを隠せない。


「ええ。私が開発したの。時間軸の歪みを修正し、隕石の衝突を阻止するための、『最後の希望』」


母親はそう言うと、懐から小型の装置を取り出した。それはアヤが未来の研究所跡地で目にしたものと同じ形状をしていた。しかし、母親が持つ装置はより洗練され、完成形に近いことが一目でわかった。


「それをよこせ!」


指導者は母親に向かって手を伸ばした。


「渡すわけにはいかない!これは、翔とアヤが使うの!」


母親は装置を胸に抱きしめ、指導者に対して毅然と言い放った。


「ならば、力ずくで奪うまで!」


指導者はそう言うと、再び時間操作能力を発動させようとした。


「母さん!逃げて!」


翔は母親の危機を察知し、叫んだ。

しかし、母親は逃げようとはせず、その場に立ち尽くしていた。


「翔、アヤ。あなたたちを信じているわ」


母親は翔とアヤを交互に見つめ、優しく微笑んだ。その笑顔はどこか儚げで、今にも消えてしまいそうだった。


「母さん?何を」


翔が母親の意図を理解するよりも早く、母親は行動を起こした。


「時間稼ぎは任せて」


母親はそう言うと、手にしていた装置を高く掲げ、自身の全エネルギーをそこに注ぎ込み始めた。


「母さん!やめてくれ!」


翔は母親の行動の意味を理解し、絶叫した。母親は自らの命を犠牲にして、時間稼ぎをしようとしているのだ。


「アヤ!その笛を!」


母親はアヤに視線を向け、力強く言った。


「! わかったわ!」


アヤは母親の意図を察知し、『魂の笛』を構えた。


「エレーヌ!歌って!時間軸を安定させて!」


母親はエレーヌにも指示を出した。


「ええ!」


エレーヌは静かに頷き、目を閉じ、深く息を吸い込んだ。

そして、エレーヌの歌声が響き渡った。その歌声は希望に満ち、そしてどこか悲壮な決意を感じさせた。

アヤは『魂の笛』を力強く吹き鳴らした。その音色はエレーヌの歌声と共鳴し、空間全体を包み込んでいく。


「うおおおおお!」


母親は雄叫びを上げ、さらに強力なエネルギーを装置に注ぎ込んだ。その体は徐々に光を帯び始め、まるで一つの巨大なエネルギー体のように輝き始めた。


「母さん!やめてくれ!」


翔は母親を止めようと駆け寄ろうとした。しかし、その強烈なエネルギーの渦に阻まれ、近づくことができない。


「翔、アヤ。未来を、あなたたちに託します」


母親は最後にそう言い残し、眩いばかりの光を放ち、その姿を掻き消した。


「母さあああああん!」


翔の悲痛な叫びが虚しく空間に響き渡った。

アヤは涙を流しながらも、『魂の笛』を吹き続けた。エレーヌの歌声もさらに力強さを増していく。

プチは母親が消えた場所を見つめ、悲しげな鳴き声を上げた。

そして、光が収束した後、そこには母親の姿はなく、ただ彼女が手にしていた『装置』だけが残されていた。

翔はその『装置』を手に取り、力強く握りしめた。その瞳には深い悲しみと同時に、母親の遺志を継ぐという強い決意の光が宿っていた。


「母さんの犠牲を無駄にはしない!」


母親の壮絶な自己犠牲によって開かれた未来への道。翔はその手に託された『装置』を強く握りしめ、指導者……自らの父親と対峙していた。


「父さん!もう、やめてくれ!」


翔は悲痛な叫びを上げ、父親に思いとどまるよう懇願した。しかし、その声は虚しく空間に吸い込まれていく。


「もう遅い。『プロジェクト・ニューエデン』は最終段階に入った。もはや、誰にも止めることはできん」


指導者は冷たく言い放った。その瞳には狂気じみた光が宿っており、かつての優しい父親の面影は微塵も感じられない。


「そんなことはさせておけない!俺が、俺たちが絶対に止めてみせる!」


翔は光の剣を構え、決意を新たに宣言した。


「愚かな。時間操作の力を前に、貴様に何ができる?」


指導者は嘲笑うかのように鼻で笑い、両手を大きく広げた。すると、周囲の空間が再び激しく歪み始めた。


「翔!ここは私に任せて!」


アヤが翔の前に進み出て言った。その手には、母親が開発した『装置』が握られている。


「アヤ?しかし」


翔はアヤを心配そうに見つめた。


「この『装置』を起動させれば、隕石の衝突を阻止できるかもしれない。そのためには時間稼ぎが必要!」


アヤは決意を込めて言った。その瞳には強い意志の光が宿っている。


「わかった。頼んだぞ、アヤ!」


翔はアヤの覚悟を感じ取り、力強く頷いた。


「プチ、エレーヌさんを!」


アヤはプチに指示を出すと、エレーヌの元へ駆け寄った。


「エレーヌさん、歌って!あなたの歌の力が必要!」


「ええ、わかってる!」


エレーヌは静かに頷き、目を閉じ、深く息を吸い込んだ。

そして、エレーヌの歌声が響き渡った。その歌声は希望に満ち、そしてどこか神秘的な響きを持っていた。


「ピィ!」


プチはアヤの足元に寄り添い、彼女を守るように身構えた。


「さあ、来い!父さん!」


翔は光の剣を構え、指導者に対峙した。


「愚かな息子よ。せめて苦しまずに楽にしてやろう」


指導者はそう言うと、時間操作能力を発動させた。


「はあああ!」


翔は光の剣を振るい、指導者に斬りかかる。しかし、指導者の周囲の時間は歪められており、翔の攻撃はまるでスローモーションのように遅く見える。


「遅い、遅すぎるぞ!」


指導者は余裕の表情で翔の攻撃をかわし、反撃を繰り出した。


「ぐっ!」


翔は指導者の攻撃をまともに受け、吹き飛ばされた。


「翔!」


アヤは翔の危機に悲鳴を上げた。しかし、今は『装置』の起動に集中しなければならない。


「プチ、あっち!」


アヤはプチに指示を出し、クロノスの兵士たちを牽制させた。プチは小さいながらも勇敢に敵に立ち向かい、アヤを守ろうと奮闘する。


「くそっ!このままじゃ」


翔は立ち上がり、再び指導者に向かっていく。しかし、時間操作能力の前では、翔の攻撃はことごとく回避されてしまう。


「無駄だ。時間操作の力を前に、貴様に勝ち目はない」


指導者は冷酷な笑みを浮かべ、翔を見下ろした。


「諦めるな!翔!」


エレーヌの歌声が翔を励ます。その歌声は希望の光となり、翔の心を照らした。


「ああ!まだだ!まだ、終わっちゃいない!」


翔は再び立ち上がり、光の剣を構えた。その瞳には、決して諦めないという強い意志が宿っていた。


「何度やっても同じことだ」


指導者はそう言いながら、再び時間操作能力を発動させようとした。

その時だった。


「翔!今!」


アヤが叫んだ。同時に、『装置』が眩い光を放ち始めた。


「!?」


指導者はその光に一瞬、怯んだ。


「はあああ!」


翔はその一瞬の隙を逃さず、光の剣を力強く振り下ろした。


「ぐあああ!」


指導者の時間操作が解除され、光の剣が彼の体を直撃した。


「ばかな」


指導者は苦悶の表情を浮かべ、その場に崩れ落ちた。


「やったの?翔!」


アヤは翔の勝利を確信し、歓喜の声を上げた。

しかし、その時、指導者はよろめきながらも再び立ち上がった。


「まだだ。まだ、終わらんぞ」


指導者は血走った目で翔を睨みつけ、言った。


「何!?」


翔は指導者の執念に驚愕した。


「『プロジェクト・ニューエデン』は、もう誰にも止められない」


指導者はそう言うと、懐から小型の装置を取り出した。


「まさか!?」


アヤはその装置に見覚えがあった。それは母親が研究データの中で言及していた、巨大隕石を操作する装置に違いなかった。


「さらばだ、愚かな息子よ。そして、旧き世界の残滓ども」


指導者は狂気の笑みを浮かべ、装置のボタンを押した。


「まずい!止めろ!」


翔は指導者に向かって駆け寄ろうとした。しかし、その瞬間、強烈な光が部屋全体を包み込み、彼の視界を奪った。


「うわあああ!」


翔はその眩しさに思わず目を閉じた。


「何が起こったの!?」


アヤは目を開け、周囲を見回した。しかし、そこには先ほどまでと何も変わらない光景が広がっているだけだった。


「まさか失敗?」


エレーヌが不安げに呟いた。

その時、アヤはふと気づいた。窓の外の様子がおかしいことに。


「あれ、見て!」


アヤが指差す方向を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。

巨大な隕石が燃え盛りながら、地球に向かって落下してきているのだ。


「そんな、間に合わなかったの?」


アヤはその光景に絶望した。


「いや、まだよ!」


エレーヌがアヤの肩を掴み、力強く言った。


「『装置』はまだ完全に起動してない!今ならまだ間に合う!」


「エレーヌさん」


アヤはエレーヌの言葉に希望を見出し、再び『装置』に向き合った。


「お願い!動いて!」


アヤは母親から託された『装置』に全ての想いを込めて祈った。その瞬間、彼女の脳裏に母親の声が響いた。


『アヤ。あなたならきっとできるわ』


「お母さん」


アヤは母親の言葉に勇気づけられ、さらに強く、『装置』に念を送った。

すると、『装置』はアヤの想いに応えるように、さらに強い光を放ち始めた。そして、その光はやがて一つの巨大な光の柱となり、天高く伸びていった。


「すごい!」


翔はその光景に息を呑んだ。


「これが『装置』の真の力!」


アヤは目を見開き、その光を見つめた。


「ピィ!」


プチもその眩い光に目を細めながら、鳴き声を上げた。

光の柱は宇宙空間へと到達し、巨大隕石に向かって伸びていく。

そして次の瞬間、光の柱は隕石を包み込み、その軌道を徐々に変化させていった。


「隕石の軌道が」


エレーヌがその様子を確認し、驚きの声を上げた。


「すごい!本当に隕石を!」


翔はその光景に希望の光を見出した。


「まだよ!完全に軌道を逸らすまで!」


アヤは気を緩めることなく、『装置』にエネルギーを送り続けた。

そして、ついにその時が来た。

巨大隕石は地球をかすめ、宇宙の彼方へと消えていったのだ。


「やったの?私たち」


アヤはその光景を確認し、力なくその場にへたり込んだ。


「ああ!やったんだ!俺たちは未来を救ったんだ!」


翔は歓喜の声を上げ、アヤを抱きしめた。


「ピィ!ピィ!」


プチも喜びの鳴き声を上げ、二人の周りを駆け回った。

エレーヌは静かに目を閉じ、空を見上げていた。その瞳には、深い安堵と感謝の色が浮かんでいた。

しかしその時、アヤはふと気づいた。


「お母さんとの約束」


アヤはそう呟き、自分の胸元を見た。そこには母親から託された『装置』が静かに光を放っていた。


「お母さん、私」


アヤは『装置』を見つめながら、涙を流した。

その瞬間、彼女の脳裏に今まで閉ざされていた記憶が一気に流れ込んできた。

それは母親と過ごした幼い頃の記憶。恐竜たちと心を通わせ、共に研究に励んだ日々。そして、クロノスとの戦い。


「思い出した。全部思い出した!」


アヤはその場に立ち尽くし、溢れ出る記憶の渦に身を委ねた。

その記憶には母親との温かい思い出だけでなく、恐竜たちへの深い愛情、そして未来を救うための強い決意が刻まれていた。

そして、母親と交わした最後の約束。


「お母さん、私、約束守るからね」


アヤは涙を拭い、空を見上げた。その瞳には深い悲しみと同時に、未来への強い希望の光が宿っていた。


「さあ、行きましょう!私たちの未来へ!」


アヤはそう言うと、翔、エレーヌ、プチを伴い、新たな一歩を踏み出した。





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